ロジャーズ21 他の心理療法と比較

ロジャーズ21 他の心理療法と比較
クライエント中心療法は他の心理療法といくつかの重要な点で異なっています。

セラピストの態度:
クライエント中心療法のセラピストは、非指示的な態度をとり、クライエントの内在的な成長傾向と自己決定権を信頼します。これは、セラピストがクライエントに対して特定の目標を持たず、クライエントが方向性を決めることを奨励する合理情動行動療法(REBT)との大きな違いです。
精神分析では、分析家が過去と現在のつながりを解釈し、患者に教える教師のような役割を担いますが、クライエント中心療法では、セラピストはクライエントの現在の内面的な体験の意味を発見することを促し、できる限り正直で透明であり、誠実な思いやりと傾聴によって関係を築こうとします。
行動療法では、行動の変化は外部からの制御によって生じると考えられますが、クライエント中心療法では、行動の変化は個人の内面から自然に発展すると考えます。
合理情動療法のセラピストはクライエントの思考過程の欠陥を指摘することに注力しますが、クライエント中心療法のセラピストはクライエントの考え方や認識の仕方を受け入れ、尊重します。
治療目標:
クライエント中心療法は、クライエントの人生の機能向上や自己体験の改善を目的としていますが、他の心理療法とは異なり、その目的を達成するために「技法」や「治療計画」「目標設定」を⽤いません。
行動療法の目標は症状の除去であり、症状の内的体験との関連性やセラピストとクライエントの関係には特に関心を持ちません。
精神分析では、分析家が過去と現在のつながりを解釈し、患者に教えることを目指しますが、クライエント中心療法では、クライエント自身の成長と変化のプロセスを大切にします。
セラピストとクライエントの関係性:
クライエント中心アプローチは、合理情動行動療法とは異なり、セラピューティックな関係を非常に重視します。
精神分析では、転移関係(患者の神経症に基づいた関係)を促しますが、クライエント中心療法では、転移関係をクライエントの成長や変化に必要不可欠なものとは考えていません。ロジャーズは、転移関係は評価的な雰囲気の中で発生すると考えており、クライエント中心療法では評価的態度を避ける傾向があります。
クライエント中心のセラピストは、クライエントと人間同士として向き合うことを意味し、特定の目的を達成するために技法を用いるのではなく、もう一人の人間と真に関わることで奉仕します。
技法の使用:
クライエント中心療法では、無条件の肯定的関心と共感的理解は、単なる技法ではなく、「本物でなければならない」とされています。ランク派の理論との共通点として、クライエント中心療法は療法における「技法」や「解釈」に依存するアプローチを明確に拒否しています。
行動療法は、学習理論の原則を用いて、できる限り効率的に症状を取り除くことを目的としており、特定の技法を用います。合理情動療法では、セラピストが「宿題(homework)」を出すことも含まれますが、クライエント中心療法では、行動はクライエント自身が選択するのが特徴です。
診断:
ロジャーズは、診断プロセスは不必要であり、セラピーには本質的な条件が統一されていると考えていました。クライエント中心療法では、クライエントが持つ「診断ラベル」ではなく、その人の「経験」や「自己表現」に焦点を当てることが重要視されます。
現在の臨床現場で広まっている、神経症や精神病などといった診断カテゴリーに基づいて異なる対応をするという考え方に対し、ロジャーズはセラピーに必要な条件は統合された形で存在し、クライエントがそれを異なる形で活用するだけだと考えています。
クライエントの主体性:
クライエント中心療法では、クライエントは自分が療法を受けるかどうかを選択する権利、役に立ちそうなセラピストを選ぶ権利、セッションの頻度や治療関係の期間を選ぶ権利、話すか沈黙するかを選ぶ権利、何を探求するかを決める権利、さらには療法のプロセスそのものを設計する権利を支持します。クライエントに関するすべての問題において、クライエント自身が最も優れた専門家であると考えられています。
このように、クライエント中心療法は、セラピストの指示や解釈を最小限に抑え、クライエント自身の自己実現傾向を信頼し、受容的で共感的な関係性の中でクライエントの主体的な成長を促すという点で、他の多くの心理療法と大きく異なっています。

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