ドイツのクリスマスマーケット襲撃、犯行に使った車に容疑者の遺書…周到に計画か2024/12/24 読売
ドイツ誌シュピーゲルによると、独東部マグデブルクで20日に起きたクリスマスマーケット襲撃事件で、容疑者のサウジアラビア出身の医師の男(50)が犯行に使ったレンタカーに遺書を残していた。
報道によると、遺書には自身の死後、全財産をドイツ赤十字社に寄付すると書かれていた。犯行動機につながる政治的な記述はなかった。男は11月以降、マグデブルクを複数回訪問し、犯行9日前の11日にレンタカーを借りていた。事前に周到に計画し、犯行に及んだとみられる。
男はサウジから亡命した反イスラム主義の活動家で、移民排斥を訴える右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を支持し、イスラム教徒に寛容なドイツの移民政策を批判していた。捜査当局は、男がイスラム教徒に対する独政府の対応に一方的に不満を募らせたとみて、動機の解明を進めている。
一方、マグデブルクでは23日、AfD支持者による大規模デモが行われた。AfDのアリス・ワイデル共同党首も駆けつけ、「亡命を認めた国の国民をさげすみ、殺すような人間は、私たちの国には属さない」と犯行を非難した。
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独マーケットへの車突入、容疑者について事前警告したが「反応なかった」とサウジ当局
2024年12月23日 BBC
ドイツ東部マグデブルクでクリスマスマーケットに車が突っ込んだ事件で、逮捕されたサウジアラビア出身の容疑者について、過激な思想をもっていると、同国が事件前にドイツに警告していたことがわかった。サウジアラビア当局は現在、この容疑者に関する情報を「あらゆる方法で」ドイツの捜査当局と共有できるよう全力を尽くしていると、BBCに説明した。
マグデブルクで20日夜に発生した事件では、5人が死亡、200人以上が負傷した。警察はタレブ・アル・アブドルモーセン容疑者を逮捕した。
サウジアラビア外務省は、過去に、同容疑者の過激な思想についてドイツに警告していたという。
同省はドイツ側にいわゆる「口上書」を4回送った。うち3回はドイツの情報機関に、1回は独外務省に送ったというが、何の反応もなかったと、サウジアラビア側は述べている。
アル・アブドルモーセン容疑者は2016年にドイツで難民認定された。これが、ドイツが警告に反応しなかった理由の一つである可能性がある。
難民認定されたのは、当時のアンゲラ・メルケル首相が中東からの100万人以上の移民を受け入れるために国境を開放した1年後で、アル・アブドルモーセン容疑者がドイツに移住してから10年後のことだった。
容疑者について分かっていること
公の場で許される信仰がイスラム教だけという国からやって来た人物としては、アル・アブドルモーセン容疑者は非常に変わっていた。
イスラム教に背を向け、多くの人から異端視された。
サウジアラビア東部フフーフで1974年に生まれた。32歳で国を離れて欧州への移住を決断するまでの若い頃については、ほとんど分かっていない。
ソーシャルメディア上では積極的に活動してきた。X(旧ツイッター)のアカウントでは、精神科医と、サウジアラビアの権利運動の創始者を自称している。「元イスラム教徒のサウジアラビア人」というタグも付けている。
サウジアラビア人女性が欧州へ逃れるのを支援することを目的としたウェブサイトも立ち上げていた。
サウジアラビアは、アル・アブドルモーセン容疑者が人身売買を行っていたとしている。同国内務省の調査機関には、同容疑者に関する膨大なファイルがあるとされる。
反体制派のサウジアラビア人をめぐっては近年、カナダやアメリカ、ドイツで、サウジアラビア政府の諜報員による敵対的な監視の対象になっていると報じられている。
アル・アブドルモーセン容疑者については、ドイツの連邦政府、州政府の両方の当局で、怠慢という重大な落ち度があったことは間違いないと、BBCのフランク・ガードナー安全保障担当編集委員は指摘する。
アル・アブドルモーセン容疑者の過激主義をめぐる再三の警告にドイツが応じなかった理由が何であれ、同容疑者は受け入れ国にとって危険な存在だったようだ。
これとは別に、クリスマスマーケットに緊急にアクセスできるルートを封鎖、あるいは少なくとも警備していなかったため、容疑者が車で群衆に突っ込むのを許してしまったという事実もある。
独当局はマーケットのレイアウトに問題はなかったとし、容疑者の過去について調べを進めていると述べた。
サウジアラビアの人権問題
一方で、考慮すべき複雑な要因もある。サウジアラビアは西側の友好国かつ同盟国だと考えられているものの、人権をめぐる悪しき記録が存在する。
同国では2018年6月まで、女性による車の運転が禁止されていた。これ以前に禁止措置の解除を公に求めた人たちは、女性でさえも迫害されたり投獄されたりした。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はまだ30代で、サウジアラビアで絶大な人気を誇っている。
2018年には、サウジアラビア政府に批判的な、ジャマル・カショジ記者が殺害された。この事件にサルマン皇太子が関与している疑惑が浮上して以降、西側諸国の指導者たちは皇太子から大きく距離を置くようになった。それでもなお、国内での人気は高い。
皇太子の事実上の支配の下、サウジアラビアの一般市民の生活はより良い方向へと変化している。男女の自由な交際が認められ、映画館が再開され、大規模で華やかなスポーツ・エンターテインメントのイベントが開催されるようになった。デヴィッド・ゲッタ氏やブラック・アイド・ピーズのような欧米アーティストのライブも行われるようになった。
ただ、ここには矛盾した側面もある。
一般市民の生活が華やかになる一方で、政治的あるいは宗教的な自由への欲求をほのめかすものに対する取り締まりが同時に行われている。
こうした内容をソーシャルメディアに投稿しただけで、10年以上の厳しい実刑判決が言い渡される。
国の治め方については、疑問を呈することすら誰も許されない。
こうした背景から、ドイツは、アブドルモーセン容疑者について対応を誤ったとみられる。
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ドイツの車暴走、容疑者は「反イスラム」主義者…移民に対する憎悪に拍車の恐れ
2024/12/22読売
【マグデブルク(ドイツ東部)=工藤彩香】ドイツ東部マグデブルクで20日にクリスマスマーケットを襲撃した容疑者の男は、サウジアラビア出身の医師で、特異な経歴から動機に注目が集まっている。来年2月に予定される独連邦議会選挙に向け、移民排斥を訴える右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が今回の事件を支持拡大に利用し、移民に対する憎悪をあおる可能性がある。
ドイツに2006年亡命
地元メディアによると、男は母国サウジでの迫害を理由に2006年にドイツに亡命した。更生施設で精神科医として働いていたが、最近「就労不適格」とされた。サウジ女性の国外亡命を長年支援していたという。
警察当局は20日夜、容疑者の取り調べを始めた。独紙ウェルトは、男が反イスラム主義の活動家で、寛容な移民政策を進めたドイツの「イスラム化」を懸念していたと報じた。男は今年5月、自身のSNSでイスラム教徒の入国を制限するべきだと主張し、AfDに共鳴していたという。
社会の分断、一層進む恐れ
AfDのアリス・ワイデル共同党首は20日、「衝撃的だ。この狂気はいつ終わるのか」とX(旧ツイッター)に投稿し、事件を非難した。
事件現場があるザクセン・アンハルト州を含む旧東独地域は、AfDの地盤でもある。今年6月に行われた同州の地方選挙で、AfDは州全体で最多の票を得るなど着実に支持を伸ばしている。シリアのアサド政権崩壊を受け、「もはや逃げる理由がない」(ワイデル氏)としてシリア人の早期帰還を求めるなどイスラム系住民への圧力を再び強め始めている。
今回の事件も含め、選挙戦では移民や難民を巡る議論も争点になると予想され、社会の分断が一層進む恐れがある。
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(CNN) 12/22ドイツ東部ザクセンアンハルト州マクデブルクのクリスマスマーケットに車が突入した襲撃事件の死者は5人、負傷者は200人あまりに上ったことが分かった。
市当局の幹部によると、死者は9歳の子ども1人と大人4人。地元の公共放送局は当初ハーゼロフ州首相の話として、死亡した子どもは幼児だと伝えていた。
ハーゼロフ氏は21日、当局者らと現場を訪問。新たな死傷者数を確認し、「ドイツでこんなことが起きるとは」と衝撃をあらわにした。
ショルツ独首相らも同日、現場近くの教会へ出向いて花を供えた。同氏は重体に陥った40人近い負傷者の容体を案じていると述べ、国民に団結を呼び掛けた。
負傷者は市内の病院に収容しきれず、一部の患者は近隣の街へ空路搬送された。
当局の発表によると、逮捕された容疑者はドイツ永住権を持つサウジアラビア出身の男(50)。2006年からドイツに住み、マクデブルクの南約40キロの町で医師をしていた。単独の犯行とみられる。
本人の写真をロイター通信に提供した米団体によると、反イスラムの立場からサウジ人女性らの国外逃亡を支援してきた人物とされる。
容疑者がX(旧ツイッター)に投稿したとみられる削除済みのコメントには、反イスラム発言やサウジ「反体制派」を自称する文言が含まれていた。イスラム教から改宗したと公言し、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持を表明していた。
州検察の責任者は、動機特定には時間が必要だとする一方、容疑者がドイツによるサウジ難民への処遇に不満を持っていた可能性を指摘。殺人5件、同未遂205件の罪で起訴される可能性があると述べた。
事情に詳しい関係者2人がCNNに語ったところによると、サウジ当局は同容疑者をめぐり、過去数回にわたってドイツ当局への警告を発していた。
最初は07年、同容疑者がさまざまな過激思想を表明しているとの警告があった。
サウジは同容疑者を逃亡者と見なし、07年から08年にかけて送還を求めたが、ドイツ側は帰国後の本人の安全への懸念を理由に拒否していた。
サウジからドイツの情報機関と外務省に計4回通知が送られ、すべて無視されていたとの情報もある。
ドイツのフェーザー内相は21日、容疑者について「イスラモフォビア(イスラム嫌悪)」の人物だと述べたが、捜査は初期段階だとして詳細には言及しなかった。