家族療法:学習ガイド
用語集
用語定義
家族療法「家族を一つのシステムとして捉え、その相互作用パターンを変化させることで、個人や家族全体の心の問題に対処する治療法。」
ダブルバインド「家族の中で、矛盾したメッセージを繰り返し受け続けることで、子どもが精神的に混乱してしまうコミュニケーションパターン。」
サイバネティックス「フィードバックループを通じてシステムが自己調整を行う仕組みを研究する学問分野。家族療法では、家族システムがどのように自己調整しているかを理解するために用いられる。」
恒常性「システムが安定状態を維持しようとする傾向。家族療法では、家族が機能不全に陥ったパターンを維持することで、安定性を保とうとすることがある。」
サブシステム「家族システムの中で、特定の機能を持つ小さなグループ。例:夫婦サブシステム、親子サブシステムなど。」
境界「システムと環境との間の境界線。家族療法では、家族システムと外部との間の境界、家族内のサブシステム間の境界が重要視される。」
ジェンダー「意識性別が家族内の力関係や役割にどのように影響するかを認識すること。」
文化への配慮「文化的な背景が家族の価値観、信念、行動にどのように影響するかを理解すること。」
リフレーミング「問題行動を異なる視点から見て、新しい意味を与えることで、問題に対する見方を変えるテクニック。」
循環尋問「家族内の複数の人に同じ質問を投げかけることで、家族システム全体のダイナミクスを明らかにする面接技法。」
外在化「問題を個人から切り離し、家族システムの外側に位置づけることで、問題に対する新たな対処法を見出すテクニック。」
ジェノグラム「家族の構成員とその関係を視覚的に表した図。家族療法では、家族のパターンや歴史を理解するために用いられる。」
疑似相互性「表面的には親密に見えるが、実際には深い感情的なつながりがない家族関係。」
スケープゴート「家族内の問題の責任を、特定の一人に押し付けてしまうこと。」
小テスト
問題:
- 家族療法における「ダブルバインド」とは何か、具体例を挙げて説明しなさい。
- 家族療法において「サイバネティックス」の概念はどのように用いられるか、説明しなさい。
- 家族療法では、家族を「システム」として捉えることが重要視されるのはなぜか、説明しなさい。
- 家族療法において「境界」はなぜ重要なのか、説明しなさい。
- 家族療法士が「ジェンダー意識」と「文化への配慮」を持つことが重要なのはなぜか、説明しなさい。
- 家族療法における「リフレーミング」とは何か、具体例を挙げて説明しなさい。
- 家族療法における「循環尋問」とはどのようなものか、説明しなさい。
- 家族療法における「外在化」とは何か、具体例を挙げて説明しなさい。
- 家族療法において「ジェノグラム」はどのような目的で用いられるか、説明しなさい。
- 家族療法における「疑似相互性」とは何か、具体例を挙げて説明しなさい。
解答:
- ダブルバインドとは、家族の中で、矛盾したメッセージを繰り返し受け続けることで、子どもが精神的に混乱してしまうコミュニケーションパターンである。例えば、母親が言葉では「あなたのことが大切」と言いながら、態度では拒絶を示す場合、子どもは混乱し、自己肯定感が損なわれる可能性がある。
- サイバネティックスは、フィードバックループを通じてシステムが自己調整を行う仕組みを研究する学問分野である。家族療法では、家族システムがどのように自己調整しているかを理解するために用いられる。例えば、家族の中で一人が問題行動を起こすと、他の家族はその行動を抑制しようと試み、システム全体のバランスを維持しようとする。
- 家族を「システム」として捉えることで、家族内の個人を孤立して見るのではなく、相互に影響し合う存在として理解することができる。問題行動は、個人の問題ではなく、家族システム全体の機能不全の結果として現れると捉える。
- 境界は、家族システムと外部との間の境界線、家族内のサブシステム間の境界を指す。明確な境界は、家族システムが適切に機能するために不可欠である。境界があいまいだと、家族間の役割や責任が不明確になり、問題が生じやすくなる。
- ジェンダー意識と文化への配慮は、家族療法において非常に重要である。なぜなら、ジェンダーや文化は家族の価値観、信念、行動に大きな影響を与えるからである。セラピストは、クライアントの文化的背景を理解し、尊重することで、より効果的な治療を提供することができる。
- リフレーミングとは、問題行動を異なる視点から見て、新しい意味を与えることで、問題に対する見方を変えるテクニックである。例えば、非行を繰り返す子どもに対して、「反抗的だ」と決めつけるのではなく、「自立しようとしている」と捉え直すことで、親子の関係性を改善できる可能性がある。
- 循環尋問は、家族内の複数の人に同じ質問を投げかけることで、家族システム全体のダイナミクスを明らかにする面接技法である。例えば、「お父さんが怒りっぽくなった時、お母さんはどう感じますか?」と家族全員に聞くことで、家族内の力関係やコミュニケーションパターンを分析することができる。
- 外在化とは、問題を個人から切り離し、家族システムの外側に位置づけることで、問題に対する新たな対処法を見出すテクニックである。例えば、「お母さんのうつ病」を、「うつ病」という外部の敵と捉え直すことで、家族全員で協力して問題に立ち向かうことができるようになる。
- ジェノグラムは、家族の構成員とその関係を視覚的に表した図である。家族療法では、家族のパターンや歴史を理解するために用いられる。世代間で繰り返される問題や、家族内の役割などを分析することで、より効果的な治療計画を立てることができる。
- 疑似相互性とは、表面的には親密に見えるが、実際には深い感情的なつながりがない家族関係である。例えば、夫婦喧嘩が絶えない家族では、常に本音をぶつけ合っているように見えるが、実際には互いの本心を知ることなく、表面的なコミュニケーションに終始している場合がある。
エッセイ問題
- あなたは、家庭内で頻繁に口論が起こる夫婦の家族療法士だとします。夫婦は、互いに相手が問題であると非難し合っています。あなたは、家族療法のどの理論的枠組みを用いて、この夫婦にどのように介入しますか?具体的な治療計画を立て、その根拠を説明しなさい。
- あなたは、不登校に悩む子どもを持つ家族の家族療法士だとします。子どもは、学校でいじめられていると話していますが、親は「甘えているだけだ」と子どもの訴えを真剣に受け止めていません。あなたは、この家族に対してどのようなアセスメントを行い、どのような介入を行いますか?具体的な方法を説明しなさい。
- 近年、家族療法における「物語療法」が注目されています。物語療法の理論的背景、治療技法、他の家族療法との違いについて論じなさい。
- 家族療法において「文化への配慮」はなぜ重要なのでしょうか。多文化社会における家族療法の課題と展望について論じなさい。
- あなたは、家族療法における倫理的なジレンマに直面したとします。例えば、クライアント家族の一人が、他の家族に内緒であなたに相談を持ちかけてきた場合などです。あなたは、どのように対応しますか?家族療法における倫理綱領に照らし合わせて論じなさい。