CBT11 アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT) 要約2

要約:マインドフルネスとアクセプタンスの認知行動療法(CBT)への応用

1. はじめに

近年、マインドフルネス(今この瞬間に意識を集中すること)とアクセプタンス(体験をあるがままに受け入れること)を取り入れた**認知行動療法(CBT:Cognitive-Behavioral Therapy)**が広く用いられ、発展を続けている。科学的研究により、これらの概念がCBTの技法と結びつき、治療の有効性が証明されている。

2. CBTに統合されたマインドフルネス・アクセプタンス療法

CBTにおいて、マインドフルネスとアクセプタンスを取り入れた治療法には以下がある。

  • 弁証法的行動療法(DBT)
  • マインドフルネスに基づく再発防止療法(MBRP)
  • アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)
  • マインドフルネスに基づく認知療法(MBCT)
  • マインドフルネスに基づくストレス軽減法(MBSR)
  • 統合的行動カップル療法(IBCT)

3. マインドフルネスとアクセプタンスの定義

  • マインドフルネス
    • 今この瞬間の体験に完全に注意を向ける(Marlatt & Kristeller, 1999)。
    • 評価や判断をせず、ありのままに観察する(Kabat-Zinn, 2003)。
    • 思考・感情・身体感覚や外部の刺激に注意を向ける(Baer, 2003)。
  • アクセプタンス
    • 現実をそのまま体験しようとする姿勢(Roemer & Orsillo, 2002)。
    • 思考・感情・欲求・身体感覚を抑えつけず、受け入れる(Hayes & Wilson, 2003)。
    • 避けてきた内面的な体験に向き合うことを重視。

4. CBTにおける「変化」と「受容」の役割

従来のCBTは「変化」を重視していたが、すべての問題を解決できるわけではない。そのため、「変えられないものを受け入れる」ことで、苦しみを軽減する選択肢が必要になる。

  • 変化できる場合 → 問題に対処し、解決に向けて行動する。
  • 変化できない場合 → その現実を受け入れ、苦しみを減らす。
  • 変化も受容もできない場合 → 行き詰まり、苦しみが続く。

マインドフルネスとアクセプタンスは「変化できないものを受け入れる」ことで、苦しみを軽減し、柔軟な対応を可能にする。

5. マインドフルネスとアクセプタンスの臨床応用

  • 曝露法との関連: 嫌な感情や状況に慣れるためにマインドフルネスを用いる。
  • 認知再構成: 固定観念を柔軟にし、状況の受け止め方を変える。
  • 自己管理: 感情や行動をコントロールし、衝動的な反応を減らす。
  • リラクゼーション: 心と体をリラックスさせ、ストレスを軽減する。

6. マインドフルネスの起源

  • 東洋の起源: 仏教に由来し、2500年以上の歴史を持つ。カバット・ジンは「マインドフルネスは仏教の瞑想の核心」と述べている。
  • 西洋の起源: 実存主義哲学や心理学にも類似した概念があり、Binswanger(1963)は「世界の中での存在」を3つの側面で説明した(自然の世界、関係の世界、自己の世界)。

7. CBTへの統合と科学的課題

マインドフルネスは宗教的な要素を排除し、多くの人が利用できる形でCBTに取り入れられた。しかし、以下の課題がある。

  • 定義の曖昧さ: 研究者によってマインドフルネスの捉え方が異なる。
  • 科学的研究の必要性: 効果の仕組みを明らかにする必要がある。
  • 宗教的要素の切り離し: 伝統的な知識と対話しながら、科学的根拠を確立する。

8. 主要なマインドフルネス療法の概要

  1. マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)
    • カバット・ジンが開発。
    • 瞑想を通じてストレスや痛みに対処する。
  2. マインドフルネス認知療法(MBCT)
    • うつ病の再発防止に焦点を当てる。
    • 反すう思考(ネガティブな考えの繰り返し)を防ぐ。
  3. 再発予防(Relapse Prevention)
    • アラン・マーラットが開発。
    • 薬物やアルコールの再発防止に活用。
  4. 弁証法的行動療法(DBT)
    • 境界性パーソナリティ障害(BPD)に有効。
    • 「変化と受容」のバランスを重視。
  5. アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)
    • 認知フュージョン(思考を絶対視すること)を防ぐ。
    • 価値に基づいた行動変容を促す。
  6. 統合的行動カップル療法(IBCT)
    • カップル間の対立を受容し、関係改善を目指す。

9. マインドフルネスと受容の科学的検証

研究によると、マインドフルネスとアクセプタンスは以下の点で効果がある。

  • 痛みの軽減
  • ストレスの低下
  • 不安の軽減
  • うつ病の再発予防
  • 摂食障害の改善

ただし、無差別な適用には注意が必要であり、適切な状況で用いることが求められる。

10. まとめ

  • マインドフルネスは「今この瞬間に意識を向け、評価せずに観察すること」。
  • アクセプタンスは「変えられない現実をあるがままに受け入れること」。
  • 変化が難しい場合でも、受容によって苦しみを減らし、前に進む力を養うことができる。
  • CBTには、これらの概念を統合した多様なアプローチがあり、その有効性が研究によって裏付けられている。

このように、マインドフルネスとアクセプタンスは、CBTにおいて重要な役割を果たし、特に「変化が難しい状況」において苦しみを和らげることに貢献している。


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