ロジャーズ12 他の心理療法との主な違い

ロジャーズ12 他の心理療法との主な違い
クライエント中心療法と他の心理療法との主な違いをまとめます。

非指示性(Nondirectiveness):
クライエント中心療法では、セラピストはクライエントが治療の方向性を自ら決定することを奨励し、積極的に指導したり、解釈を与えたりしません。これは、精神分析のように分析家が過去と現在のつながりを解釈し教えること、行動療法のように外部から行動の変化を制御しようとすること、あるいは合理情動行動療法(REBT)のようにセラピストが多くの指示を与えたり、クライエントの思考過程の欠陥を指摘したりすること と対照的です。
クライエント中心療法のセラピストは、評価的な態度を避け、探るような質問、安⼼、批判なども避ける傾向があります。
セラピストの役割:
クライエント中心療法のセラピストは、共感的理解、無条件の肯定的関心、一致(誠実さ)という三つの核⼼条件を提供することに焦点を当てます [5, 85, previous conversation]。これは、精神分析における教師、行動療法における指導者、REBTにおける指導者 といった役割とは異なります。
クライエント中心療法では、技法や治療計画、目標設定を意図的に用いません。治療効果は、セラピストの具体的な意図の結果としてではなく、むしろ偶然の産物として生じるものと考えられています。
治療目標:
クライエント中心療法は、症状の除去よりも、クライエントの内面からの成長と自己実現を主な目標とします。これは、行動療法が症状の除去を主な目標とし、症状の内的体験やセラピストとの関係に特に関心を持たない点 と異なります。
転移関係:
精神分析では中心的な役割を持つ転移関係を、クライエント中心療法ではクライエントの成長や変化に必要不可⽋なものとは考えていません。ロジャーズは、転移関係は評価的な雰囲気の中で発生すると考えました。
クライエントの主体性の尊重:
クライエント中心療法は、クライエントが療法を受けるかどうか、どのセラピストを選ぶか、セッションの頻度や期間、話す内容などを自ら決定する権利を強く支持します。他のアプローチでは、セラピストがクライエントにとって何が良いかを判断する保護的な姿勢をとることがありますが、クライエント中心療法ではクライエント自身が最も優れた専門家であると考えます。
技法と解釈の拒否:
初期の研究においてオットー・ランクとのつながりも見られるように、クライエント中心療法は療法における「技法」や「解釈」に依存するアプローチを明確に拒否します。感情の反映(reflection of feeling)は、ランクとの接触から生まれたと考えられています。
診断の不必要性:
クライエント中心療法では、クライエントの心理的診断を正確に行う必要はないと考えられています。診断ラベルにとらわれず、クライエントの「経験」や「自己表現」に焦点を当て、時間をかけてより正確な自己理解を促します。
治療効果の偶然性:
クライエント中心療法における治療効果は、セラピストの「具体的な意図」の結果として生じるのではなく、むしろ「偶然の産物(serendipitous)」であると考えられています。セラピストの非指示的な姿勢は、クライエントの自己決定権と自律性を保護するのに役立ちます。
主観的文脈の重視:
ジムリングの理論が示すように、クライエント中心療法はクライエントの主観的な体験や感情(「I」としての自己)を理解し、尊重することを重視します。客観的文脈(「Me」としての自己)に焦点を当てるのではなく、セラピストがクライエントの語る物語を丁寧に理解しようとすることで、クライエントは主観的文脈へのアクセスを強化し、自己の変化を促します。

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