認知機能と社会生活


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「社会生活」とは、人間が生活をしていく中で、それが社会の一員として行われていくような部分のことを言います。
社会生活を送ることができている者というのは健康な者であるということです。この場合の健康というのは病気を患っていないということも意味していますが、これだけでなく精神的にも健康であるということです。精神的に健康であるということは社会においての人間関係が良い形で築き上げることができていることであるとされています。(細田瑳一,Mental Health Network Report,31 January, 2011)

地域包括ケア・地域共生社会における早期予防の必要性

人は加齢が進むに従って徐々に心身の機能が低下し、日常生活活動や自立度の低下を経て、要介護の状態に陥っていきます。加齢に伴い⼼⾝の活⼒(筋⼒、認知機能、社会とのつながりなど)が低下した状態を虚弱(frailty)と一般的に呼んでおり、その虚弱のことを「フレイル」と呼ぶことが日本老年医学会から2014年に提唱されています。(老年医学会のステートメント

現在、わが国では、住まい、医療、介護、予防、生活支援サービスを切れ目なく提供し、高齢者の地域生活を支援するための「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。

高齢者の生活機能の維持には地域の多職種連携による早期介入が必要とされており、フレイル対策は高齢者の介護予防につながります。

フレイルと認知機能に関する詳しい説明は「認知機能と社会生活⑤フレイル」のページをご覧ください。

地域共生社会とは高齢者に限らない困難を持つあらゆる人を地域支える仕組みとして「地域共生社会」いう新しい地域福祉の概念を厚生労働省は2016年7月に公表し、大臣直轄でその実現に向けた検討をスタートしています。地域共生社会は、「高齢者・障害者・子どもなど全ての人々が、1人ひとりの暮らしと生きがいを、ともに創り、高め合う社会」定義されています。「地域共生社会」の実現に向けて」(厚生労働省「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部,2017年2月)
◎暮らしのヒント 支援のポイント ~ 住み慣れたまちでいつまでも ~
 ご高齢の方とお話しをすると、よく「家族に迷惑はかけたくないから、将来は、どこか施設へ入ろうかと思っている」というお話とともに「この家は離れたくないし、ここには友達もいるし、何より慣れてるから」というお話も聞きます。相反していると思えますが、どちらの言葉も本当の気持ちなのではないかと思います。
 超高齢社会を迎える日本では、病院のベッド数や高齢者の方向けの入所施設の数は、人口に対して圧倒的に足りていません。これから先はますます、望んでも施設に入りにくい状況になることが予想され、また実際に、既に特別養護老人ホームなどでは待機状態のところが多くなっており、地域での生活の継続が必要です。
 ところで、地域で暮らし続けるのであれば、安心して、楽しく暮らし続けたいですね。日々の健康維持、フレイルを予防する心掛け、隣近所や趣味の仲間と交流しお互いに気に掛ける間柄を保つこと…。日頃のちょっとしたことが、将来の「住み慣れたまちで、いつまでも、安心安全に暮らしたい」を支えることにつながります。

社会生活に必要な高次の生活機能

生活自立の維持することが、これからの高齢者の健康目標(健康寿命の延伸)とされています。生活自立は「身体的自立」より高次の「高次生活機能」によって測定され、視覚・聴覚機能や運動機能といった様々な能力により規定されます。

加齢に伴い低下する認知機能が、高次生活機能の低下に影響を及ぼすことが考えられていました。(Barberger-Gateau P et al,Disability & Re-habiritation,19;175-193,1997)

認知機能と高次生活機能の関係について様々な報告があります。
高齢者を対象に3つの認知機能検査(WAIS-R符号問題・数唱問題、語想起検査)と高次生活機能検査(老研式活動能力指標(老研式活動能力指標)を実施し、認知機能と高次生活機能と正の関連性を有する遂行機能は3つの高次生活機能(手段的自立、知的能動性、社会的役割)すべてと関連性を有することが確認されています。(岩佐一ら,日本公衛誌,50,950-958,2003)
また、認知機能によって高次生活機能(「手段的自立」、「知的能動性」)の低下が規定されることが示唆されています。(岩佐一ら,日心第70会大会,2006)

ICF(国際生活機能分類)の視点

ICFはInternational Classification of Functioning, disability and Healthの略で、日本語では国際生活機能分類と呼ばれています。2001年に世界保健機関(WHO)によって採択されました。

ICFは、人間の生活機能と障害に関して分類するもので、人間の生活を障害の有無のみではなく、活動や参加の状況、また周囲の環境など広い視点から理解し、サポートにつなげることを目的としています。

右図のように、人間の生活機能と障害について「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つの次元及び「環境因子」等の影響を及ぼす因子で構成されており、約1,500項目に分類されています。(参照:ICFイラストライブラリー日本語版)

ここでいう「生活機能」とは簡単に言うと、「人が生きていくこと」を指しています。ご飯を食べたり運動をしたり、社会に参加したり、それらをする能力はすべて「生活機能」ということができます。

プラス面マイナス面
構成要素身体系の生理的機能(心理的機能も含む)構成要素著しい異変や喪失といった、心身機能または構造上の問題
心身機能器官・肢体とその構成部分などの身体の解剖学的部分機能障害個人が活動を行う時に生じる難しさのこと。
活動課題や行為の個人による遂行のこと活動制限個人が活動を行う時に生じる難しさのこと
参加人生場面への関わりのこと参加制約個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに体験する難しさのこと
背景因子
環境因子人々が生活し、人生を送っている物的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子
個人因子個人に関係した背景因子である(年齢・性別・社会的状況・人生体験など)。ただし、現在ICFでは分類はない

(中俣恵美:総合福祉科学研究2:106,2011)

<ICF活用で期待される効果>
ICFは、その活用により、次のようなことが期待されています。
○ 当人やその家族、保健・医療・福祉等の幅広い分野の従事者が、ICFを用いることにより、生活機能や疾病の状態についての共通理解を持つことができる。
○ 生活機能や疾病等に関するサービスを提供する施設や機関などで行われるサービスの計画や評価、記録などのために実際的な手段を提供することができる。
○ 調査や統計について比較検討する標準的な枠組みを提供することができる。

国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(厚生労働省ホームページ)

ICFについて」(文部科学省ホームページ)

◎暮らしのヒント 支援のポイント ~ ICFを理解して活用しましょう ~
 支援者にとって、ICF(国際生活機能分類)は利用者の生きることについての全体像を把握し、働きかけていくための「共通言語」となるツールです。
 介護や支援を必要とする人への働きかけは、一人の支援者だけによるものではなく、本人はもちろん、家族、身近な人、さまざまな専門職が連携しておこないます。その際には、みんなに共通したツールが必要であり、それが、利用者の生活の一部のみならず、生きること全体へのよりよい働きかけにつながります。
 利用者の尊厳を尊重し、主体性を保ち、意思決定を支援する、よりよい介護の実現のためには、利用者の生きることの全体をとらえて考えるICFの理解が役立ちます。

認知機能と社会機能

社会機能とは、個人が家庭や職場、学校といったコミュニティの中で、あるいは夫婦、家族、友人といった社会関係性において、相応の社会的役割を果たすのたに発揮すべき機能を指します。(Mueser K,et al;Handbook of Social Functioning in Schizophrenia.1998)

統合失調症では広範囲にわたり認知機能障害が認められ、その社会機能障害との関連が指摘されており、自身の障害に関して社会機能や認知機能という指標を介して理解を深めることにより、当事者がより主体的に治療やリハビリテーションに取り組むことができると考えられています。(藤井千代;精神経誌,111(3)2009)

車の運転と認知機能

高齢者による交通事故が近年増加する中で、認知機能の低下に対する高齢ドライバーへの対応が社会的な課題となっています。

現在は、75歳以上の運転者を対象とした臨時高齢者講習及び免許証更新時の高齢者講習を適切に行うため、記憶力・判断力の判定を内容とした認知機能検査が実施さされていますが、2017年3月の改正道交法施行により高齢者の運転免許の自主返納が大幅に増えています。

また、身体障害を持つ人への自動車運転の支援は積極的に行われている一方で、脳疾患による高次脳機能障害者の運転適性に対する評価、判断については十分な議論が行われていないとの問題が指摘されています。

認知機能に問題がある人の運転適性の評価、運転の継続や再開のためのリハビリテーションプログラム、免許返納へのアプローチや社会的代替資源の利用など、検討すべき様々な個別課題があります。(運転と認知機能研究会)

◎暮らしのヒント 支援のポイント ~ 運転について自分で考えるために ~
 現代の日本では、大勢の人にとって、車の運転は毎日の生活を維持するために、必要不可欠でしょう。また、ドライブが大好きで楽しみだという人もいらっしゃいます。
 高齢になるにつれ、若いころと比べると認知機能や身体機能は低下し、運転に不安をかじる方もいらっしゃいます。また、高齢になった親の運転を心配する方もいらっしゃいます。そんな不安や心配があっても、生活の維持を考えると簡単にやめることも決断できず…という場合が多いのではないかと思います。運転することは、外出の機会になり、社会参加につながります。生活の中で、役割をもたらし、はりあいにもなります。いつまで運転できるのか、いつやめる決断をするべきなのか、そう簡単には決められません。
 自分の認知機能の状態について知ることは、運転で気を付けることや、運転するかどうかを考える一助となります。日頃の自分自身の認知特性や、その変化を確認して、無理をしない心掛けや、心配な時は相談したり、誰かに頼る決断も時には大切です。
 まずは、認知機能を自分で確認することから、はじめてみませんか?

車の運転と認知機能に関する詳しい説明は「認知機能と社会生活①車の運転」のページをご覧ください。

就学・就労の場で認知機能の可視化の必要性

発達障害をもつ人が増えていますが、昔は「変わった人」や「ダメなやつ」などで片づけられていた人々(子どもたち)が、学校や職場で周囲との関係がうまくとれなかったり、勉強がわからなかったり、仕事の段取りができない等で、発達に偏りやでこぼこがあることが家族や上司から指摘され、受診するケースが増えているようです。発達障害を持つ人の増加の要因は、潜在していた発達障害が顕在化した結果であるという意見もあります。これから先も、発達障害児・者の特性に応じた環境調整が、ますます必要になるといえるでしょう。

2018年の新学習指導要領では、他者と協力しながら、主体的に課題を発見し、解決に向けて学ぶ学習法、つまり、一人で黙々勉強するのではなく、仲間と話し合いながら課題解決への授業が記載されています。この新しい学習法が実施されると、発達障害・自閉症スペクトラムの特性を持ちコミュニケーションを図ることに困難がある場合には、これまで以上に学校生活が難しいケースがあるのではと懸念されています。

就学と認知機能に関する詳しい説明は「認知機能と社会生活③学ぶということ」のページをご覧ください。
就労と認知機能に関する詳しい説明は「認知機能と社会生活③働くということ」のページをご覧ください。

孤立や喪失と認知機能

かつては、社会的孤立(社会の中で居場所がない状態、または社会的な安定性を持たない社会的集団に属している状態)はマイノリティと称される人たち特有の問題とされていました。しかし、少子高齢化、結婚に対する若者の意識の変化、地縁血縁社会の崩壊、プライバシー保護の厳格化、家族や社会とのコミュニケーションが希薄化しネットによる交流が主となっている若者、また終身雇用制度の崩壊をはじめ、長引く不況において団塊の世代の退職・雇用減少といった要因が重なり合い、特に単身者はますます孤立しやすい社会へと急速に移行しています。
核家族化や地域との関係性の希薄化は、育児や介護をきっかけに孤立する要因でもあり、未婚や離婚による単身者における親の介護、介護による離職など、複合的な問題により孤立の度合いが高まります。

2010年における高齢者の孤立死は年間で1万5千件を数えており、これは同年に亡くならた全高齢者のおよそ1・5%に当たります。(ニッセイ基礎研究所「セルフ・ネグレクトと孤立死に関する実態把握と地域支援のあり方に関する調査研究報告書」)

社会的孤立は、単に人との交流が乏しいだけでなく、健康の社会的決定要因の1つです。健康な高齢者を10年追跡し、健康リスクになりうる交流の乏しさの基準を検討したところ、同居者以外との対面・非対面交流をあわせて、週1回未満という状態はその後の要介護や認知症と有意に関連していると報告されています。(斉藤雅成ら、日本公衛誌,62(3),2015)

<喪失体験>
喪失体験は大きなストレスを引き起こします。特に重大なのは死別や病気です。他の出来事と比べて配偶者が関係する喪失体験がいかに大きなストレスをもたらすかを表しています。
高齢期は喪失期とも言われ、「心身の健康の喪失」「経済的基盤の喪失」「社会的なっながりの喪失」「生きる目的の喪失」の四つで特徴づけられています。(長谷川和夫 「老人の心理」 長谷川和夫 ・賀集竹子編 『老人心理へのアプ ローチ』 医学書院 1975)
同様に、「健康の喪失」「経済の喪失」「役割の喪失」の三つを指摘しているものもあります。(藤田綾子 「老年期のパーソナリティーと適応」村井潤一 ・藤田綾子編 『セ ミナー介護福祉⑦ 老人 ・障害者の心理』 ミネルヴ ァ書房 ,39-53,1995)

認知機能が低下することは、自己の喪失や役割の喪失、関係性の喪失など、さまざまな喪失を同時に経験する危機的な状況につながりやすく、その結果、意欲の低下やうつ状態を引き起こすことも考えられます。

◎暮らしのヒント 支援のポイント ~ 淋しい・悲しい・孤独感に寄り添って ~
 私たちの毎日の中には、さまざまな出来事が起こります。さまざまなことが起こることを想定していても、時には深い悲しさや淋しさに包まれることもあります。そんな感情をもたらす出来事を、全て回避することはできません。時とともに癒えるものもあります。一方、時がたっても癒えないどころか、どんどん辛くなる場合もあります。人に癒されることもあれば、反対のこともあります。
 ところで、そのような辛く悲しい状態が、認知機能にも影響をもたらしている場合があります。
 辛いな、悲しいな、もう嫌だな、何もしたくないな…、そんなふうに思える場合は、一人で抱え込まず、保健センター・地域包括支援センター・心療内科・保健室の先生や学校カウンセラー・臨床心理士など、こころや気持ちの相談ができる窓口に相談するのは良い方法です。

スポーツ障害と認知機能

2014 年のフィギュアスケートグランプリ中国大会で、羽生選手が練習中に他選手と接触し転倒し、応急処置をしたのち、協議に復帰し演技を完遂したことに対して、多くの賞賛が寄せられる一方で、協議続行に否定的な意見が少なからずありました。この時、選手は転倒により脳震盪を受傷していた可能性があり、競技種目の如何を問わず、脳震盪を受傷した場合、同日の競技復帰は禁止というのが今日の国際的コンセンサスになっていることから、選手の安全管理について議論が起きました。

脳震盪などの軽い頭部外傷だとしても繰り返すことにより、後遺症として高次脳機能障害が生じる可能性があります。(永廣信治ら.神経外傷.2013)

頭部への衝撃から生じる脳震盪を起因とする神経変性疾患及び認知症に似た症状を持つ進行性の脳障害疾患であるパンチドランカー(dementia pugilistica)は有名でボクサーに多く見られる疾患ですが、最近では、一人あたりの試合数の軽減やラウンド数の軽減などにより、その頻度は減少してきています。しかし、スポーツの低年齢化が進むことで、ボクシングだけでなくサッカーのヘディングの繰り返しも高次脳機能に影響を与える可能性が指摘されています。
( 谷諭.臨床スポーツ医学.2010 )

SCAT3(Sport Concussion Assessment Tool 3):脳振盪を受傷した選手を評価する 標準的な方法を示しています。10歳以上の選手に用いることができます。
スポーツ現場における脳震盪の評価(監修:日本脳神経外傷学会 日本臨床スポーツ医学会)

◎暮らしのヒント 支援のポイント ~ 昔の常識は、今はもう… ~
 科学技術の進歩とともに医学やその他さまざまな分野についての研究が進んでいます。スポーツや運動についても、一昔前に当たり前に行われていたことが、その後の研究から危険につながるとわかり、今では行われていない、ということもあります。
 脳機能と脳震盪(しんとう)についても、「昔」の常識が大きく変わってきています。
 練習中の水分補給、脳震盪後の対応、ケガをした時の対処法…子どものころと今とでは違う点がいろいろ思い当たるでしょう。
 スポーツや運動を安全に行うため、また、スポーツに親しむ子どもたちの将来へ向けた安全のためにも、これからの研究の進展に期待するとともに、今からできる取り組みについては情報を集めて、適切に始めていくことが大切です。

スポーツ障害(主に脳震盪)と認知機能に関する詳しい説明は「認知機能と社会生活⑤脳震盪」のページをご覧ください。

ストレスと認知機能

私たちが社会生活を送るうえで、ストレスは身近な問題です。

総理府が行った調査で「日頃、ストレスを感じている」と答えた人は56.9%で、実に半数以上の人が日々何らかのストレスを抱えているという報告があるという結果でした。

ストレスは全てが悪いわけではなく、適度なストレスは、人生を豊かにするために必要不可欠です。適度なストレスは、目標や夢のように自らを奮い立たせたり、勇気付けたり、元気づける要因になります。

ストレスと認知機能の関係について、様々な報告があります。

日常における様々なストレスはヒューマンエラーやパフォーマンスの低下などに関連しており,また同時にコルチゾールなどのストレスホルモンは人の認知機能(特に注意機能)を阻害することが報告されています。(Lupien SJ et al. Psychoneuroendocrinology. 2005; 30: 225-242、 Roelofs K et al.Biol.Psychol. 2007; 75: 1-7)

また、Miryan(米国国立老化研究所:National Institute on Aging、NIA)の研究グループが行った研究でストレスに反応して分泌されたコルチゾールが大脳皮質の神経細胞に直接作用し認知機能を低下させるという仮説を裏づける報告がありました。
(Mirjam I. Geerlings et al,Neurology. 2015 Sep 15; 85(11): 976–983)

この研究は、認知症を発症していない高齢者(4,244人)を対象に朝・夕に唾液腺コルチゾールを測定し、MRI(磁気共鳴画像診断装置)で脳の容積を測定、認知機能検査で思考能力や記憶能力を評価し、唾液腺コルチゾールと脳容積や認知機能との関連性を検討したものです。
朝のコルチゾールは基礎分泌能力、夕方のコルチゾールは日常生活のストレスを反映しており、日常生活のストレスを減らして、朝のコルチゾールは高めに夕方を低めに保つことが重要であるとされています。

一方で、カリフォルニア大学の研究チームが行った動物実験によると、突発的なストレスが適度にあると、神経細胞が大幅に増殖し、むしろ記憶力の向上に役立つという報告があります。(カリフォルニア大学メディアリリース「Researchers find out why some stress is good for you」,2013)

ゲームと認知機能

ゲームによる認知機能への影響については様々な報告がなされており、子どもにおいてはゲーム時間(ゲームの種類は特定しない)が長いほど、脳内の神経連絡に悪影響があると解釈できる結果が出ています。(Takeuchi H et al:Mol Psychiatry,21(12):1781-1789,2016)

若年青年男性において、ビデオゲームをする時間が長いほど嗅内皮質と後頭ー頭頂皮質のはい白質量が多く、それらはナビゲーションや視覚的注意により影響を与えられていると考えられています。(Kuhn S et al,Mol Psychiatry,19(2):265-271(2014)

一方で、50分間ゲーム開始前と開始後の脳内の線条体でドーパミンの放出が2.0倍に増えていた(Koepp et al.,Nature,21,393,1998)、ゲーム依存の若者18名とそうでない若者18名を対象に脳の画像解析をした結果、眼窩前頭前野、前帯状回等の大脳皮質で神経ネットワークの低下が認められた(Lin et al., PLosOne,7(1),2012)などの報告もあります。

高齢者については、ゲームが認知機能改善に効果があるが、すべてのゲームが効果的かどうか検証されていません。(Tril P et al:Psychol Aging,29(39:706-716,2014)

60~85歳の人を対象に行った三次元のレーシングゲームでの多重課題訓練では、成績の改善やそれに対する脳波は認知制御の付加軽減を示し半年間持続したとの報告があります。(Anguera JA et al:Nature,501(7465):97-101,2013)

◎暮らしのヒント 支援のポイント ~ ゲームとうまく付き合って ~
 ビデオゲーム(テレビゲーム)は、好きですか?
 最近では、ゲームといってもさまざまなジャンルの、さまざまなタイプのゲームがあります。RPG、シューティング、推理もの、バトル、パズル…好みはさまざまだと思います。
 また、最近では、外に出て歩く必要のあるゲームもあります。仲間とコミュニケーションをとりながら進めるゲームもあります。ラケットやスティックをもって、身体を動かすゲームもあります。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった技術を利用したゲームもあります。
 ゲームが一人でテレビに向かって部屋にこもってするもの、という概念も、最近では当てはまらないものが数多く出回っています。ゲームを、毎日の生活の楽しみや、息抜き、運動や交流のきっかけなど、生活を豊かにできるように活用できるといいですね。
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