ロジャーズ08 他療法との違い
クライエント中心療法は、他の心理療法といくつかの点で異なる。
精神分析(Psychoanalysis): 精神分析では、分析家が過去と現在のつながりを解釈し、患者に教えることを目的とするのに対し, クライエント中心療法では、セラピストがクライエントの現在の内面的な体験の意味を発見することを促す。精神分析において分析家は教師の役割を担い、洞察を解釈し、転移関係を促す。一方、クライエント中心療法では、セラピストはできる限り正直で透明であり、誠実な思いやりと傾聴によって関係を築こうとする。クライエント中心療法では転移関係が生じることもあるが、それが本格化することはなく、ロジャーズは転移関係は評価的な雰囲気の中で発生すると考えた。
行動療法(Behavior Therapy): 行動療法においては、行動の変化は外部からの制御によって生じると考えられるのに対し, クライエント中心療法では、行動の変化は個人の内面から自然に発展すると考える。行動療法の目標は症状の除去であり、症状の内的体験との関連性やセラピストとクライエントの関係に特に関心を持たない。
合理情動行動療法(REBT): クライエント中心アプローチはセラピューティックな関係を非常に重視するのに対し、REBTはそれほど重視しない。REBTのセラピストは多くの指示を与えるが、クライエント中心アプローチはクライエントが方向性を決めることを奨励する。REBTのセラピストはクライエントの思考過程の欠陥を指摘することに注力するが、クライエント中心療法のセラピストはクライエントの考え方や認識の仕方を受け入れ、尊重する。クライエント中心療法では行動はクライエント自身が選択するのが特徴である一方、REBTではセラピストが「宿題」を出すことが含まれる。クライエント中心療法のセラピストは感情レベルでクライエントと関わるが、REBTのセラピストは非合理的な害を指摘するために感情的プロセスを中断する傾向がある。