ロジャーズ10 セラピストの役割
非指示的な態度 (Nondirective Attitude):
セラピストは、クライエントの内在的な成長傾向と自己決定権を信頼し、クライエントが治療の方向性を自ら決定することを奨励します。
心理療法の目的が人間を成長と発達へと解放することであるならば、それに反するような⼿段を⽤いることは許されないと考えます。
共感的理解 (Empathic Understanding):
セラピストは、クライエントの内的な枠組みを理解しようと努め、クライエントの感情や意味を正確に把握し、それをクライエントに伝えます。
単に感情を反射するだけでなく、クライエントの世界を理解しようとするセラピストの姿勢と、理解が間違っていた場合に訂正を受け入れる意欲が重要です。
共感は、クライエントの経験に対する一貫した、絶え間ない理解を表現するものであり、クライエントと確認しながら、理解が完全かつ正確であるかを確かめる継続的なプロセスです。
無条件の肯定的関心 (Unconditional Positive Regard):
セラピストは、クライエントの思考、感情、願望、意図などを判断せずに受け入れ、尊重します。
クライエントがどのような問題を扱っても、どのような状態であっても、その存在そのものに対して温かい称賛と尊重の気持ちを持ち続けます。
この態度は、単なる技法ではなく、セラピストの内面から湧き出る本物の感情であることが重要です。
一致(誠実さ、Congruence):
セラピストは、自身の感情や経験に対して開かれており、クライエントとの関係において誠実で、透明であろうと努めます。
セラピストの開かれた態度が本物であり、クライエントに対して何らかの隠れた意図を持っているわけではないことが重要です。
クライエントがセラピストを「偽りのある存在」と認識した場合、他の二つの条件が伝わりにくくなります。
クライエントの主体性の尊重:
セラピストは、クライエントが療法を受けるかどうか、どのセラピストを選ぶか、セッションの頻度や期間、話す内容などを自ら決定する権利を強く支持します。
クライエントは、自身に関するすべての問題において最も優れた専門家であると考えられています。
質問への対応:
セラピストは、原則として非指示的な態度を保ちながらも、クライエントの直接的な質問には敬意を持って答えることが求められます。
質問の背後にある感情を理解し、それに寄り添おうとします。
促進者としての役割:
カール・ロジャーズは、セラピストをクライエントによって導かれるプロセスのファシリテーターであると考えました。
セラピストは、クライエントの内発的な成長力を解放し、促進する役割を担います。
クライエント中心療法のセラピストは、技法や治療計画、目標設定を用いるのではなく、クライエントとの真摯な人間関係を通じて、クライエント自身の自己探求と成長を支援します。セラピストの意図的な目標設定よりも、クライエントとの関わりの中で偶然生じる治療効果を重視する点が特徴的です。