Janiri-2023-What-came-first-mania-or-depression
概要
この論文は、双極性障害(BD)の臨床経過を特定する提案である、発症時極性(PO)について考察しています。 発症時極性とは、病気の発症時に最初に現れるエピソードの種類(うつ状態または躁状態)を指します。 著者は、気質(感情的な反応と調節の持続的パターン)がPOに影響を与え、障害のその後の経過の指標となりうると仮定しています。 191人のBD患者を対象とした研究の結果、うつ気質はうつ病発症と関連し、躁うつ気質は躁病/軽躁病発症と関連していることが明らかになりました。 さらに、POはBDのサブタイプ、最初の感情エピソードの年齢、病気の期間、うつ病エピソードの数、自殺リスク、物質使用、および薬物使用と関連していました。 これらの知見は、BD患者の臨床経過を予測し、治療的介入を個別に対応させるために、気質とPOを注意深く評価することの重要性を強調しています。
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医学研究論文の目次
What Came First, Mania or Depression? Polarity at Onset in Bipolar I and II: Temperament and Clinical Course
Delfina Janiri、Alessio Simonetti、Lorenzo Moccia、Daniele Hirsch、Silvia Montanari、Marianna Mazza、Marco Di Nicola、Georgios D. Kotzalidis、Gabriele Sani
はじめに: 双極性障害 (BD) は、臨床的および生物学的に非常に異質性が高く、発症時の極性 (PO) は、病気の経過を特定するための提案です。
材料と方法: DSM-5 の診断基準を用いて「タイプ I BD」(BD-I) および「タイプ II BD」(BD-II) と診断された外来患者 191 人を対象に、臨床変数と、TEMPS-A-39-SV を用いて評価した気質を調査しました。
結果: 被験者の 52.9% が D-PO、47.1% が M-PO でした。D-PO 患者は、気分変調性気質のスコアが高く、BD-II、初回気分エピソードまでの年齢、罹病期間、うつ病エピソード数、季節性、自殺リスク、物質使用、リチウムおよびベンゾジアゼピン使用においても差が見られました。M-PO 患者は、躁病性気質のスコアが高く、BD-I、初回躁病/軽躁病エピソードまでの年齢、季節性、物質使用、リチウム使用においても差が見られました。
考察: これらの知見は、気質が PO に影響を与え、この因子が BD のその後の経過の指標となり得ることを示唆しています。また、病気の発症時に観察される気分の極性は、BD の人の病前の気分の気質と一致する傾向があることもわかりました。
結論: BD 患者の気質と PO を注意深く評価することで、臨床経過をより正確に予測し、個々の患者のニーズに合わせた治療的介入を調整することができます。
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双極性障害における発症時の極性:気質と臨床経過
概要
本ブリーフィング文書は、Janiriらによる論文「What Came First, Mania or Depression? Polarity at Onset in Bipolar I and II: Temperament and Clinical Course」の主要なテーマ、重要な発見、考察点をまとめたものです。この研究では、双極性障害(BD)の臨床経過、特に発症時の気分エピソードの極性と、患者の気質、臨床的特徴との関連に着目しています。
背景
双極性障害は、気分の変動を特徴とする精神疾患であり、I型(BD-I)とII型(BD-II)に分類されます。過去の研究では、発症時の極性(PO)、つまり最初に現れる気分エピソードの種類(うつ状態または躁状態)が、その後の臨床経過や治療法の選択に影響を与える可能性が示唆されています。
研究の目的
本研究の目的は、発症時の極性と気質、臨床的特徴との関連を調査することです。具体的には、
気質が発症時の極性に影響を与えるかどうか
発症時の極性がその後の臨床経過の指標となるかどうか
を検証しています。
研究方法
ローマにあるアゴスティーノ・ジェメリIRCCS総合病院の精神医学部門に通院するBD-IおよびBD-IIの患者191名を対象に、臨床データの収集と気質の評価を行いました。気質は、Temperament Evaluation of Memphis, Pisa, Paris, and San Diego – Autoquestionnaire (TEMPS-A-39-SV)を用いて評価しました。
結果
対象患者のうち、52.9%がうつ状態発症(D-PO)、47.1%が躁/軽躁状態発症(M-PO)でした。
D-PO患者は、ディスチミア気質のスコアが高く、BD-IIと診断されることが多く、最初のうつ病エピソードの年齢が若く、病気の期間が長く、過去のうつ病エピソードが多く、自殺リスクが高く、ベンゾジアゼピン系薬の使用が多い傾向にありました。
一方、M-PO患者は、ハイパーサイミア気質のスコアが高く、BD-Iと診断されることが多く、最初の躁/軽躁病エピソードの年齢が若く、季節性が強く、生涯における物質使用歴があり、リチウム系薬の使用が多い傾向にありました。
多変量解析の結果、「BD-II」と「最初のうつ病エピソードの年齢」はD-POの予測因子となり、「BD-I」、「最初の躁/軽躁病エピソードの年齢」、および「ハイパーサイミア気質」はM-POの予測因子となりました。
考察
本研究の結果から、以下の点が示唆されます。
発症時の極性は、BDのその後の臨床経過に影響を与える可能性があり、D-POとM-POという2つの異なる臨床的表現型が存在する可能性があります。
気質は、BDの最初のエピソードの極性に影響を与える可能性があり、ディスチミア気質はD-POに、ハイパーサイミア気質はM-POに関連しています。
これらの知見は、予防戦略や治療法の個別化に役立つ可能性があります。
結論
本研究は、発症時の極性と気質、臨床的特徴との関連を明らかにした初めての研究です。この知見は、BDの異質性を理解し、より個別化された治療法を開発するための重要な手がかりとなります。
制限事項と今後の展望
本研究は横断的な観察研究であるため、因果関係を証明することはできません。今後の研究では、長期的な追跡調査を行い、本研究の結果を検証する必要があります。また、発症時の気分エピソードをうつ状態と躁/軽躁状態の2つに分類しており、混合状態を考慮していない点も限界として挙げられます。
臨床現場への応用
本研究の結果は、BDの予防と治療における重要な示唆を含んでいます。
D-POの患者は自殺リスクが高いため、注意深い経過観察と適切な介入が必要です。
M-POの患者では、物質使用障害や季節性の問題に対処する必要があります。
発症時の極性と気質を考慮することで、より個別化された治療戦略を立てることができます。
今後の研究課題
発症時の極性と気質、遺伝的要因との関連を明らかにする。
発症時の極性に基づいた個別化された予防・治療法を開発する。
混合状態を考慮した、より詳細な発症時の極性の分類を行う。
引用
Janiri, D.; Simonetti, A.; Moccia, L.; Hirsch, D.; Montanari, S.; Mazza, M.; Di Nicola, M.; Kotzalidis, G.D.; Sani, G. What Came First, Mania or Depression? Polarity at Onset in Bipolar I and II: Temperament and Clinical Course. Brain Sci. 2024, 14, 17. https://doi.org/10.3390/brainsci14010017
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双極性障害:よくある質問
この記事では、双極性障害(BD)とその初期症状、気質との関連性に関するよくある質問にお答えします。
- 双極性障害とは何ですか?
双極性障害(BD)は、気分の劇的な変化を特徴とする精神疾患です。これらの変化には、躁状態または軽躁状態(気分が高揚し、活動的になる)、うつ状態(気分が落ち込み、無気力になる)などがあります。
- 双極性障害にはどのような種類がありますか?
BDには主に2つの種類があります。
双極I型障害(BD-I): 躁状態とうつ状態の両方を経験します。
双極II型障害(BD-II): 重度のうつ状態と軽躁状態を経験します。BD-IIでは、BD-Iのような重度の躁状態は見られません。
- 発症時の極性(PO)とは何ですか?
発症時の極性(PO)とは、BDの発症時に最初に現れる気分の状態のことです。うつ状態が最初に現れる場合は「うつ極性発症」(D-PO)、躁状態または軽躁状態が最初に現れる場合は「躁/軽躁極性発症」(M-PO)と分類されます。
- 発症時の極性は、その後の双極性障害の経過にどのような影響を与えますか?
研究によると、POはBDのその後の経過を示唆する可能性があります。
D-POの人は、うつ状態のエピソードが多く、病気の期間が長くなる傾向があります。また、自殺リスクが高いことも示唆されています。
M-POの人は、季節性の影響を受けやすく、物質使用の問題を抱えている可能性が高いという報告があります。
- 情動気質とは何ですか?
情動気質とは、感情の反応や調節に関する、その人の生来の傾向のことです。例えば、明るく楽観的な気質や、悲観的で憂鬱になりやすい気質などがあります。
- 情動気質は、発症時の極性とどのように関係していますか?
研究によると、特定の情動気質は、特定のPOと関連している可能性があります。
ディスチミック気質(悲観的で憂鬱になりやすい)の人は、D-POになる可能性が高い。
ハイパーサイミック気質(明るく楽観的)の人は、M-POになる可能性が高い。
- 発症時の極性と情動気質に関するこれらの発見は、双極性障害の治療にどのように役立ちますか?
これらの発見は、BDの予防と治療戦略を個別化するために役立ちます。
D-POで自殺リスクが高い人には、より集中的な治療や支援が必要になる場合があります。
M-POで物質使用の問題を抱えている人には、その問題に対処するための追加のサポートが必要になる場合があります。
- 発症時の極性と情動気質に関する今後の研究では、どのようなことが期待されますか?
今後の研究では、これらの発見を確認し、POと情動気質に基づいて、より効果的な予防・治療法を開発することが期待されます。また、これらの関連性の背後にある生物学的メカニズムを解明するための研究も必要です。
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- 双極性障害における発症時の極性:気質と臨床経過
- 用語解説
- 用語定義双極性障害(BD)躁状態と抑うつ状態を繰り返す精神疾患。双極I型障害(BD-I)重度の躁状態と抑うつ状態を繰り返す。双極II型障害(BD-II)軽躁状態と抑うつ状態を繰り返す。発症時の極性(PO)双極性障害の発症時に最初に現れるエピソードのタイプ(躁状態または抑うつ状態)。抑うつ的発症(D-PO)最初に抑うつエピソードが現れる。躁/軽躁的発症(M-PO)最初に躁状態または軽躁状態のエピソードが現れる。気質感情的な反応や調節の、持続的で安定したパターン。異常気質気分障害に関連する、持続的な感情的傾向。循環気質軽躁状態と軽度の抑うつ状態を繰り返す気質。ディスチミック気質持続的な抑うつ気分を特徴とする気質。過剰躁気質持続的に気分が高揚している状態を特徴とする気質。怒りっぽい気質怒りっぽく、不満を感じやすい気質。不安気質過度の心配や不安を特徴とする気質。小テスト
- 小テストの解答
- エッセイのテーマ
双極性障害における発症時の極性:気質と臨床経過
用語解説
用語定義双極性障害(BD)躁状態と抑うつ状態を繰り返す精神疾患。双極I型障害(BD-I)重度の躁状態と抑うつ状態を繰り返す。双極II型障害(BD-II)軽躁状態と抑うつ状態を繰り返す。発症時の極性(PO)双極性障害の発症時に最初に現れるエピソードのタイプ(躁状態または抑うつ状態)。抑うつ的発症(D-PO)最初に抑うつエピソードが現れる。躁/軽躁的発症(M-PO)最初に躁状態または軽躁状態のエピソードが現れる。気質感情的な反応や調節の、持続的で安定したパターン。異常気質気分障害に関連する、持続的な感情的傾向。循環気質軽躁状態と軽度の抑うつ状態を繰り返す気質。ディスチミック気質持続的な抑うつ気分を特徴とする気質。過剰躁気質持続的に気分が高揚している状態を特徴とする気質。怒りっぽい気質怒りっぽく、不満を感じやすい気質。不安気質過度の心配や不安を特徴とする気質。小テスト
以下の質問に2~3文で答えてください。
- 双極性障害における発症時の極性(PO)とは何ですか?
- Janiriらの研究におけるD-POとM-POの罹患率はどうでしたか?
- D-POとM-POの患者を区別する臨床的特徴を3つ挙げてください。
- D-POと関連性の高い気質は何ですか?
- M-POと関連性の高い気質は何ですか?
- なぜD-POの患者では自殺リスクが高いのですか?
- なぜBDの診断には平均8年もかかるのですか?
- Koukopoulosの躁状態の優位性仮説とは何ですか?
- D-POとM-POの患者における薬物治療の重要な考慮事項は何ですか?
- この研究の限界は何ですか?
小テストの解答
- 発症時の極性(PO)とは、双極性障害の経過を特定するための提案であり、最初に現れるエピソードの種類(抑うつ的または躁/軽躁的)に基づいています。
- Janiriらの研究では、患者の52.9%が抑うつ的発症(D-PO)を、47.1%が躁/軽躁的発症(M-PO)を示しました。
- D-POとM-POの患者を区別する臨床的特徴としては、双極性障害のサブタイプ、最初の気分エピソードの年齢、病気の期間などが挙げられます。
- ディスチミック気質はD-POと関連付けられています。
- 過剰躁気質はM-POと関連付けられています。
- D-POの患者は、抑うつエピソードの頻度が高く、病気の期間が長いため、自殺のリスクが高くなります。
- BDの診断には平均8年かかるのは、躁状態や軽躁状態よりも抑うつ状態の方が認識しやすく、その結果、抗うつ薬による治療が行われるため、BDの診断が遅れるためです。
- Koukopoulosの躁状態の優位性仮説とは、抑うつ状態は躁状態の結果であり、躁状態が双極性障害の主要な駆動力であるというものです。
- D-POの患者では、抗うつ薬によって躁状態に転換するリスクがあるため、気分安定薬と併用する必要があるのに対し、M-POの患者では、初期段階で抗精神病薬と気分安定薬の併用が必要になることが多いです。
- この研究の限界は、断面的な性質であるため、予測を確認するにはさらなる縦断的な研究が必要です。また、過去の出来事を思い出すことに依存しているため、記憶の偏りが制御できない可能性があります。
エッセイのテーマ
- 双極性障害の発症時の極性(PO)の概念を、その臨床的意義と関連付けて論じてください。
- D-POとM-POの患者における気質の違いについて、詳細な分析を行い、関連する研究結果を提示してください。
- 双極性障害における発症時の極性(PO)と、病気の経過、治療反応、自殺リスクとの関係について論じてください。
- 双極性障害における躁状態の優位性仮説の妥当性について、賛否両論の立場から、証拠を挙げて論じてください。
- Janiriらの研究の限界と、今後の研究の方向性について論じてください。