実存メモ80 私たちは過去を作り出す

実存メモ80
「深い(deep)」という言葉の意味

フロイトの考え方(精神分析)
フロイトは、「深い=過去の早い時期のこと(幼少期)」と考えました。
つまり、最も「深い」葛藤(コンフリクト)とは、その人が人生で最も早い時期に経験した葛藤です。
フロイトの心理学では、人格の成り立ちは発達の過程(年齢を重ねること)に基づいて考えられます。
そのため、「基本的な不安の原因」は幼少期の重要な出来事(たとえば、母親との分離不安や去勢不安)にあると考えられました。

実存療法の考え方
実存療法では、「深い=今、その人が最も根本的に直面している問題」と考えます。
過去は、「今」の一部として意味を持つ場合に重要になります。
つまり、「過去の記憶」がどのように今の人生の向き合い方に影響を与えているかを重視します。
大切なのは、「今、この瞬間の根本的な問題」を理解することです。
そのため、実存療法では、過去を掘り下げるのではなく、「未来が現在になる」ことを目指すのです。

過去について考えることは、「今」を理解するための手がかりになるときにのみ役立ちます。

また、実存療法では「私たちは過去を作り出す」という視点を持ちます
つまり、「現在の生き方」がどのような過去を思い出すかを決めているのです。

そのため、治療の焦点は、「クライアントの自己体験(self-experience)」にあります。
クライアントが、自分の人生に積極的に関わり、「自己実現(self-actualization)」や「自己超越(self-transcendence)」を目指せるようにすることが目的です。

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