アンソニー・ライル(Anthony Ryle)は、認知分析療法(Cognitive Analytic Therapy, CAT)の中で、人々が陥りがちな心理的な問題を3つの主要なパターンに分類しました。それが「トラップ(trap)」「ジレンマ(dilemma)」「障害(snag)」です。これらの概念は、個人が無意識に繰り返してしまう問題のサイクルを理解し、解決するために重要な役割を果たします。
1. トラップ(Trap)
「トラップ」とは、特定の思考や行動パターンに囚われてしまい、結果的にその人の問題が悪化してしまう状況を指します。たとえば、自分に対して否定的な考えを持つ人が、その考えに基づいて行動し、結果的に失敗や拒絶を経験することで、さらにその否定的な考えが強化されるといったサイクルです。トラップに陥ると、その人は抜け出せない悪循環に捕らわれ、問題が解決されないまま継続します。
2. ジレンマ(Dilemma)
「ジレンマ」は、相反する選択肢の間で板挟みになり、どちらを選んでも不満足な結果に至る状況です。たとえば、「他人に助けを求めると弱いと見なされるが、求めなければ孤立する」というような、どちらの選択肢も不安や不満を生むような二者択一の状態です。このジレンマに陥ることで、個人はどう行動しても良い結果を得られないと感じ、決断や行動が非常に難しくなります。
3. 障害(Snag)
「障害」とは、目標達成や欲求充足に向けて行動している最中に、無意識に自らがその過程を妨害してしまうような行動や考え方を指します。例えば、誰かに愛されたいと思いながらも、実際に愛情を受け取ると「自分は愛される価値がない」と感じてそれを拒絶してしまう、といった状況です。この障害は、目標達成を阻む自己破壊的なパターンとして現れ、個人の成長や幸福を妨げます。
まとめ
- トラップは、問題を悪化させる悪循環のようなもの。
- ジレンマは、どちらを選んでも満足できない選択肢の間で悩む状況。
- 障害は、無意識に自分の目標達成を妨げる行動や考え方。
これらのパターンを理解し、認識することによって、クライアントは自分の問題の根本にあるメカニズムを見直し、新たな選択や行動を取ることで、問題の解決に向かうことができるとされています。