新鋭短歌より
全自動わんこ 初谷むい
最初からお手もお座りもできたけどあなたに教えてもらいたかった
全自動わんこごめんね全自動わんこ2のほうがちょっとかわいい
「閉店後バナナに毛布を掛けること」とのメモがありいいなあバナナ
生活がうまくできない 吐きたてのガムなら汚くないと思った
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五島諭
物干し竿長い長いと振りながら笑う すべてはいっときの恋
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井上法子
永遠でないほうの火
こころにも膜があるならにんげんのいちばん痛いところに皮ふを
期待されてつらかったね蕾 泣かないように春雷を蒔く
研げば研ぐほど自分のほうが傷ついて氷のようにひかる未来は
煮えたぎる鍋を見すえて だいじょうぶ これは永遠でないほうの火
日々は泡 記憶はなつかしい炉にくべる薪 愛はたくさんの火
こうしていてもほら、陽だまりはちゃんとある 戻ろう めぐるときのさかなに
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地球最後の日は金木犀の香りでわたしは高いバターをなめてた 上坂あゆ美
大体はタンパク質と水なのにどうして君が好きなんだろう
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スパゲティー茹でるときだけ分別がなくなる母よ笑ってあげる
サササドリと母が呼んでる鳥がいてたぶんこれだな、サササと走る
【リコン】 おとなポケモン どくタイプ ひっさつわざ は はかいこうせん
水野葵以
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「羽毛布団」みたいな名前の人だった思い出せないそれが愉しい
櫻井朋子
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「幸せに暮らしましたが死にました。けれど死ぬまで幸せでした」
木下侑介
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残酷すぎるこの世だけれど、人間を知りたいと心から願っている。