CBT-H-5-3 認知的評価 課題と方法 3 学習補助

認知評価:課題と方法

復習問題

  • 認知システムにおける情報の流れはどのように説明されていますか?(2~3文)
  • 認知システムにおける情報の流れは、主に合成プロセスと相互作用プロセスの組み合わせとして捉えられています。このシステムは、人間が能動的に情報を収集・選択・利用しながら、内的および外的環境のメンタルモデルを構築する様子を表現しています。多くの研究では、認知構造、認知プロセス、認知内容という3つのレベルにおける情報の分析に焦点が当てられています。
  • Segal & Swallow (1994) は認知構造、プロセス、内容をどのように区別していますか? (2~3文)
  • Segal & Swallow (1994) は、認知構造を情報処理を導くスキーマ、認知プロセスを環境入力を変換し意味を推論する手段、そして認知内容を意識的な思考やイメージとして捉えています。これらの要素は相互に関連しており、世界に関する知識を組織化し、処理をガイドし、アクセス可能な結果を生み出す枠組みを提供します。
  • 認知評価の方法を分類するためにGlassとArnkoff (1997) が提案した4つの次元とは何ですか? 5番目の次元を提案したのは誰ですか? (2~3文)
  • GlassとArnkoff (1997) は、時間性またはタイミング、構造化の程度、反応モード、刺激の性質という4つの次元を提案しました。これらの次元は、認知評価の方法を、時間的側面、構造化のレベル、反応の形式、そして刺激の種類によって分類することを可能にします。 5番目の次元である思考評価のソースを提案したのは、Blankstein & Flett (1990) です。
  • 思考リストと思考音声化の違いは何ですか? (2~3文)
  • 思考リストとは、特定の状況下における思考を被験者が自由に列挙するものであり、思考、期待、イメージなどを後から分析することができます。一方、思考音声化とは、被験者が思考している内容をリアルタイムで発話する手法であり、より自然な思考プロセスを捉えることができるとされています。
  • 毎日のプロセス設計の利点の1つは何ですか? (2~3文)
  • 毎日のプロセス設計の利点の1つは、従来の回顧的な自己申告アンケートと比較して、後知恵バイアスを軽減できる点にあります。毎日のストレスや気分を継続的に記録することで、特定の認知評価が気分の変化とどのように関連しているかをより正確に把握できます。
  • 不安感受性とは何ですか? どのように測定されますか? (2~3文)
  • 不安感受性とは、不安に関連する身体感覚に対する恐怖であり、それらの感覚が深刻な結果をもたらすという信念に基づいています。不安感受性は、不安感受性指数(ASI)などの自己申告式尺度を使用して測定され、身体的、認知的、社会的な不安感受性を評価します。
  • PSWQとWDQはどう違いますか? (2~3文)
  • PSWQ(ペンシルバニア州立不安アンケート)は、一般的な心配の程度を測定するのに対し、WDQ(心配領域アンケート)は、人間関係、自信の欠如、将来への不安など、特定の心配の領域を評価します。これらの尺度は、心配の全体的なレベルと特定の懸念領域の両方を理解するために役立ちます。
  • うつ病の認知評価において、自己申告式尺度と客観的尺度の両方を使用することの利点を説明してください。 (2~3文)
  • 自己申告式尺度は、うつ病者の思考内容や信念に関する直接的な情報を提供する一方で、客観的尺度(例:ストループ課題)は、意識的な報告が難しい、より自動化された認知プロセスを明らかにすることができます。これらの方法を組み合わせることで、うつ病の多面的な理解を得ることができます。
  • 否定的な気分誘発は、うつ病になりやすい個人の認知評価にどのような影響を与えますか? (2~3文)
  • 否定的な気分誘発は、うつ病になりやすい個人のネガティブな自己スキーマを活性化し、自己言及情報に対する否定的な処理バイアスを高める可能性があります。このことは、ネガティブな気分が、潜在的な認知の脆弱性を明らかにし、うつ病の発症リスクを高める可能性があることを示唆しています。
  • うつ病の認知評価における今後の課題として、どのようなものがありますか? (2~3文)
  • うつ病の認知評価における今後の課題としては、認知の脆弱性マーカーの特定、様々な認知療法の効果に関するさらなる研究、そして認知的側面と神経生物学的側面の統合などが挙げられます。これらの取り組みは、うつ病の予防、評価、治療のためのより効果的な戦略の開発に貢献するでしょう。

論文形式の質問

  1. 人間の認知機能に関する情報処理モデルについて説明し、このモデルが認知評価の理解にどのように役立つかについて論じてください。
  2. 認知評価における自己申告式尺度と客観的尺度の相対的な利点と限界について、具体例を挙げながら論じてください。
  3. 不安の認知モデルについて説明し、様々な不安障害における不適応な認知の役割を論じてください。
  4. うつ病の認知理論におけるスキーマの概念について説明し、うつ病者の情報処理にスキーマがどのように影響するかを論じてください。
  5. うつ病の認知評価における気分誘導またはプライミングの役割について、その利点と限界を考慮しながら論じてください。

主要用語集

  • 認知構造: 情報処理を導く、アクセスできないスキーマの仮説。
  • 認知プロセス: 環境入力を変換し、そこから意味を推測する手段。
  • 認知内容: 意識的な思考やイメージ。
  • 思考リスト: 特定の状況下で被験者が経験した思考を自由に列挙する方法。
  • 思考音声化: 被験者が思考している内容をリアルタイムで発話する方法。
  • 毎日のプロセス設計: 日々のストレスや気分の症状を数日または数週間にわたって評価する自己監視の一種。
  • 不安感受性: 不安に関連する身体感覚に対する恐怖であり、それらの感覚が深刻な結果をもたらすという信念に基づいている。
  • 自己スキーマ: 自己に関する信念や期待の認知的枠組み。
  • プライミング: 特定のスキーマや認知構造を活性化するために、事前に関連する刺激を提示すること。
  • 暗黙的関連性テスト: 修正された反応時間パラダイムを使用して、2つの概念(例:自己と否定的な形容詞)間の自動的な関連性の強さを測定する。

認知評価における承認方法と生成方法:それぞれの長所と短所

認知評価において、思考や信念を探る方法は大きく分けて、承認方法生成方法の2つに分類できます。 承認方法は、あらかじめ用意された質問や記述に対して、自分がどれだけ当てはまるかを回答者が評価する形式です。一方、生成方法は、回答者が自ら自由に思考や信念を記述する形式です。 ソース[2、3、6、7]は、さまざまな認知評価方法を、時間的および構造的側面から分類し、さらに回答者が思考を生成するか承認するかという観点も提示しています。

1. 承認方法

  • 例: アンケート、自己報告型目録 (例:自動思考アンケート[ATQ]、機能不全態度尺度[DAS]、不安感受性指数[ASI]、ペンシルベニア州立不安アンケート[PSWQ]など) [7、16、17、20、32、43]
  • 長所:
    • 経済性: 費用対効果が高く、実施と採点が容易であるため、研究や臨床現場で広く利用されています。
    • 標準化: 質問や回答選択肢が事前に決まっているので、回答者間や研究間での比較が容易です。
    • 心理測定的特性: 信頼性や妥当性に関する情報が蓄積されており、尺度としての質が評価しやすいという利点があります。
  • 短所:
    • 表面的な情報: あらかじめ用意された選択肢に限定されるため、回答者の思考や信念の複雑さや深さを十分に捉えきれない可能性があります。[9、11]
    • 自己報告バイアス: 回答者が自分の思考や信念を正確に認識・報告しているとは限らず、社会的望ましさバイアスなどの影響を受ける可能性があります。[11、12]
    • 文脈の影響を受けやすい: 特定の状況や気分状態に影響を受けやすく、回答者の状態や状況によっては測定結果が変わってしまう可能性があります。

2. 生成方法

  • 例: 思考リスト法、思考音声化法、思考サンプリング法 [3、6]
  • 長所:
    • 豊富な情報: 回答者が自由に記述するため、思考や信念の複雑さや深さをより詳細に捉えることができます。
    • 予期しない発見: あらかじめ設定した枠にとらわれないため、新たな発見や仮説の生成につながる可能性があります。
    • 文脈の影響を受けにくい: 実際の状況での思考を捉えることができるため、自己報告バイアスや文脈の影響を受けにくいという利点があります。
  • 短所:
    • 時間と労力: 実施と分析に時間と労力がかかるため、大規模な研究には不向きな場合があります。[9、30]
    • 標準化の難しさ: 回答が自由記述であるため、回答者間や研究間での比較が難しい場合があります。
    • 心理測定的特性: 尺度としての信頼性や妥当性の検討が十分になされていない場合があり、評価が難しいという側面があります。

結論:

承認方法と生成方法は、それぞれに長所と短所があります。 どちらの方法が優れているかではなく、研究の目的や対象、利用可能な資源などを考慮して、適切な方法を選択することが重要です。 また、両方の方法を組み合わせることで、より包括的な認知評価が可能になる場合もあります。 特に、生成方法で得られた情報を元に、新たな承認方法を開発するといった流れは、今後の重要な方向性と言えるでしょう。


認知評価は、不安やうつ病の症状を区別し、理解する上で重要な役割を果たします。情報処理の観点から人間の認知機能を調べ、個人とその精神的プロセスに関する貴重な洞察を提供します。ソースは、不安とうつ病の症状の区別に役立つ、認知評価における重要な考慮事項を明らかにしています。

不安とうつ病における認知評価の重要性

不安とうつ病の両方が認知機能に影響を与えますが、これらの状態における思考パターンには明確な違いがあります。不安はしばしば、知覚された脅威に対する誇張された、または非現実的な反応を特徴とし、個人は将来の出来事について反芻したり、心配したりします[15、16、17]。対照的に、うつ病は、絶望感、自尊心の低下、喜びの喪失を特徴とする、より内向きで自己批判的な思考パターンを伴うことがよくあります[32、36、37]。

不安と関連する認知的評価

不安の認知的評価は、思考の内容(心配すること、恐怖)、思考のプロセス(脅威に関連する情報の解釈と処理の方法)、および基礎となる認知構造(信念と仮定)の調査に焦点を当てています。たとえば、不安障害を持つ人は、脅威に関連する手がかりに選択的に注意を払い、あいまいな状況を脅威的なものとして解釈する可能性があります。

ソースは、不安の認知的評価における以下の尺度と方法について言及しています。

  • 自己申告目録とアンケート: これらの尺度は、心配のレベル(例:ペンシルベニア州立不安アンケート[PSWQ]、心配領域質問票[WDQ]、心配思考インベントリ[AnTI])、不安感受性(例:不安感受性指数[ASI])、パニック関連の思考(例:パニック評価インベントリ[PAI])、強迫観念と強迫(例:パドヴァインベントリ-ワシントン州立大学改訂[PI-WSUR]、強迫観念チェックリスト[OCTC]、認知的侵入質問票、改訂された強迫観念侵入インベントリ[ROII])、トラウマ関連の思考(例:心的外傷後認知インベントリ[PTCI])、メタ認知的信念(例:メタ認知質問票[MCQ]、心配スケールの結果)、および社会的不安(例:社会的相互作用自己記述テスト[SISST]、社会的懸念評価[ASC]スケール)を評価します[16、17、18、19、20、21、22、23、24]。
  • 思考リストと思考音声手順: これらの方法は、不安を引き起こす状況(例:社会的状況における社会的不安のある個人の場合、または広場恐怖症のある個人のショッピングモールでの曝露セッション中)で発生する思考のリアルタイムのキャプチャを可能にします。
  • ドットプローブパラダイム: この実験的尺度は、脅威に関連する刺激に対する注意バイアスを評価します。不安のある人は、脅威に関連する刺激に注意を払うことにより大きな困難を示す傾向があり、基礎となる認知的スキーマが彼らの注意プロセスにどのように影響するかを示唆しています。
  • 感情的ストループカラーネーミングタスク: このタスクは、不安のある人がどのように情報を処理するかを評価します。不安のある人は、中立的な言葉と比較して、脅威関連の言葉の色に名前を付けるのに時間がかかります。これは、脅威関連の情報に対する注意バイアスを示唆しています。

うつ病と関連する認知的評価

うつ病の認知的評価は、しばしば、絶望、自尊心の低下、価値観の低下など、否定的な思考の内容に焦点を当てています。また、うつ病の人は、物事を否定的な光の中で解釈する傾向があり、自分自身や将来について悲観的な見方を示します。

ソースは、うつ病の認知的評価における以下の尺度と方法について言及しています。

  • 自己申告目録とアンケート: これらの尺度は、否定的な自動思考(例:自動思考アンケート[ATQ])、絶望感(例:絶望感尺度[HS])、帰属スタイル(例:帰属スタイルアンケート[ASQ]、拡張帰属スタイルアンケート[EASQ])、自己概念(例:ベック自己概念テスト[BST])、および機能不全の態度(例:機能不全の態度スケール[DAS])を評価します[32、33、34、36、38、43]。注目すべきことに、自動思考アンケート-ポジティブ[ATQ-P]や完璧主義認知インベントリ[PCI]などの尺度は、うつ病のより包括的な全体像を提供するために、否定的な思考パターンだけでなく、肯定的な思考パターンも評価します。
  • 毎日のプロセス設計: この方法は、うつ病の人々の認知反応性を理解するために使用され、時間の経過に伴う彼らの思考、気分、および出来事を追跡します。この方法は、特定の状況がどのように彼らの否定的な思考パターンと気分に影響を与えるかについての洞察を提供します。
  • 自己焦点文完成タスク[SFSC]と自己意識スケール[SCS]: これらの尺度は、うつ病に寄与する可能性のある自己中心的な注意を測定するために使用されます。
  • 反すう反応尺度[RRS]: この尺度は、うつ病における憂鬱な気分を長引かせる要因となる可能性のある反すう、つまり否定的な思考を繰り返し考える傾向を測定します。
  • 認知バイアステスト[CBQ]と認知反応テスト[CRT]: これらの尺度は、うつ病の人がどのように情報を処理し、解釈するかを評価します。うつ病の人は、情報を否定的に歪める傾向があり、状況に対するより悲観的または自己批判的な見方を示します[38、39]。
  • 暗黙的関連テスト[IAT]と自己参照符号化タスク[SRET]: これらのタスクは、うつ病に寄与する、自己と否定的な属性との間の無意識の関連を評価します[49、50]。
  • 感情的ストループカラーネーミングタスク: うつ病の人は、肯定的または中立的な言葉と比較して、否定的な言葉の色に名前を付けるのにより多くの時間がかかります。これは、否定的な情報に対する注意バイアスを示唆しています。
  • ドットプローブタスク: うつ病の人は、悲しい顔に選択的に注意を払う傾向があり、否定的な情報に対する注意バイアスを示唆しています。

不安とうつ病の区別

認知評価を使用すると、不安とうつ病を区別するのに役立つ、これらの状態における思考パターンの微妙な違いを特定できます。たとえば、不安のある人は、危険や不確実性に関する思考を経験する可能性が高く、うつ病の人は、絶望、無価値感、または自己嫌悪に関する思考を報告する可能性が高くなります。

ソースは、不安とうつ病の症状を区別するための認知評価の使用に関する特定の課題について言及しており、たとえば、自動思考アンケート[ASSQ]は、不安とうつ病を区別するのに十分な特異性を示していません。さらに、認知チェックリスト-不安[CCL-不安]尺度は、不安症状と抑うつ症状を区別していません。これらの課題に対処するために、ブリティッシュコロンビア大学認知インベントリや子供向けの否定的な影響自己申告アンケート[NASSQ]など、認知内容の特異性を最大化することを目的とした尺度が開発されました。

さらに、ソースは、不安とうつ病では注意バイアスに違いがあることを示唆する研究を強調しています。全般性不安障害の人は、脅威的な言葉や怒った顔などの小さな否定的な手がかりに対して注意バイアスを示す可能性があります。一方、うつ病の人は、特に自分自身に関連する場合、より広範な否定的な刺激に対して注意バイアスを示す可能性があります。

制限事項と今後の指示

ソースはまた、認知評価に伴う制限について言及しています。

  • 自己申告バイアス: 自己申告の尺度は、個人が自分の思考や感情を正確に報告する能力に依存しています。
  • コンテキストの影響: 個人の認知は、特定の状況や気分状態の影響を受ける可能性があります。
  • 測定の複雑さ: 思考、信念、スキーマなどの認知プロセスは複雑であり、完全に捕捉するのが難しい場合があります。

これらの制限に対処し、認知評価の分野をさらに発展させるために、ソースでは以下のことが推奨されています。

  • より洗練された尺度の開発
  • 認知構造、プロセス、製品間の相互作用の調査
  • 認知評価における統合的アプローチの使用(例:自己申告尺度と神経生物学的尺度の組み合わせ)

結論

認知評価は、不安とうつ病の症状を区別し、理解するための貴重なツールを提供します。臨床医や研究者は、さまざまな評価方法を使用することにより、これらの状態における個人の独自の思考パターン、信念、およびバイアスに関する洞察を得ることができます。この情報は、標的介入を開発し、うつ病とうつ病の性質と治療に関する理解を深めるのに役立ちます。ソースで強調されている継続的な課題と今後の指示は、この分野におけるさらなる探求と知識の洗練の必要性を強調しています。


アンケートと思考リスト化:4つの次元からの比較

認知評価において、アンケートと思考リスト化のような生成方法は、時間性、構造、反応モード、刺激の性質という4つの次元において、以下のような違いがあります。

1. 時間性

  • アンケート: 多くの場合、遡及的な評価を行います。回答者は、過去の特定の期間(例:過去1週間)における自分の思考や信念を振り返って評価します。 例えば、DAS や ATQ では、過去の経験に基づいて現在の思考や信念を評価します。
  • 思考リスト化:同時進行または遡及的な評価が可能です。
    • 同時進行評価: 特定の課題や状況(例:スピーチの実施中)中に、浮かんだ思考をリアルタイムで記録します。 例えば、広場恐怖症の参加者がショッピングモールでの暴露セッション中に頭に浮かんだことを報告する研究などがあります。
    • 遡及的評価: 課題や状況後(例:試験直後)に、経験した思考を思い出しながら記録します。

2. 構造

  • アンケート: あらかじめ用意された質問や記述項目に対して回答するため、構造化されています。 回答者は、決められた選択肢の中から、自分の思考や信念に最も近いものを選択します。
  • 思考リスト化: 回答者が自由に思考を記述するため、非構造化です。 特定の質問や選択肢はなく、思考の内容や形式に制限はありません。

3. 反応モード

  • アンケート: 書面による反応が一般的です。 回答者は、紙媒体またはコンピュータ画面上の質問に目を通して回答します。
  • 思考リスト化:書面または口頭による反応が可能です。
    • 書面: 思考を紙に書き出します。
    • 口頭: 思考を声に出して記録します(思考音声化法)。

4. 刺激の性質

  • アンケート:一般的な思考想像上の状況、または過去の経験に関する質問が用いられます。
    • 一般的な思考: 特定の状況を想定しない、一般的な思考や信念を評価します(例:「私は役に立たない人間だと思うことがある」)。
    • 想像上の状況: 特定の状況を想像させ、その状況下における思考や信念を評価します(例:「もし、私が重要なプレゼンテーションで失敗したら…」)。
    • 過去の経験: 過去の特定の出来事や経験を思い出し、その時の思考や信念を評価します。
  • 思考リスト化: 課題や状況は、現実のものでも想像上のものでも構いません。
    • 現実の状況: 実際の生活場面や課題における思考を記録します。
    • 想像上の状況: 特定の状況を想像させ、その状況下における思考を記録します。

まとめ:

アンケートは、標準化された方法で過去の思考や信念を効率的に評価できる一方、思考リスト化は、より詳細で状況に依存した思考を捉えることができます。どちらの方法も、それぞれの特性を理解した上で、目的に合わせて適切に選択することが重要です。


不安の認知評価における多角的なアプローチの必要性

不安の認知評価において、心理測定尺度と認知心理学から借用したアプローチの両方を含む調査が重要な理由は、それぞれの方法が異なる側面の認知を捉え、相補的に作用することで、より包括的な理解を得られるためです。

  • 心理測定尺度(例:アンケート)の長所と限界
    • 心理測定尺度は、標準化された質問項目に対して回答を求める形式であるため、量的データを効率的に収集できます。 例えば、不安の程度や特定の不安思考の頻度などを数値化することで、客観的な比較や分析が可能になります。
    • 特に、不安感受性反すう のように、不安障害において重要な役割を果たすとされる認知特性を評価する尺度は、特定の認知傾向を効率的に捉え、介入のターゲットを明確にするのに役立ちます。
    • しかし、心理測定尺度は、あらかじめ用意された選択肢への回答に限定されるため、思考の複雑さや文脈を十分に捉えられない可能性があります。 例えば、「不安」という感情を構成する思考は、身体的症状、社会的状況に対する不安、将来の出来事に対する心配など多岐に渡り、一括りに測定することが困難な場合もあります。
    • また、自己報告バイアスの影響も考慮が必要です。 回答者は、社会的に望ましい回答を選択したり、過去の経験を正確に思い出せなかったりする可能性があります。
  • 認知心理学からのアプローチ(例:思考リスト法、ドットプローブタスク、ストループ課題)の長所と限界
    • これらの方法は、実験的操作や反応時間の計測を通じて、意識にのぼりにくい自動的な認知プロセスを捉えることを可能にします。 例えば、ドットプローブタスクを用いることで、特定の刺激(例:脅威的な顔)に対する注意の偏りを測定できます。
    • また、プライミングを用いた実験デザインにより、特定の認知スキーマの活性化とそれに伴う情報処理への影響を調べることができます。 例えば、否定的な気分を誘発することで、否定的な自己スキーマが活性化し、自己言及的な情報に対するネガティブな解釈バイアスが生じやすくなるかなどを検証できます。
    • しかし、認知心理学からのアプローチは、実験室環境で実施されることが多く、現実の生活場面における認知を反映しているとは限らないという課題があります。
    • また、データの解釈に専門的な知識が必要となる場合があり、心理測定尺度に比べて実施や分析に時間と労力を要する傾向があります。
  • 両方のアプローチを組み合わせることの意義
    • 心理測定尺度と認知心理学からのアプローチを組み合わせることで、意識的・無意識的表出的・潜在的など、多様なレベルの認知を捉え、不安の全体像をより深く理解することができます。
    • 例えば、不安に関するアンケートとドットプローブタスクを併用することで、自己報告による不安の程度と、脅威刺激に対する潜在的な注意バイアスとの関連性を明らかにできます。
    • また、自己報告型の認知評価尺度と、プライミングを用いたストループ課題の結果を統合することで、特定の自己スキーマの活性化と、具体的な思考内容、情報処理への影響を関連づけることができます。
  • 結論 不安の認知評価において、心理測定尺度と認知心理学からのアプローチの両方を含むことは、多角的な視点相補的なデータを提供し、より包括的で深い理解を促進するために重要です。 これは、不安障害のメカニズム解明効果的な介入法の開発予防戦略の構築などに貢献する可能性を秘めています。

GlassとArnkoff(1997)による認知評価手法分類の4つの次元

GlassとArnkoff(1997)は、認知評価の手法を以下の4つの次元に従って分類することを提案しました。 これらの次元は、思考評価の多様性を捉え、それぞれの評価方法の特徴を理解する上で役立ちます。

1. 時間性(Temporality)

  • 思考が評価される時間的枠組みを指します。
    • 遡及的評価(Retrospective Assessment): 過去の出来事や思考を思い出しながら評価します。 例えば、過去の不安体験や抑うつ的な出来事について、その時の思考を振り返って評価します。
    • 同時進行評価(Concurrent Assessment): 特定の課題や状況に直面している最中に、リアルタイムで思考を評価します。 例えば、スピーチの実施中や対人交流の最中に、浮かんでくる思考を記録します。
    • 将来の出来事についての評価(Future Event Assessment): 将来起こりうる出来事や状況を想像し、その際に生じるであろう思考を評価します。 例えば、重要なプレゼンテーションや試験を控えている場合、その成功や失敗を想像し、その時に感じるであろう思考や感情を評価します。

2. 構造(Structure)

  • 評価の際、どの程度、回答者に制限や形式を課すかを指します。
    • 構造化(Structured): あらかじめ用意された質問項目や選択肢に対して回答を求める形式です。 例えば、アンケートなどが該当します。回答の選択肢が限定されるため、標準化された方法で効率的にデータを収集できます。
    • 非構造化(Unstructured): 自由記述やインタビューなど、回答者に自由な形式で思考を表現させる方法です。 例えば、思考リスト法や思考音声化法などが該当します。思考の内容や形式に制限がないため、より詳細で複雑な情報を収集できます。

3. 反応モード(Response Mode)

  • 回答者がどのように思考を表現するかを指します。
    • 書面(Written): 回答者が紙媒体やコンピュータ画面に思考を書き出す形式です。 例えば、アンケートや思考リストなどが該当します。
    • 口頭(Verbal): 回答者がインタビューや思考音声化法などを通じて、口頭で思考を表現する形式です。

4. 刺激の性質(Nature of Stimuli)

  • どのような刺激を用いて思考を誘発するかを指します。
    • 一般的な思考(General Thoughts): 特定の状況を想定せず、一般的な思考パターンや信念を評価します。 例えば、「私は役に立たない人間だと思うことがある」といった、一般的な自己評価を尋ねる質問などが該当します。
    • 想像上の状況(Imagined Situations): 特定の状況を想像させ、その状況下における思考、感情、行動を評価します。 例えば、対人関係の場面や失敗体験などを想像させ、その時に感じるであろう思考や感情を評価します。
    • ビデオで見た状況(Videotaped Situations): 実際の問題状況やロールプレイングをビデオで録画し、それを視聴させた際の思考を評価します。 より現実の状況に近い刺激を用いることで、状況に特化した思考パターンを評価できます。

これらの4つの次元を組み合わせることで、多様な認知評価手法を分類し、それぞれの特性を理解することができます。 例えば、DAS(機能不全態度尺度)は、「遡及的」、「構造化」、「書面」、「一般的な思考」に分類され、ATSS(シミュレートされた状況における明確な思考)は、「同時進行」、「非構造化」、「口頭」、「想像上の状況」に分類されます。

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