病的な強迫観念や恐怖が他者に語りうるものとなった時、その問題の大部分は解決されているという臨床的事実に注目したのはジャネ(Janet, P.)である。
ジャネは、宗教的強迫観に苦しんでいる事例をもとに、臨床場面で言語と言葉のもつ重要な意味について論じている。
「……このように決心して自己の閲歴 (histoire)を物語ると、その心理状態は変化し、もはや以前の自分ではなくなる」 [Janet, 1929 邦訳 p.149]と述べ、治療法が、その語りの前と後ではまったく異なってくるとを指摘している。
「告白前(avant l’aveu)」の第一期と「告白後(apres l’aveu)」の第二期という区別が重要であると言うのである。
経験や出来事が他者に語りうるものとなる時、つまりそれらが物語的に構成された時、すでにその直接の経験からの乖離が起こり、現実が加工され、間接的な距離が生じている。
この行動と言語への注目こそ、今日ジャネの名前とともに再び注目されている「外傷的記憶(les souvenirs traumatiques)」や、そこから導き出され、今日その対極に位置づけられた「物語的記憶」という概念に直結する、ジャネ後期のヒステリー論や解離理論のエッセンスの部分である。
物語的に構成された時 距離が生じている ジャネ
