人間の精神は日々変化している。
たとえば50歳の人間の精神を考えると、50階建てのビルディングのようなものだ。
今現在、主に活動しているのは50階に住んでいる人であるが、1階から49階までの構造もかなり影響する。
1階の構造にゆがみがあって、傾いていたとすれば、たとえば、3階か4階くらいで補正されているだろう。
50階に住んでいて、少しぐらぐらするなという場合、どこかに不具合があるのだろうが、それは1階から50階まで子細に調べて、さらに地面が揺れていないか、調べる必要がある。
しかしいまさら調べるなんて容易なことではない。
20階でも30階でも揺れたから、たぶんそれよりも下の階だろうと、推定はできるけれども。
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もっと大きくとらえると、性的成熟を基準にして、それよりも前と、それよりも後が考えられ、さらに、性的に不活発になる時期も訪れるが、その場合に、精神病理学的に、性的なあれこれの問題を考えると、高齢者を性的に不活発として、性的成熟期と区別するのも安易なような気もする。
いずれにしても、10歳の前後で大きな変化があるので、たとえて言えば、2階建ての家のようなものだ。
一階部分に不具合があると、二階は傾いてしまう。それを訂正するには、どうしたらよいかというのは大きな問題だ。
精神的発達のどこかで、環境の不足や欠如があったり、逆に過剰な何かがあったりした場合、あとでと修正できるのか、どのくらい修正できるのか、電気製品の部品を買えるようにはいかないので、難しい。
トラウマ問題をどのように解決できるかについては、いまだに決定版がない。
一階に構造の不都合があ場合、二階を安定させるには、やはり一階の手入れを考えないといけない。
一階が傾いたままで、二階に補正を施すと、二階自体が歪んだものになる。歪みをさらなる歪みで訂正するのはよくないだろう。
(しかし、4か月程度で、HAM-Dの点数を有意に上昇させるとなれば、そんなことを言ってもいられない。)
しかしまた、完全に不都合がないという場合も少ないだろう。細かく見ると、どの人の人生にもいろいろある。
どの程度細かく見たらいいのだろう。
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一階部分の不具合をどのように修正できるのだろう。
幼年期と成人期では生きている環境が違う。一階は幼少時の環境に適していて、二階は成人期以降の環境に適している場合もある。環境変化が大きかった場合は、難しい。
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精神療法の面で考えると、50階で感じている揺れの原因が何かと考えて、
どんどん幼年期にさかのぼることが主流であったのが、
最近の流行は、短期で効果の得られる精神療法であって、
その場合は、50階の部屋のあちこちを検分して、または性的成熟を目安に二階建てと考えれば、二階の部屋の補修をして、
取りあえずの効果をあげるようにする。
しかし考えてみて、一階部分が傾いているのに、それを治さずに、二階部分を取り合えず補修しても、
あまり良い結果にはならないのではないかとも思うが、どうだろうか。歪みに対して歪みで対処するとは。
もちろん、とりあえず、適応を一段改善してあげれば、あとは自分の力で進んでいくだろうということも、大いにあるだろう。それはそうだ。確かに効果がある。しかしそればかりではないと思う。
環境に恵まれなかった(欠損)とか、傷を受けた(トラウマ)とか、幼年時代にはいろいろとあったわけだろう。それが一階部分の傾きになって、その上に二階があるのだから、当然、二階の修理だけでは済まないのだろうと思う。