ロジャーズ33 「人格理論」19の基本命題

ロジャーズ33 「人格理論」19の基本命題
ロジャーズの「人格理論」19の基本命題(19 Basic Propositions)1951年、1959年。
1.すべての個人は、絶えず変化する経験の世界に存在し、その世界の中心である。
2.有機体(the organism)は、知覚されたままの場に反応する。この知覚的場が、個人にとっての「現実(reality)」である。
3.有機体は、この現象的場(phenomenal field)に対して、組織化された全体として反応する。
4.有機体には、
① 自己を実現する(actualize)
② 自己を維持する(maintain)
③ 自己を高める(enhance)
という、基本的な傾向と努力がある。
5.行動(behavior)は、本質的に、有機体がその経験するニーズを満たそうとする目標志向の試みであり、知覚された場において実行される。
6.感情(emotion)は、この目標志向の行動を一般的に促進し、その種類は「目標の追求」と「目標の達成」のどちらに関連するかによって決定される。また、感情の強さは、その行動が有機体の維持や向上にとってどれほど重要かという知覚的意義と関連している。
7.行動を理解するための最適な視点は、個人の「内部の枠組み(internal frame of reference)」からである。
8.知覚的場の一部が次第に分化し、「自己(self)」として認識されるようになる。
9.環境との相互作用、特に「他者との評価的相互作用(evaluational interaction)」の結果として、自己の構造が形成される。この自己の構造とは、
「私(I)」または「私自身(me)」の特性や関係性に関する認識の、組織化された、流動的でありながら一貫した概念パターンであり、
これらの概念に付随する価値観を含む。
10.経験に付与される価値や、自己構造の一部となる価値は、次の二つの形態で存在する。
① 有機体が直接経験する価値(values experienced directly by the organism)。
② 他者から取り入れた価値(introjected values)。これらの価値は、直接経験したものではないが、あたかも直接経験したかのように歪められて知覚されることがある。
11.個人の人生において経験が生じると、それらは以下のいずれかの方法で処理される。
(a) 象徴化され、知覚され、「自己」との関係の中に組織化される。
(b) 「自己構造」との関係が知覚されないために無視される。
(c) 「自己構造」と矛盾するために、象徴化が拒否されるか、歪められた象徴化が与えられる。
12.有機体が採用する行動様式のほとんどは、「自己概念」と一致するものである。
13.行動は場合によっては、象徴化されていない有機体的な経験やニーズによって引き起こされることがある。
このような行動は、「自己構造」と矛盾する可能性があるが、その場合、その行動は個人によって「自分のもの」とは認識されない。
14.「心理的不適応(psychological maladjustment)」は、有機体が重要な感覚的・内臓的経験を意識から排除し、それらが象徴化されず、「自己構造」のゲシュタルトに組み込まれないときに生じる。
この状況が存在すると、心理的緊張が生じる可能性がある。
15.「心理的適応(psychological adjustment)」は、「自己概念」が、有機体のすべての感覚的・内臓的経験を象徴レベルで統合し、「自己概念」と一貫した関係を築くことができるときに存在する。
16.「自己の組織化」や「自己構造」と矛盾するいかなる経験も「脅威(threat)」として知覚される可能性がある。
17.また、このような知覚が増えるほど、「自己構造」は自らを維持するためにより硬直化する。
特定の条件下、特に「自己構造」に対する脅威が完全に存在しない場合、自己構造と矛盾する経験も知覚され、検討されることがある。
この場合、「自己構造」は修正され、そうした経験を統合し包含することが可能になる。
18.個人が自身のすべての感覚的・内臓的経験を知覚し、それらを一貫した統合的なシステムの中に受け入れると、その人は必然的に他者をより理解し、他者を独立した個人としてより受け入れるようになる。
19.個人が「自己構造」に、より多くの有機体的経験を知覚し受け入れるにつれて、その人は、現在の価値体系(多くの場合、歪められた象徴化を伴う「取り入れられた価値体系(introjected values)」に基づいている)を、「持続的な有機体的価値評価プロセス(a continuing organismic valuing process)」へと置き換えていくことになる。 (pp. 481-533)

ロジャーズは、この理論について次のように述べている。

この理論は基本的に「現象学的(phenomenological)」な性質を持ち、「自己(self)」という概念を説明のための構成要素として大きく依存している。
この理論が描く人格発達の最終地点(end-point)は、「経験の現象的場(phenomenal field of experience)」と「自己の概念構造(conceptual structure of the self)」の間に基本的な一致(basic congruence)が生じる状態である。
この状態が達成されれば、

内的な緊張や不安(internal strain and anxiety)からの解放がもたらされる。
潜在的な緊張からも自由になる。
現実に即した適応(realistically oriented adaptation)の最大限の発展が可能となる。
個人が確立する価値体系は、他の同様に適応した人間の価値体系と大きく一致することになる。 (1951, p. 532)

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