認知症への進展

認知症への進展

・最近、高齢の夫が帯状疱疹などで体調が悪く、寝てばかりいる。認知症が心配。
・最近高齢の母親がぎっくり腰で寝たきりになった。認知症が心配。
などの話があり。

・実際、高齢者が寝たきりになった場合、認知症の症状が始まる、または進展することがある。
・理由としては、心理的なものと、身体的なものが考えられる。

・寝たきりと認知症の関係を考えるとき、まず観察から分かることは、寝たきりになったときに急速に認知症が進行し、心配するものの、体が動くようになるとすっかり元に戻る場合があること。また、別の例では、寝たきりになった後かなり急速に認知症の症状が進展し、体が動くようになっても元に戻らず、本格的に認知症が固定してしまう場合がある。両者の違いはよく分からない。

・寝たきりになった後、認知症症状の進展の速度を見ると、身体症状として、例えばβアミロイドが蓄積するとして(認知症の真の原因は確定していない)、そのような物質的変化が起こるには早すぎる。むしろ、心理的・反応的なものと考えたほうが合理的である。体が動くようになればすっかり回復することも、物質的なものではなく心理的なものであることを推定させる。

・心理的なものとして、類似の状態は、感覚剥奪とか拘禁反応などがあげられる。

・正常な人を真っ暗でお供しない、匂いも温度も感じない、そのような感覚剥奪状態にすると、幻覚を体験したりする。

・刑務所などで拘禁反応が見られる。あまりに感覚刺激が少ない場合である。

・現代では、映像刺激も音声刺激も、その他感覚刺激も、いろいろと工夫できるのであるが、認知症の進展を防止することができるとも考えられない。家族や介護職員が話しかけたりなどいろいろ工夫して対応するが認知症の進展を抑制するには至らない。バーチャルリアリティ(VR)装置など利用しても、あまり効果はないような気がする。

・感覚は、単に感覚器から刺激が入って脳に至ればいいというものではない。身体運動と関係するものとして感覚刺激が脳で処理される。サルの子供の前身と頭を固定して動かないようにして生育すると視覚の発達が阻害される。自分がこう動いたからこう見えるとか、自分が世界にこのように働きかけたからこういう結果が生じたなど、能動的にかかわる体験をして感覚は生成されてゆく面がある。寝たきりになると受動的刺激ばかりが多くなるので、脳に必要な情報になっていない可能性がある。

・たとえば映画の画像を見ていて、脳が本物の体験のように悲しんだり恐怖したり喜んだりするほうが不思議だともいえる。それは映画やテレビの体験というものに慣れて、脳が調整しているからだろう。

・問題は、心理的に始まった変化が、途中で不可逆的な物質的変化を引き起こし固定されてしまうのはなぜかということである。

・たとえば、βアミロイドは常に産生され続けていて、脳脊髄液の循環により物理的に洗い流される(wash out)とか、免疫系の反応によりβアミロイドが処理されるとかが起こるとして、高齢者の寝たきりの場合、それらのプロセスがうまく働かない可能では高い。

・ヒトが動くとき、たとえば歩行するとき、全身の筋肉が血行を促進し、重力によって体の下にたまる傾向のある血液も、上方に押し戻される。そのような、血液循環に伴って、脳脊髄液の循環も促進される。歩くときには必然的に頭が動く。そのときに脳脊髄液の循環が促進される。

・健康法の一つとして、その場でジャンプを何十回かするというものがある。体重が重い人には勧められないけれども、ジャンプは、脳脊髄液の循環促進に効果的だろうと思う。ジャンプの類似としては、縄跳びなどもある。確かに体液循環を促進するにはよさそうだが、高齢者にはなじまないかもしれない。トランポリンなどもあるし、鉄棒もいい感じがするが、やはり高齢者には向かないような気がする自動車や二輪車ででこぼこ道を行くのも適度な振動になる。歩行は、下半身の筋肉を動かすことで体全体の循環を促進するので適切だし、脳に振動が適度に加わるので、いいと思う。振動は骨に影響して、カルシウムが骨に吸着しやすくなる。

・赤ん坊や子供を高い高いと言いながら上に放り投げてキャッチするようにすると、子供は非常に喜ぶ。加速度の感覚がうれしいのか、笑う。これはジェットコースターの体験に似ているものか。あるいは脳脊髄液の循環を促進していることに関係しているものか。

・それでは、高齢者が寝たきりになったとき、脳脊髄液の循環を促進したらどうだろうか。頭を振る程度では足りないのだろう。褥瘡の予防も兼ねて、ベッド上での様々な運動を促進するのは意味があるのだろうか。体位を変換するだけでも効果がありそうであるが、どうだろうか。それだけで解決するとも思えない。

・子供や若い人の場合に寝たきりになっても、筋肉の廃用性委縮は起こるが、脳神経細胞にβアミロイドが蓄積して早期の認知症になるとは観察されていない。

・刑務所などで長期の感覚剥奪を続けていると高齢者の場合に認知症になるだろうと思われる。拘禁反応の一種。

・筋肉や骨の廃用性委縮は確実に進行するので、そのような変化が脳神経細胞の変化をもたらすのかもしれない。それならば、筋委縮が生じる疾患や骨粗しょう症で類似の変化が起こりやすいかと言えば、そうでもない。

・一方で、質の良い睡眠はβアミロイドの排出を促すと言われている。睡眠中に掃除されるとすれば、脳脊髄液の循環によるwash outはあまり期待できない。

・レカネマブは「抗アミロイドβ抗体」と呼ばれる薬で、抗体の働きで脳内に存在するアミロイドβに結合して減らす作用を持っています。 特に蓄積したアミロイドβがかたまりになる前段階のアミロイドβ(プロトフィブリル)を除去することがわかっています。

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