CBT-H-7-3 問題解決療法 3 学習補助

問題解決療法に関する以下の質問に、それぞれ2~3文で答えてください。

  1. 問題解決療法(PST)の主な目的は何ですか?
  2. 社会的問題解決モデルにおける「問題」の定義を説明してください。
  3. 社会的問題解決の5つの側面を挙げ、それぞれが建設的な側面なのか、機能不全の側面なのかを明記してください。
  4. ストレスと健康の関係/問題解決モデルにおいて、ストレスの多い人生の出来事にはどのようなものがありますか?
  5. 問題解決コーピングは、ストレスと幸福の関係にどのように影響を与えると考えられていますか?
  6. PSTの有効性を支持する経験的証拠には、どのようなものがありますか?
  7. PSTの14のトレーニングモジュールのうち、3つを選び、その主なトレーニング目的を説明してください。
  8. PSTを実施する際に、セラピストが心がけるべき補助的な治療戦略を3つ挙げてください。
  9. PSTの有効性を評価したアウトカム研究から得られた、主な結果を2つ挙げてください。
  10. PSTは、どのような問題や疾患を抱える人にとって、特に有効な治療法となる可能性がありますか?

クイズ解答

  1. 問題解決療法(PST)の主な目的は、個人に対して建設的な問題解決の態度とスキルをトレーニングすることにより、精神病理を軽減または予防し、心理的および行動的機能を強化することです。
  2. 社会的問題解決モデルにおいて、「問題」とは、適応的な要求と、効果的な対処反応の利用可能性との間の不均衡または矛盾と定義されます。簡単に言うと、問題とは、効果的な対応が即座に明らかでない、あるいは利用できない場合に、目標を達成したり、対立を解決したりするために、効果的な対応を必要とする生活状況や課題を指します。
  3. 社会的問題解決の5つの側面は以下の通りです。
  • 積極的問題志向(建設的): 問題を課題と捉え、解決可能であると信じ、問題解決能力に自信を持ち、粘り強く努力する意欲を持つこと。
  • 合理的的問題解決(建設的): 問題を定義し、代替案を生成し、意思決定を行い、解決策を実行・検証するスキルを合理的かつ体系的に適用すること。
  • 消極的問題志向(機能不全): 問題を脅威とみなし、問題解決能力に自信がなく、感情的に動揺しやすいこと。
  • 衝動性/不注意スタイル(機能不全): 問題解決戦略を衝動的、性急に、不注意に適用しようとすること。
  • 回避スタイル(機能不全): 問題への対処を先延ばしにしたり、他人に依存したりして、問題解決を回避しようとすること。
  1. ストレスと健康の関係/問題解決モデルにおいて、ストレスの多い人生の出来事には、重大なマイナスの出来事(例:離婚、死別、失業)と日常の問題(例:人間関係のトラブル、仕事上の問題)の2つがあります。
  2. 問題解決コーピングは、ストレスの多い人生の出来事と幸福との関係において、媒介者または調整者として機能すると考えられています。効果的な問題解決は、ストレスの悪影響を緩和し、幸福を高めるとされています。
  3. PSTの有効性を支持する経験的証拠は数多くあります。例えば、PSTはうつ病、不安、薬物乱用、統合失調症、慢性疾患の管理など、様々な問題において有効であることが示されています。また、PSTは問題解決能力を高め、ストレスの多い状況への対処を改善することも示されています。
  4. PSTの14のトレーニングモジュールのうち、3つの主なトレーニング目的は以下の通りです。
  • モジュール4(問題志向:自己効力感を育む): クライアントの問題解決に対する自己効力感を高めることを目的としています。例えば、問題解決に成功した場面をイメージさせる視覚化演習などが行われます。
  • モジュール9(問題の定義と定式化): クライアントが問題の本質を理解し明確に定義し、現実的な解決目標を設定できるよう支援します。
  • モジュール12(解決策の実行と検証): 選択した解決策を実行し、その進捗をモニターし、結果を評価し、必要に応じて修正を加えるスキルをクライアントが身につけることを支援します。
  1. PSTを実施する際に、セラピストが心がけるべき補助的な治療戦略は以下の3つです。
  • モデリング: セラピスト自身が、問題解決の各ステップをどのように行うかを実演してみせることで、クライアントの理解を深めます。
  • リハーサル: ロールプレイングなどを通して、クライアントが実際の生活場面で問題解決スキルを試せる機会を設けます。
  • ポジティブな強化: クライアントの良い点や努力を認め、褒めることで、モチベーションを高めます。
  1. PSTの有効性を評価したアウトカム研究から得られた、主な結果は以下の2つです。
  • PSTは、うつ病や不安などの精神的健康状態を改善するのに効果的であることが示されています。
  • PSTは、問題解決能力を高め、ストレスの多い状況への対処を改善するのに効果的であることが示されています。
  1. PSTは、ストレスや対処の困難さが症状を維持する上で重要な役割を果たしていると考えられる、あらゆる問題や疾患を抱える人にとって、特に有効な治療法となる可能性があります。例えば、うつ病、不安障害、薬物乱用、慢性疾患などが挙げられます。

エッセイ問題

以下のテーマについて、それぞれエッセイ形式で論じてください。

  1. 社会的問題解決モデルとストレスと健康の関係/問題解決モデルの主な違いと類似点を説明し、それぞれのモデルがPSTの理論的基盤にどのように貢献しているかを論じてください。
  2. PSTの5つの問題解決スタイルについて、それぞれのスタイルが問題解決プロセスや結果にどのような影響を与えるかを具体例を挙げて説明してください。
  3. PSTのトレーニングモジュールを、具体的なクライアント(例:うつ病患者、犯罪者、慢性疾患患者)に適用するケースを想定し、クライアントの特性やニーズに合わせて、どのモジュールをどのように活用するかを説明してください。
  4. PSTの有効性を示すアウトカム研究の知見を要約し、PSTの強みと限界、今後の研究課題について論じてください。
  5. PSTと他の心理療法(例:認知行動療法、対人療法)との共通点と相違点を比較検討し、それぞれの療法の適用範囲や限界について考察してください。

用語集

問題解決療法(PST) 「建設的な問題解決の態度とスキルのトレーニングに焦点を当てた、臨床介入への積極的なアプローチ」

社会的問題解決モデル 「日常生活における問題解決を、学習プロセス、一般的な対処戦略、自己制御方法として捉えるモデル」

問題適応的な要求と効果的な対処反応の利用可能性との間の不均衡または矛盾解決策問題解決プロセスを特定の問題状況に適用した場合の結果である、状況固有の対処反応または反応パターン

問題指向 問題解決における動機付け機能を果たす、メタ認知プロセス

問題解決スキル 日常生活における問題を理解し、効果的な解決策を見つけようとする行動

ポジティブな問題指向 問題を解決可能な課題と捉え、解決能力に自信を持つ、建設的な認知セット

ネガティブな問題指向 問題を脅威と捉え、解決能力に自信がなく、感情的に動揺しやすい、機能不全な認知セット

合理的な問題解決 問題解決スキルを合理的、計画的、体系的に適用する、建設的な問題解決スタイル

衝動性/不注意スタイル 問題解決戦略を衝動的、性急に、不注意に適用しようとする、機能不全な問題解決スタイル

回避スタイル 問題への対処を先延ばしにしたり、他人に依存したりして、問題解決を回避しようとする、機能不全な問題解決スタイル

ストレスと健康の関係/問題解決モデル 社会的問題解決の概念を、ストレスと幸福の関係における重要な対処戦略として位置付けるモデル

ストレスの多い人生の出来事 個人的、社会的、または生物学的な再調整の要求を個人にもたらす人生経験

感情的ストレス 認知的評価と対処プロセスによって修正、調整、または変換される、ストレスの多い人生の出来事に対する個人の即時の感情的反応

問題解決コーピング 全ての認知的評価と対処活動を、一般的な社会問題解決の枠組みの中に統合するプロセス


問題解決療法(PST)の概要:理論的基盤と実践

**問題解決療法(PST)**は、ストレスの多い問題に対する建設的な対処態度とスキルを育成することに焦点を当てた、積極的な臨床介入アプローチです。 PSTの目的は、精神病理を軽減し、心理的・行動的機能を強化することによって、再発や新たな臨床問題の発生を予防し、生活の質を最大限に高めることです。

理論的基盤

PSTの理論的基盤は、2つの相互に関連する概念モデル、すなわち**(1) 社会問題解決モデル(2) ストレスと幸福の関係/問題解決モデル**から成り立っています。

1. 社会問題解決モデル

「社会的問題解決」とは、日常生活で遭遇する問題に対する効果的な解決策を見つけるための、意識的で合理的、努力的で目的のある認知行動プロセスを指します。 このモデルでは、問題解決能力は**「問題指向」「問題解決スキル」**という2つのプロセスから構成されるとされています。

  • 問題指向: 問題解決に対する個人の一般的な認識や評価を反映するメタ認知プロセスであり、楽観主義、問題解決自己効力感などが含まれます。
  • 問題解決スキル: 日常生活の問題を理解し、効果的な解決策を見つけるための活動であり、問題の定義と定式化、代替ソリューションの生成、意思決定、ソリューションの実施と検証という4つの主要なスキルが含まれます。

これらの要素は、**社会問題解決目録改訂版(SPSI-R)**によって測定され、効果的な社会問題解決能力は、積極的な問題指向性と合理的な問題解決力の高いスコア、そして消極的な問題指向性、衝動性/不注意スタイル、回避スタイルの低いスコアによって示されます。

2. ストレスと幸福の関係/問題解決モデル

このモデルは、リチャード・ラザルスのストレス関係モデルと社会問題解決モデルを統合したもので、ストレスの多い人生の出来事、認知的評価、対処プロセスが、幸福と適応状態に大きな影響を与えると考えます。

  • ストレスの多い人生の出来事: 個人的、社会的、生物学的な再調整を個人に要求する人生経験であり、重大な否定的な出来事日常の問題の2つの主なタイプがあります。
  • 感情的ストレス: ストレスの多い人生の出来事に対する個人の即時の感情的反応であり、認知的評価や対処プロセスによって影響を受けます。
  • 問題解決コーピング: すべての認知的評価と対処活動を一般的な社会問題解決の枠組みに統合するプロセスであり、問題に焦点を当てた対処と感情に焦点を当てた対処の両方が含まれます。

このモデルでは、問題解決はストレスの多いライフイベントと幸福の間の関係を仲介または調整すると考えられており、効果的な問題解決は幸福にプラスの結果をもたらし、非効果的な問題解決はネガティブな幸福感をもたらすとされています。

臨床実践

PSTは、様々な心理的、行動的、健康上の問題を抱える幅広い個人に効果的です。 PSTを実施するための一般的なガイドラインとして、D’ZurillaとNezu(2007)による包括的なマニュアルと、Nezuら(2007)による自助マニュアルがあります。

PSTの実践では、個々のクライアントのニーズに合わせて調整することが重要であり、標準化されたマニュアルに従うのではなく、トレーニングモジュールを柔軟に組み合わせることが推奨されます。 一般的なマニュアルには、社会的問題解決能力やパフォーマンスの様々な側面に焦点を当てた14のトレーニングモジュールが含まれています。

PSTトレーニングモジュール(例)

  • 初期構造化: 前向きな治療関係の構築、PSTの理論的基盤の説明、楽観主義の奨励など。
  • 評価: 問題解決の長所と短所の評価、ストレスの多い領域の特定など。
  • 問題指向: 自己効力感の育成、問題を課題として捉える練習、感情の制御、衝動性/回避性の抑制など。
  • 問題解決スキル: 問題の定義と定式化、代替ソリューションの生成、意思決定、解決策の実施と検証など。
  • ガイド付き実践: 問題解決の応用と一般化。
  • 迅速な問題解決: 短時間で問題解決モデルを適用するためのガイドライン。

PSTの効果的な実施には、教訓的指導、コーチング、モデリング、シェイピング、リハーサル、フィードバック、積極的な強化などの補助的なトレーニング戦略も重要です。

有効性に関する研究

多くの研究により、PSTは様々な患者集団や問題に対して効果的かつ柔軟な介入であることが示されています。 統合失調症、うつ病、全般性不安障害、介護者、肥満、頭痛、癌、糖尿病、犯罪者などの集団を対象とした研究が行われており、PSTは、症状の軽減、問題解決スキルの向上、生活の質の改善などに効果があることが報告されています。

メタ分析の結果

うつ病に焦点を当てたPST研究のメタ分析では、「PSTがうつ病の効果的な治療法であることに疑いの余地はない」と結論付けられています。 また、32件の研究を対象としたメタ分析では、PSTは無治療やプラセボよりも有意に効果的であることが示されています。

まとめ

PSTは、社会問題解決モデルとストレスと幸福の関係/問題解決モデルに基づいた、効果的な問題解決の態度とスキルを育成するための介入です。様々な集団や問題に対して有効性が示されており、多くの研究によって裏付けられています。


問題解決療法(PST)の有効性に関する研究の主な発見は次のとおりです。

  • PSTは、うつ病、不安、薬物乱用、統合失調症など、幅広い問題を抱える個人に効果的であることが示されています
  • PSTは、問題解決能力を向上させることによって、個人を助けることができます。これは、問題を特定し、解決策を考案し、最良の行動方針を決定し、その計画を実行することを意味します。
  • PSTは、個人が問題についてより楽観的かつ希望的に考えるのを助けることができます
  • PSTは、ストレスに対処し、全体的な健康と福祉を改善するための効果的な方法になり得ます

ソースは、PSTが単独療法として、または他の治療法と組み合わせて使用​​できることを示唆しています。また、個人、グループ、家族など、さまざまな形式で提供できます。


問題解決療法(PST)のトレーニングモジュール

問題解決療法(PST)は、14のトレーニングモジュールから構成されており、治療者や研究者は、個々のクライアントや研究プロジェクトのニーズに合わせて、これらのモジュールを柔軟に組み合わせて使用することができます。

表7.1は、汎用PSTマニュアルを構成する14のモジュールのリストと、それぞれのモジュールにおける主なトレーニングの目的と活動を示しています。

表7.1 問題解決トレーニングモジュール

モジュール主要なトレーニングの目的と活動
1. 初期構造化* 前向きな治療関係を築きます。* PSTの全体的な理論的根拠と構造、およびそれがどのようにクライアントに役立つかを提示します。* 楽観主義を奨励します。
2. 評価* 公式(例:SPSI-Rの管理)または非公式(例:面接)で、問題解決の長所と短所を評価します。* クライアントの生活の中でストレスを感じている領域を評価します。
3. 効果的な問題解決を妨げる障害* 問題解決を妨げている認知的、感情的、行動的な障害を特定します。* これらの障害に対処するための戦略を開発します。
4. 問題指向:自己効力感を育む* クライアントが問題を首尾よく解決できるという自信を高めます。* 過去の成功体験を特定し、強調します。* 小さなステップから始めて、徐々に課題のレベルを上げていきます。
5. 問題指向:問題を認識する* クライアントが問題が発生したときに、それを認識する能力を高めます。* 感情、効果のない行動、特定の思考を、問題が存在することを示す手がかりとして利用します。* 問題チェックリストを使用して、問題の経験を「正規化」します。
6. 問題指向:問題を課題として捉える* クライアントがネガティブな思考、機能不全に陥った態度、制限された考え方を特定し、それを変える能力を養います。* 「逆転擁護ロールプレイ」演習に参加します。この演習では、クライアントは自分が抱いている特定の不適応な信念とは対照的な視点を主張します。
7. 問題指向:感情の使用と制御* 問題解決における感情の役割についてのクライアントの理解を促進します。* クライアントに、(a) 問題解決プロセスに情報を与えるために感情を「使用する」こと(例:問題が存在するという合図として、モチベーションを促進するために)、(b) 破壊的な感情を管理すること(認知的リフレーミング手法やリラクゼーション演習などを通じて)を教えます。
8. 問題指向:立ち止まって考えましょう!* 意識の認知的限界(特にストレス下での「マルチタスク」の難しさ)について話し合います。* マルチタスクを促進する方法について話し合います。(a) 「外部化」(例:アイデアのリストを作成する)、(b) 「視覚化」(例:解決計画の実施を密かにリハーサルする)、(c) 「単純化」(例:複雑な問題をより管理しやすい部分問題に分解する)。
9. 問題の定義と定式化* クライアントが問題の性質(例:なぜそれがその人にとって問題なのかなど)をよりよく理解し、現実的な問題解決の目標と目的を設定できるようにします。
10. 代替案の生成* さまざまなブレインストーミング手法(例:「多ければ多いほど良い」など)を使用して、特定の問題に対して広範囲かつ多様な潜在的な解決策のアイデアを生み出すクライアントの創造的能力を促進します。
11. 意思決定* (a) 特定のアクションに対して起こり得る結果をより適切に特定できるようにします。(b) 特定の行動のさまざまな結果の価値と可能性に関する費用対効果分析を実施します。
12. 解決策の実装と検証* (a) 解決計画を効果的に実行し、(b) その結果を監視し、(c) その有効性を評価し、(d) 問題解決のプロセスにおいて自己強化に取り組む個人の能力を育成します。
13. ガイド付き実践* 問題解決の応用における習熟度を最大限に高めます。* 態度とスキルを向上させ、自然環境における現在および将来のさまざまなストレスに対するこれらの態度とスキルの伝達と一般化を促進します。
14. 迅速な問題解決* クライアントがわずか数分でモデル全体を適用できるようにする、一連の問題解決の質問/ガイドラインをクライアントに教えます。

これらのモジュールは、PSTの全体的な治療目標を達成するために設計されています。 PSTが十分なテストとみなされるためには、モジュール1〜13で示される目標のトレーニングが単独の介入に少なくとも含まれていることが推奨されます。


問題解決療法(PST)は、他の心理社会的介入と比較して、いくつかの点で優れています。

  • 広範囲な問題への適用可能性: PSTは、うつ病、不安障害、統合失調症、肥満、頭痛、がん、糖尿病、犯罪行為など、幅広い心理的、行動的、健康上の問題を抱える個人に対して効果的であることが示されています。これは、PSTが、特定の問題や集団に限定されない、一般的で汎用性の高い対処戦略である「社会問題解決」の概念に基づいているためです。
  • ストレスへの対処と予防効果: PSTは、個人に建設的な問題解決の態度とスキルを教えることで、ストレスの多いライフイベントに効果的に対処し、精神病理を軽減および予防することを目的としています。つまり、PSTは、問題が発生した後にそれを解決するだけでなく、問題が発生するのを予防することにも役立ちます。
  • 問題と感情の両方に焦点を当てる: PSTは、ストレスの多い状況を変えることを目的とした「問題に焦点を当てた対処」と、ストレスに対する感情反応を管理することを目的とした「感情に焦点を当てた対処」の両方を重視しています。これは、状況によっては、問題自体を変えることができない場合もあるため、感情的な苦痛を軽減することが重要になるからです。
  • 構造化されたトレーニングモジュール: PSTは、問題解決の自己効力感の育成、破壊的な感情の制御、代替解決策を生み出す能力の向上、意思決定能力の向上など、明確な治療目標を持つ14のトレーニングモジュールで構成されています。これらのモジュールは、臨床医が患者のニーズに合わせてプログラムを調整できるように、柔軟に設計されています。
  • 経験的裏付け: 過去30年間で、PSTの理論と有効性を裏付ける、質の高い研究証拠が数多く蓄積されています。メタ分析の結果、PSTは無治療状態よりも有意に効果的であり、他の心理社会的治療法と同程度の効果があることが示されています。

しかし、PSTが他の心理社会的介入よりも優れているかどうかを判断するには、さらなる研究が必要です。また、PSTの効果は、治療者のスキルや患者のモチベーションなどの要因によって異なる可能性があります。


ストレスと幸福の関係/問題解決モデル

このモデルは、社会問題解決(現実生活における問題解決)の概念を中心に、ストレスと幸福の関係を説明し、PSTの理論的基盤を提供しています。このモデルは、効果的な社会問題解決が、適応機能と幸福を高め、ストレスが幸福や適応に及ぼす悪影響を軽減または予防すると仮定しています。

モデルの主要な変数

このモデルは、以下の3つの主要な変数間の相互関係を論じています:

  • ストレスの多い人生の出来事: 個人、社会的、または生物学的な再調整を個人に要求する人生経験。 このモデルでは、2つの主要なタイプのストレスの多い人生の出来事を区別しています:
    • 重大なマイナスの出来事: 離婚、愛する人の死、失業、大きな病気や怪我など、人生における広範囲にわたるネガティブな変化。
    • 日常の問題: 夫婦間の不和、仕事上の問題、過剰な飲酒など、より限定的で具体的なストレスの多いライフイベント。 重大なマイナスの出来事と日常の問題は、相互に関連している可能性があります。たとえば、離婚は経済的な問題や子育ての困難など、多くの新たな日常の問題を引き起こす可能性があります。
  • 感情的ストレス/幸福: ストレスの多い人生の出来事に対する個人の感情的反応は、認知的評価や対処プロセスによって変化します。 ストレスの多い出来事の性質、認知的評価、対処行動に応じて、感情的ストレス反応は否定的(不安、怒り、憂鬱など)または肯定的(希望、安心感、高揚感、喜びなど)になる可能性があります。
  • 問題解決対処: このモデルでは、問題解決対処は、すべての認知的評価と対処活動を一般的な社会問題解決の枠組みに統合するプロセスとして定義されています。 効果的な問題解決対処には、ストレスの多い人生の出来事を「解決すべき問題」として認識し、問題を定義し、目標を設定し、代替解決策を生成し、最良の解決策を選択し、その解決策を実行し、結果を評価することが含まれます。

モデルの仮説

このモデルは、これらの変数間の以下の関係を仮定しています:

  • ストレスの多い人生の出来事は、問題解決対処を通じて間接的に、また、幸福に直接的に悪影響を及ぼします。
  • 未解決の日常の問題が蓄積されると、重大なマイナスの出来事よりも幸福に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 問題解決対処は、ストレスの多い人生の出来事と幸福の関係を仲介または調整します。
    • 媒介: ストレスの多い人生の出来事が問題解決行動を引き起こし、それが幸福に影響を与えます。効果的な問題解決はプラスの影響を、効果のない問題解決はマイナスの影響を与えます。
    • 調整: 問題解決能力が高い人は、問題解決能力が低い人よりも、ストレスの多い人生の出来事による幸福への悪影響を受けにくくなります。
  • 日常の問題と問題解決対処の間には、相互関係があります。
    • ストレスの多い出来事は、問題解決に悪影響を及ぼします。
    • 効果的な問題解決は、日常の問題を減らします。
  • ストレスの多い出来事と幸福の関係は、相互的なものです。
    • ストレスの多い出来事は、幸福に悪影響を及ぼします。
    • 低い幸福は、日常の問題や重大なマイナスの出来事を増加させる可能性があります。

モデルの図解

図7.1は、ストレスと幸福の関係/問題解決モデルにおける主要な概念間の仮説的な関係を図示しています。

PSTへの応用

このモデルは、PST前の評価において、クライアントの生活における重大なマイナスの出来事、現在の日常の問題、感情的ストレス反応、問題解決の欠陥や歪みを特定するための枠組みを提供します。

PSTは、以下を目的としています:

  • 肯定的な問題指向性を高める。
  • 否定的な問題指向性を減らす。
  • 合理的な問題解決スキルを向上させる。
  • 衝動的で不注意な問題解決を軽減または防止する。
  • 問題解決の回避を最小限に抑える。

研究による裏付け

多くの研究が、社会問題解決能力と幸福または適応との関係、およびストレスの多いライフイベントと幸福との関係における問題解決の媒介的または調整的な役割を支持しています。

結論

ストレスと幸福の関係/問題解決モデルは、社会問題解決がストレスの多いライフイベントと幸福の間に重要な役割を果たすことを示唆しており、効果的な問題解決スキルを教えるPSTの有効性を裏付けるものです。


問題解決療法(PST)は、建設的な問題解決の態度とスキルのトレーニングを通じて、精神病理を軽減および予防します。 PSTの目的は、精神病理を軽減し、心理的および行動的機能を強化して再発や新たな臨床問題の発症を予防し、生活の質を最大化することです。

PSTの理論的根拠は、「ストレスと幸福の関係/問題解決モデル」に基づいています。 このモデルでは、「社会問題解決」(つまり、現実の問題解決)が、一般的で汎用性の高い対処戦略として中心的な役割を果たすと考えられています。 効果的な社会問題解決能力は、適応機能と前向きな幸福を高め、その結果、幸福と適応に対するストレスの悪影響を軽減および防止するとされています。

具体的には、PSTは以下を通して精神病理を軽減および予防します。

  • ストレスの多い人生の出来事に対する効果的な対処能力を高める。
  • 問題に焦点を当てた対処(ストレスの多い状況をより良い方向に変える)と、感情に焦点を当てた対処(変更または制御できない状況に適応する)の両方を促進する。
  • ポジティブな問題指向性を高め、ネガティブな問題指向性を減らす。
  • 合理的な問題解決スキル(問題の定義と定式化、代替解決策の生成、意思決定、解決策の実装と検証)を向上させる。
  • 問題解決を回避する傾向や、衝動的で不注意になる傾向を最小限に抑える。

多くの研究により、PSTが幅広い心理的、行動的、健康上の障害に対して効果的な介入であることが示されています。 PSTは、ストレスや対処障害が状態を維持するために重要な役割を果たすあらゆる疾患に対して、潜在的に有用かつ効果的な介入であると考えられています。

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