AIへの過度な依存が、批判的思考を損なう可能性

Microsoft(マイクロソフト)とカーネギーメロン大学が共同で行なった研究によると、AIへの過度な依存が、批判的思考を損なう可能性があることを明らかにしました。

今回のテーマである研究内容は「職場でのAIの利用と、それを活用する際の従業員の自信(またはその欠如)」を評価して判定されました。

研究ではAI依存派とAI非依存派で比較。

AIに自信を持って頼っていた従業員は、批判的思考が求められる場面では、AIにあまり依存していない従業員よりも苦労する傾向が現れました。

一方、AIに過度に依存してない従業員は、自身の知識を活用しながらAIの出力をチェックし、アウトプットの質を向上させることができたとのことです。

研究者は以下のように述べています。

自動化によって日々のルーティンが機械化され、イレギュラーな対応を人間に委ねることで、日々の判断力、認知能力を鍛える機会を奪ってしまっている。その結果、認知能力の衰え、イレギュラーに適切な対応ができなくなっていしまっている。

ざっくり言ってしまえば、普段からAIを信じて使っている人は、普段の思考をAIに委ねてしまっているので、自分で考えなければいけないシチュエーションで苦労する。

逆にAIを信じず、あまり使っていないユーザーは、自身で考えることが普通なので、AIのプロンプト精度を上げるために、自身の経験を動員していた、ということでした。

AIに使われるのではなく、使う。その意識がないとさらに能力の低下を招いてしまいます。それは、批判的思考や創造的思考を発揮する意欲やモチベーションを失い、ChatGPTのようなAIツールを「手っ取り早い解決策」として頼る傾向が強まることです。

要するに簡単にいい感じの答えを出してくれるAIがそばにいると、どんどん頼って依存してしまう。AIのほうが自分で考えるよりいい回答を導いてくれるのだから、それは自分で考えようなんてモチベーションも下がって当然です。

さらに別でBBCの行なった調査でも、同様の結果が出ています。

AIツールは、ニュース記事の要約を生成する際に「意見」と「事実」を区別するのが苦手であることが判明しています。BBCの調査では、ニュースの要約には多数の不正確な情報や歪曲が含まれていました。

だからこそ、自分の目でそれが事実なのか意見なのかを見極める目の必要性が、AI登場以前よりも大きく高まっています。自身でアウトプット(出力)された内容もAIに任せっきりにするのはなく、それが正しいかをしっかりと確認する能力は鍛えておく必要があります。

頭でわかっていてもそれを実行できている人はどれくらいいるのでしょう。

AIを推進する各社のトップはそれぞれにAIのある未来像を語っています。

ビル・ゲイツ氏(Microsoft)「AIがほとんどの仕事で人間を代替するようになると予測している」

ジェンスン・フアン氏(NVIDIA)「AIの普及により、コーディングはすでに不要になりつつある」

イーロン・マスク氏(Tesla)「AIが人間の仕事を奪い、労働は趣味のようなものになる未来が訪れる」

「危ないから完全にやめよう、便利だからずっと使おう」という極端な意見も多く目につきます。

(それもAIによって読まされている可能性がありますが)

自動車も使い方を誤ると人を殺してしまうほどに危険な道具です。しかしその分気をつけて使えばとても便利な道具にもなります。

だからこそ、AIが優れているところはツールとしてAIを使えばいいし、最終的な判断や思考が必要なところ、確実性が求められるポイントはしっかり人の目で確認すればよいのです。

その便利さとリスクのバランスを見失わずに使っていくことが、これからさらにAIが賢く、もっと便利になった時に求められる新たな力かもしれません。あくまでも主体は人間にあります。それを忘れずにAIとうまく付き合っていきましょう。

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