エマニュエル・トッドの「大分断」

エマニュエル・トッドの「大分断」

トッドは、教育格差が新たな階級社会を生み出し、民主主義を崩壊させると主張します。かつて教育は平等化の手段でしたが、高等教育の普及により、大学卒とそうでない者との間に新たな格差が生まれました。この格差は経済格差に直結し、社会を分断させます。

さらに、トッドはグローバリゼーションが労働者を苦しめ、保護主義の台頭を招くと指摘します。高等教育を受けたエリート層が推進した自由貿易は、国内の労働者を海外の安価な労働力と競争させ、雇用を奪いました。これにより、労働者層はグローバリゼーションに反発し、保護主義を支持するようになります。

民主主義の崩壊

トッドは、社会の分断が民主主義の機能不全を引き起こすと警告します。社会が二分され、相互理解が欠如すると、選挙結果は民意を反映せず、ポピュリズムや極端な政策が台頭します。トランプ政権の誕生やブレグジットは、この現象の象徴です。

今後の世界

トッドは、今後の世界について以下のように予測します。

ヨーロッパ: ドイツが経済的に優位に立ち、事実上のヨーロッパ帝国となるが、社会は硬直化し、警察国家化する可能性がある。
米中対立: アメリカと中国の覇権争いが激化し、新たな冷戦時代が到来する。ロシアは、アメリカと中国の対立を利用して、新たな地政学的優位を築く可能性がある。
日本: 人口減少と高齢化が深刻な問題であり、経済的・政治的な衰退が避けられない。移民受け入れと女性の社会進出が喫緊の課題である。

トッドの提言

トッドは、保護主義が必ずしも悪いものではなく、国内の労働者を保護し、経済の安定を図る手段になると主張します。また、日本に対しては、移民受け入れと女性の社会進出を推進し、無秩序を受け入れる柔軟性を身につけるよう提言しています。

トッドの「大分断」は、教育格差、グローバリゼーション、民主主義の危機など、現代社会の深刻な問題を鋭く指摘しています。特に、教育格差が新たな階級社会を生み出し、民主主義を脅かしているという主張は、非常に示唆的です。しかし、教育格差を解消するための具体的な方策や、保護主義の適切なあり方については、明確な解答を示していない点が課題と言えるでしょう。

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