親は心配している。
うちの娘はスマホ中毒でSNS中毒だ。四六時中スマホを眺めている。食事中もだ。外食時もスマホを眺めている。スクロールし続けている。動画は二倍速で見ている。笑うことは少なく、顔をしかめることが多い。常に友人たちの話を負い続けている。多分自慢話が多いらしく、本人は愉快ではないようだが、仲間から離れることもできない。
SNS仲間にはリーダーがいて、その人の話をいつも気にしている。親はそばにいるのにほとんど会話らしい会話をしない。だから親は娘が何を考えているか分からない。親は娘を知るために、最近の若い人の考え方を知るために本を買って読んだりしている。
寝るときの枕元にスマホがある。目立たないように、しかし遅れないように。仲間の一人だけれど、やや冷めた感じで参加している。イケてる集団に属しているが、イタイ人とは思われたくない。
親から見ると、いつも半覚醒のようで、心配になる。スポーツでもいいし何か好きなことに打ちこんでほしいが、そのような気配もない。何が好き化は、SNSの中の流行で決まるらしい。
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目を合わせる代わりに、手にしている携帯電話の小さく光る画面を見つめている若者たち。彼らは話を聴きながら画面をスクロールしていた。ほとんどがTikTokやインスタグラムといったソーシャルメディアアプリを使っており、狂ったようにクリック、スクロール、スワイプを繰り返していた。
ソーシャルメディアアプリの私たちの脳への影響
スマホのカメラの性能が大幅に向上し、通信速度もずいぶん速くなって、スマホは私たちをひきつけるようになった。私たちの手に常にスマホがあるようになったのは、ソーシャルメディアが台頭し始めたここ10年ほどのことで、TikTokが登場したのは2016年だ。今年初めに発表された米シンクタンクのピュー研究所の調査によると、このごろではおおよそ半数の人がインスタグラムを使用している。2014年時点のその割合は25%以下だった。
専門誌『JAMA Psychiatry』に掲載された論文によると、1日3時間ソーシャルメディアを使用すると、メンタルヘルスの問題を抱える可能性があるこという。また、『JAMA Pediatrics』に掲載された最近の研究結果では、ソーシャルメディアは報酬と罰に対する感受性を脳内で生み出すことがあることがわかった。つまり、私たちは昔よりも小さな褒美を切望したり「いいね!」やコメントをチェックしたりする傾向があるということだ。
インスタグラムを利用する若者の脳活動がどのように変化するかが示された。この研究は数年前のものだが、現在でも十分通用する。研究で「リスキー」と呼ばれる写真(例えば興奮させるような服装が写っているなど)を見ると、自制心に関係する脳の特定の領域が機能しなくなるという。悲観的な情報を延々と追う「ドゥームスクローリング」の科学的証拠を発見したかのようだ。
悲しいことに、私たちはそうした警告に注意を払っていなかったと思う。行動を変えておらず、アプリは私たちを損ない続けている。議員らは確かに注意喚起しようとしている。だが、英デジタルマーケティング会社のスマートインサイトによると、私たちのスマホ使用時間は増えている。ソーシャルメディアの利用は1年前より8%増えたという。
私たちはスクロールし続けるため、他のことに注意を払わない。思考は半分だけ機能しているという中途半端な状態だ。スマホに気をとられて周囲の人に意識を向けない(ファビングとして知られる)ことは日常になっている。
筆者が尊敬する2人の米国の作家がともにこのテーマについて書いている。ジョン・エルドリッジとニコラス・カーは、私たちが無益なことにあまりに多くの時間を費やしているとしてソーシャルメディアとウェブを批判している。私たちは次から次へとコンテンツをクリックし、いつも上の空だ。英国の作家C.S.ルイスは昔、地獄で耳にするのは雑音ばかりと書いた。私たちはすでにそのような現実の中に生きていると思う。私たちは雑音に満ちたどん底におり、雑音にまみれ、雑音を受け入れている。そうすることを自ら選んでいる。
とある作家が書いたように、ソーシャルメディアはうまく私たちの注意をひいているため、私たちは注意をそらすことを選んでいるというのが本当のところだ。ソーシャルメディアは一時的で重大な意味を持たず、しかも効果的であるため、私たちを損なっている。これは致命的な組み合わせだ。暮らしにおいて、スマホほど手ばやく完全に、しかも労力を費やすことなく私たちを夢中にさせるものはそうはない。
多くのストレスや不安を抱えているために、それらを軽減するために最も簡単で効果的な方法を選ぶ。一方で、有意義な活動をしていないため、実際にはストレスをさらに抱え、もっと多くのストレス解消が必要になる。これは負のスパイラルであり、ソーシャルメディアアプリは負の方向へと引きずり込んでいる。
私たちがこの負のスパイラルに陥っていることに気づくことが、最終的にスマホを使う時間を減らすための第一歩だと主張したい。