感情、対人関係、幼少期体験がその後の人生に与える影響
感情と人間関係の相互作用、特に幼少期の経験がその後の人生に与える影響について。認知分析療法(CAT)の視点から、自己理解と変化の可能性を強調しています。
feelingsとemotionsの違い
感情feelingsは、喜び、悲しみ、怒り、恐怖など、人間が本来持っているシンプルな身体的反応です。思考が介入しなければ、感情は自然なリズムで変化します。一方、感情emotionsはより複雑で、感情、思考、身体感覚の組み合わせであり、幼少期の環境によって大きく影響を受けます。感情は、過去の経験から得た「何が許され、何が禁止されているか」という内なる対話と結びついています。感情が感情として認識されると、思考や行動に歪みが生じることがあります。
例:
怒りを感じても、殴られるかもしれないから表に出さない方がいい。
怖いと見せたら、見捨てられるかもしれない。
自分のニーズを言ったら、笑われるかもしれない。
感情は行動に繋がり、何が許容されるか、されないかという内なるルールによって制御されがちです。感情に支配されると、冷静さを保ったり、自分を適切に表現したりすることが難しくなります。感情を抑え込むことで、受動攻撃性などの形で他の感情を引き起こすこともあります。
相互役割手順(RIP:Reciprocal role relationship procedures)と幼少期の経験
人間は「他者」との関係の中で成長します。特に幼少期の介護者との関係は、その後の人間関係のパターンを形成する上で非常に重要です。ウィンニコットの「赤ちゃんなどというものは存在しない」という言葉が示すように、赤ちゃんは常に世話をする「他者」と共に存在します。私たちは、触れ合い、音、匂い、雰囲気などを通して、まず身体を通して関係性を学びます。ミラーニューロンの存在は、共感の生物学的基盤を示しています。
初期の介護者との相互作用は、相互役割手順(RIP)と呼ばれるものを生み出します。「役割」とは、自分と他者、他者と自分の相互作用を説明する方法です。RIPは、私たちがどのように見て、反応し、解釈するか、どのように感じ、意味づけるか、そして内なる対話においてどのように行動するかを表します。
例:
安全に抱かれる経験は、安心感、幸福感、愛されているという感情を生み出します。
置き去りにされたり、無視されたりする経験は、見捨てられたという感情や、望まれていない、悪いと感じる自己像に繋がります。
これらの初期経験は、その後の人間関係において繰り返される傾向があります。無力な時に抱きしめられ、空腹時に食べ物を与えられる経験は、世話することと世話されることの相互のダンスを生み出し、満足感と安全感をもたらします。逆に、必要なケアを受けられない経験は、不安や怒りの感情を生み出します。
私たちの多くは、様々な早期ケアを経験しており、介護と依存、コントロールと服従、要求と努力など、様々な相互パターンのレパートリーを持っています。これらのパターンは自動的に内面化され、自動操縦のように機能しますが、意識的に認識し、見直すことで、より健全な役割を創造することができます。
親子の相互役割の再現
初期の経験から学んだことは、人間関係のパターンを定める「ルールブック」のようになります。私たちは、自分が経験した役割だけでなく、相手に求める役割も学びます。例えば、批判された経験を持つ人は、自分が批判されるだけでなく、他人を批判する役割も演じるようになります。このように、核心の傷は、初期に学んだ損傷した側面と有害な側面の両方によって維持されます。
環境と個人の相互作用
環境の影響だけでなく、私たち固有の個々の性質も考慮する必要があります。重要なのは、何が起こったかだけでなく、起こったことを私たちがどう解釈するかです。初期環境において、私たちは世界、他者、そして自分自身との関係に関する3つのパターンを学びます。
他者に対する感じ方と反応
相手が自分に対してどのように反応するかという予測
内面で自分自身とどのように関係するか
例えば、母親が不在がちだった経験を持つ人は、見捨てられたという中核的な痛みを抱え、自分自身や他人に対して拒絶的な態度をとるかもしれません。内なる対話も、拒絶されたというテーマを反映し、自己批判やニーズの無視などに繋がります。
小さな問題や不在の例に対する初期の反応は、非常に極端になることがあり、修正されない限り、その後の人間関係に大きな影響を与えます。
しかし、良い経験や豊かな想像力を持つことで、問題のある相互役割が補われたり、緩和されたりすることもあります。最も困難な環境を生き延び、健全な自己を保っている人もいます。これは、苦しみを意味と力に変える能力が人間には本来備わっていることを示唆しています。
相互役割の表と内なる対話
文章中には、相互役割の表(図2.1)への言及がありますが、この要約では図を再現することができません。しかし、この表は、思考、感情、身体感覚の繋がりを示し、自身の相互役割のレパートリーを理解するのに役立つと考えられます。
重要なのは、自分自身の経験を説明する言葉を見つけることです。例えば、「批判された」という経験が、身体的に殴られたかのように感じられる場合、「罰を受けた」という言葉が中核的な痛みを最もよく表しているかもしれません。この場合、内面化された罰を受けた子供の自分が、他人からの罰的な態度を期待し、無意識のうちにそのような相手を選び、中核的な苦痛を維持する可能性があります。また、内在化した罰を与える大人の自分が、自分自身を厳しく扱い、罰の感情を維持する行動をとる可能性もあります。
もう一つの例は、子供時代の見捨てられた経験です。これは、実際に見捨てられたか、親や養育者から疎外感を感じた体験が、内在化した見捨てられた子どもと、放棄する大人の自分を生み出す可能性があります。
まとめ
感情と人間関係、特に幼少期の経験が自己認識と行動パターンに与える影響を詳細に分析。相互役割手順(RIP)の概念を通して、私たちが他者との関係でどのような役割を学び、演じるのかを理解することが、自己理解と変化への重要なステップであることが強調されています。重要なのは、過去の経験を非難するのではなく、何が起こったのか、どのように経験したのかを理解し、今何を変える必要があるのかを見極めることです。