ロジャーズ05 自己実現傾向(actualizing tendency) 形成傾向(formative tendency)

ロジャーズ05 
自己実現傾向(actualizing tendency) 形成傾向(formative tendency)
クライエント中心療法は、人間を一つの「人格」として捉え、診断上のカテゴリーに還元するようなアプローチとは区別される。このアプローチの根底には、すべての生物は、自らを維持し、向上させようとする内在的な傾向、すなわち「自己実現傾向(actualizing tendency)」によって動機づけられるというロジャーズの仮定がある。ロジャーズはさらに、この自己実現傾向はより大きな秩序、複雑性、相互関連性へと向かう「形成傾向(formative tendency)」の一部である可能性を示唆している。したがって、人間は常に、より高い複雑性へと進化しながら、自己を維持し、向上させる潜在能力を満たそうとしている。

クライエント中心療法におけるセラピストは、クライエントの成長と自己実現に向かう内的資源を信頼する。たとえクライエントが障害を抱えていたり、環境的制約を受けていたりしても、この信頼は変わらない。セラピストとクライエントの関係は、治療マニュアルによって規定されるものではなく、両者が独自の人格を持つが故に生じる、独自で予測不可能な出会いである。クライエント中心療法のセラピストは、可能な限りクライエントの要望に自発的に応じ、柔軟に対応する傾向があり、それはセラピストがクライエントを基本的に信頼し、尊重していることに由来する。

実践的なレベルにおいて、クライエント中心療法の実践者は、個人および集団が自らの目標を明確にし、それを追求する能力を完全に備えていると信じている。これは、しばしば指導や監督を必要とする存在として見なされる子ども、生徒、労働者といった人々に関して特に重要である。クライエント中心アプローチは、個人が療法を受けるかどうかを選択する権利、役に立ちそうなセラピストを選ぶ権利、セッションの頻度や治療関係の期間を選ぶ権利、話すか沈黙するかを選ぶ権利、何を探求するかを決める権利、さらには療法のプロセスそのものを設計する権利を支持する。

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