CBT-H-5-1 認知的評価 課題と方法 1 学習補助

概要

このテキストは、認知評価の概念と手法について説明したものです。特に、不安やうつ病における認知的側面に焦点を当てており、さまざまな認知評価尺度と研究をレビューしています。このテキストは、認知的評価が精神障害の理解と治療において重要な役割を果たすことを示唆しています。また、これらの尺度に関するさらなる研究と、認知と他の領域(例えば、生物学的要因、対人関係)との統合の必要性を強調しています。

目次

1. 序論:心の現実の構築

  • 本章では、人間の認知機能を情報処理の観点から捉え、認知評価の実践における概念的・方法論的問題を考察します。
  • 人間の認知は、現実に対する心の見方を構築する過程で、情報を積極的に収集・選択・利用する能動的なプロセスとして捉えられます。

2. 認知評価:プロセスと方法

  • 思考評価には、時間性、構造化の程度、反応モード、刺激の性質、情報源という5つの次元が存在します。
  • 本章では、自発的な会話の録音、思考音声手順、ランダム思考サンプリング、自己監視手順、ビデオテープによる思考再構成、思考リスト、自己申告目録、臨床面接といった具体的な評価方法を紹介します。

3. 自己申告方法の利点と制限

  • 支持アプローチなどの構造化された評価は、経済性、採点と管理の容易さ、臨床実践での使用可能性、標準化、規範データの蓄積などの利点があります。
  • 一方で、構造化されていない評価は、豊富なデータが得られる可能性がありますが、評価者による解釈やバイアスの影響を受けやすいという課題があります。

4. 認知的評価の有効性に対する脅威

  • 認知評価、特に自己申告目録の構造的妥当性に関する課題として、測定対象の認知プロセスを実際に測定できているかという問題があります。
  • 回答者の解釈の多様性、感情的な経験の言語化の難しさなどが課題として挙げられます。

5. 不安の認知的評価

  • 不安の認知的評価は、不安障害の発症と維持における不適応認知の役割を理解する上で重要です。
  • 本章では、不安の認知的評価に用いられる様々な尺度を紹介します。

5.1 認知的産物

  • 不安の一般的な認知的特徴を測定する尺度として、FNE、SAD、ASI、ASSQ、CCL、NASSQなどが挙げられます。
  • 特定の不安障害に特化した尺度として、PSWQ、WDQ、AnTI、SISST、ASC、ACQ、PAI、BSQ、CCQ-M、PI-WSUR、OCTC、認知的侵入アンケート、ROII、PTCIなどが挙げられます。
  • メタ認知を評価する尺度として、MCQ、MCQ-30、心配のスケールの結果などが挙げられます。

5.2 認知プロセス

  • 不安における認知プロセスを評価する方法として、あいまいなシナリオの解釈、脅威の手がかりへの選択的処理(感情的ストループ課題、ドットプローブパラダイムなど)などが挙げられます。

5.3 残された課題

  • 不安の認知的評価における今後の課題として、既存の尺度の改良、認知構造や処理の定義の明確化、不安とうつ病の認知的特徴の識別などが挙げられます。

6. うつ病の認知的評価

  • うつ病の認知的評価は、うつ病における思考の内容、根底にある態度や信念、情報処理の方法を理解する上で重要です。

6.1 認知的産物

  • うつ病における認知的産物を評価する尺度として、ATQ、ATQ-P、PCI、ASQ、EASQ、HS、BST、CBQ、CRT、SCDなどが挙げられます。

6.2 認知プロセス

  • うつ病における認知プロセスを評価する方法として、SFSC、SCS、RRS、DRS、毎日のプロセス設計、SRET、心理的距離スケーリングタスク、感情的ストループ課題、ドットプローブタスクなどが挙げられます。

6.3 残された課題

  • うつ病の認知的評価における今後の課題として、認知的脆弱性マーカーの特定、認知変化の治療特異性の検証、認知的側面と対人関係的側面の統合、神経生物学的アプローチとの統合などが挙げられます。

7. 今後の方向性

  • 認知評価の分野は、過去30年間で大きく進歩しましたが、依然として多くの課題が残されています。
  • 認知構造、プロセス、産物の尺度間の関連性のさらなる調査、自己報告尺度の改善、生態学的妥当性の高い評価方法の開発、認知的側面と他の側面との統合などが今後の重要な方向性として挙げられます。
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