病い(illness)と疾患 (disease)

実際の患者や家族が経験する「病い(illness)」と、医療専門職がそれを専門的モデルに従って再構成する「疾患 (disease)」とを区別する。

「病い」と「疾患」の間に、従来の医学・医療が長らく脱け出せなかった、方法論的・認識論的な根本的問題点が存在している。

同じ病気や苦痛であるのに、どうして当事者が内側から経験する「病い」と、医療者・観察者が外側から学術用語を用いて再構成する「疾患」とが
決定的に異なるのか。

「疾患」は、もっぱら個別性から抽象的真理に向かい、「科学的推論(scientific reasoning)」と「範例的思考法(paradigmatic mode of thinking)」を働かせて成立する。
「病い」は、「物語的推論(narrative reasoning)」や「物語的思考法(narrative mode of thinking)」をもとにして、特定事例の個別的経験に向かう。

後者の「病い」はこれまで、非科学的で、客観性に欠け、医学的範疇を曖昧にするものとして極力臨床教育から排除されてきた。しかし、こうした視
点の重要性が強調されるようになった。

病いや障害の経験を理解するためには「ストーリーテリング」が重要な臨床方法になる。今日の「専門分化した臨床分野の専門職」と、「患者・家族との視点」の対立という、くり返し問題化される部分を超えようとする試みである。

病い(illness)の部分は、ストーリーテリング、ナラティヴ、気付き、ゲシュタルト的視点変換などによって変容可能である。

タイトルとURLをコピーしました