CT33 感情焦点化療法(Emotion-Focused Therapy, EFT)

感情焦点化療法(Emotion-Focused Therapy, EFT)とは?

**感情焦点化療法(EFT)**は、心理療法の一つであり、クライエントが自身の感情をより深く体験し、それを処理・統合することによって心理的変容を促すアプローチです。特に、トラウマ、抑うつ、不安、人間関係の問題に効果的であるとされ、**Leslie Greenberg(レスリー・グリーンバーグ)**によって発展されました。

この療法は、来談者中心療法、ゲシュタルト療法、実存主義心理学、認知行動療法(CBT)などの要素を統合しつつ、特に感情の役割に焦点を当てたアプローチをとります。


EFTの基本的な考え方

1. 感情の適応的役割

感情は単なる副産物ではなく、私たちの行動を導き、重要な情報を提供する役割を持っています。
EFTでは、以下のように感情を分類し、それに応じた介入を行います。

  • 適応的な感情:自己を守るために必要な感情(例:恐怖→危険を避ける、怒り→境界を守る)
  • 不適応的な感情:過去の経験に基づいて歪められた感情(例:幼少期のトラウマによる自己否定的な感情)
  • 二次的な感情:一次感情(本来の感情)を抑圧し、それに代わる形で表れる感情(例:本当は悲しいのに怒りとして表現される)
  • 道具的な感情:意図的に表出する感情(例:他者の関心を引くための涙)

EFTでは、特に不適応的な感情を適応的な感情に変容させることを目的とします。

2. 感情の処理プロセス

EFTでは、クライエントが感情をうまく処理できるように支援します。そのために、次のような段階を踏みます:

  1. 感情への気づき
    • 自分の感情に気づき、名前をつける(例:「今、私は悲しいと感じている」)。
  2. 感情の表現と受容
    • 安全な場で感情を表現し、それを受け入れる(例:「この怒りには意味があるんだ」)。
  3. 感情の探求と意味づけ
    • 感情がどこから来ているのかを探り、意味を見出す(例:「子どもの頃、愛されないと思っていたから、今も不安になるんだ」)。
  4. 感情の変容
    • 不適応的な感情を適応的な感情に置き換える(例:「私は愛される価値がある」)。

EFTの技法

EFTには、クライエントが感情を体験し、変容させるための体験的技法が多く用いられます。

1. 二椅子技法(Two-Chair Dialogue)

  • クライエントが2つの椅子に交互に座り、自分の中の葛藤する2つの側面(例:自分を責める部分 vs. 自己防衛的な部分)を対話させることで、感情の統合を図る。

2. 空椅子技法(Empty-Chair Technique)

  • クライエントが、過去の重要な人物(例:親、パートナー、亡くなった人)を想像して、対話を行うことで、未解決の感情を処理する。

3. フォーカシング(Focusing)

  • 身体感覚に注意を向け、感情を深く感じることで、自分の本当の気持ちを探る。

4. 感情ラベル付け(Emotion Labeling)

  • 「私は〇〇と感じている」と言葉にすることで、感情を明確にする。

5. イメージワーク

  • 過去の記憶や未来のシナリオをイメージしながら、感情を変容させる。

EFTの効果と適用範囲

1. うつ病や不安障害

  • 抑圧された感情を処理し、自己批判を軽減する。
  • 不安を引き起こす根本的な感情を明確にする。

2. トラウマ治療

  • トラウマ記憶を再処理し、恐怖や罪悪感を解放する。

3. カップルセラピー

  • EFTはカップルセラピーにも応用され、愛着理論に基づいて、パートナー同士の感情のパターンを変える。

EFTの特徴と他の療法との違い

比較項目感情焦点化療法(EFT)認知行動療法(CBT)精神分析
焦点感情の体験と変容認知の修正無意識の探求
アプローチ体験的・対話的認知再構成・行動修正フリーアソシエーション
主な技法二椅子技法、感情ラベル付け認知の歪みの修正夢分析、転移解釈
ゴール感情の統合と適応考え方の修正無意識の気づき
適用うつ、不安、トラウマ、人間関係うつ、不安、強迫、PTSDパーソナリティ障害、自己理解

まとめ

  • 感情焦点化療法(EFT)は、感情を深く体験し、それを変容させることで心理的成長を促す療法。
  • 感情には「適応的」と「不適応的」があり、EFTは不適応的な感情を変容させることを目指す。
  • 二椅子技法、空椅子技法、フォーカシングなどの体験的技法を活用する。
  • うつ病、不安障害、トラウマ、人間関係の問題に効果的。
  • 認知行動療法(CBT)と異なり、思考の修正よりも感情の体験と変容に重点を置く。

EFTは、感情を無理に抑え込むのではなく、**「感じて、理解して、変える」**というプロセスを大切にする療法です。

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