スキーマモデルの全体像

  1. 図解①:スキーマモデルの全体像
  2. 🌱 領域①:基本的欲求の剥奪(Disconnection and Rejection)
    1. 1. 見捨て・不安(Abandonment/Instability)
    2. 2. 不信・虐待(Mistrust/Abuse)
    3. 3. 情緒的剥奪(Emotional Deprivation)
    4. 4. 欠陥・恥(Defectiveness/Shame)
    5. 5. 社会的疎外・孤立(Social Isolation/Alienation)
  3. 🔐 領域②:自律性と業績の障害(Impaired Autonomy and Performance)
    1. 6. 依存・無能(Dependence/Incompetence)
    2. 7. 脆弱性への過度な恐れ(Vulnerability to Harm or Illness)
    3. 8. 自己が未発達(Enmeshment/Undeveloped Self)
    4. 9. 失敗(Failure)
  4. 🧠 領域③:他者志向性の過剰(Other-Directedness)
    1. 10. 服従(Subjugation)
    2. 11. 自己犠牲(Self-Sacrifice)
    3. 12. 承認追求(Approval-Seeking/Recognition-Seeking)
  5. ⚖️ 領域④:過剰な抑制と基準の高さ(Overvigilance and Inhibition)
    1. 13. 否定的感情の抑圧(Emotional Inhibition)
    2. 14. 厳格な基準(Unrelenting Standards/Hypercriticalness)
    3. 15. 罰(Punitiveness)
  6. 🪫 領域⑤:他者への過度な否定と権利意識(Impaired Limits)
    1. 16. 権利意識・自己中心性(Entitlement/Grandiosity)
    2. 17. 自律の欠如・無秩序(Insufficient Self-Control/Self-Discipline)
    3. 18. 承認欲求と外的イメージへの依存(過剰な外的承認への欲求)
  7. 🧩 1. 見捨て・不安スキーマ(Abandonment)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  8. 🧩 2. 情緒的剥奪スキーマ(Emotional Deprivation)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  9. 🧩 3. 欠陥・恥スキーマ(Defectiveness/Shame)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  10. 🧩 4. 依存・無能スキーマ(Dependence/Incompetence)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  11. 🧩 5. 服従スキーマ(Subjugation)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  12. 🧩 6. 厳格な基準スキーマ(Unrelenting Standards)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  13. 🧩 7. 自己犠牲スキーマ(Self-Sacrifice)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  14. 🧩 8. 回避・切断モードとの連動:スキーマからの逃げ
  15. 💡 実際のセラピーでは…
  16. 🧩 9. 失敗スキーマ(Failure)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  17. 🧩 10. 承認追求スキーマ(Approval-Seeking)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  18. 🧩 11. 否定的感情の抑圧スキーマ(Emotional Inhibition)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  19. 🧩 12. 厳格な基準スキーマ(Unrelenting Standards)
    1. 👤 補足事例:
  20. 🧩 13. 罰スキーマ(Punitiveness)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  21. 🧩 14. 権利意識スキーマ(Entitlement/Grandiosity)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  22. 🧩 15. 自律の欠如スキーマ(Insufficient Self-Control)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  23. 🧩 16. 社会的疎外スキーマ(Social Isolation)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  24. 🧩 17. 自己が未発達スキーマ(Enmeshment / Undeveloped Self)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  25. 🧩 18. 脆弱性への過度な恐れスキーマ(Vulnerability to Harm or Illness)
    1. 🌱 幼少期の背景:
    2. 👤 事例:
    3. 🧠 スキーマ的信念:
  26. 🧠 1. スキーマの「構造」— 何でできているか?
  27. 🧬 2. スキーマが「活性化されるとき」
    1. 🔁 例:「見捨てスキーマ」が活性化されるとき
  28. 🛠️ 3. スキーマに対する「3つの対処モード」
  29. 🧘 4. 治療・克服のアプローチ(スキーマ療法の実践)
    1. 🔎 ステップ① スキーマの認識
    2. 💬 ステップ② 健康な大人モードの育成
    3. 💡 ステップ③ 行動の変容
  30. 📌 具体的なワーク例(セルフでも可能)
  31. 📊 スキーマの関係性を可視化した相関マップ(例)
    1. ✅ スキーマ診断チェックリスト(簡易版)
    2. ◆ 1. 見捨てられ(Abandonment)
    3. ◆ 2. 不信・虐待(Mistrust/Abuse)
    4. ◆ 3. 情緒的剥奪(Emotional Deprivation)
    5. ◆ 4. 欠陥/恥(Defectiveness/Shame)
    6. ◆ 5. 社会的孤立(Social Isolation/Alienation)
    7. ◆ 6. 依存/無能(Dependence/Incompetence)
    8. ◆ 7. 脆弱性(Vulnerability to Harm or Illness)
    9. ◆ 8. 絡みつき/未分離(Enmeshment/Undeveloped Self)
    10. ◆ 9. 失敗(Failure)
    11. ◆10. 権利/特権意識(Entitlement/Grandiosity)
    12. ◆11. 自己犠牲(Self-Sacrifice)
    13. ◆12. 承認・認可の追求(Approval-Seeking/Recognition-Seeking)
    14. ◆13. 否定的思考(Negativity/Pessimism)
    15. ◆14. 感情抑制(Emotional Inhibition)
    16. ◆15. 過剰な自己コントロール/抑制(Overcontrol/Self-Discipline)
    17. ◆16. 基準の厳しさ/過剰な批判(Unrelenting Standards)
    18. ◆17. 罰(Punitiveness)
    19. ◆18. 欲求抑制/情緒抑制(Emotional Inhibition)
    20. 🔍 使い方(簡単なセルフチェック)
  32. 🧠 スキーマ療法・自己ワークブック テンプレート
    1. ✍️ Step 1:スキーマの特定
    2. 🧩 Step 2:スキーマの起源に気づく
    3. 🔁 Step 3:現在の影響を見つめる
    4. 🗣️ Step 4:スキーマに挑戦する
    5. 🌱 Step 5:新しい信念・行動を選ぶ
    6. 🧘 Step 6:自己ケア & ふりかえり
  33. 🧠 「あなたのスキーマ構造の整理」テンプレート
    1. ① スキーマの一覧(例)
    2. ② スキーマの背後にある「起源スキーマ(ルーツ)」
    3. ③ スキーマの「つながり図」:例
    4. ④ 整理の目的
  34. 📌コーピングスタイルとは、
  35. 1. 問題焦点型コーピング(Problem-Focused Coping)
    1. 主な特徴:
    2. 例:
  36. 2. 感情焦点型コーピング(Emotion-Focused Coping)
    1. 主な特徴:
    2. 例:
  37. 3. 回避型コーピング(Avoidant Coping)
    1. 主な特徴:
    2. 例:
  38. 4. 積極的回避型コーピング(Active Avoidance)
    1. 主な特徴:
    2. 例:
  39. 5. 社会的支援型コーピング(Social Support Coping)
    1. 主な特徴:
    2. 例:
  40. まとめ
    1. モードとは?
  41. モードの種類
    1. 1. 幼児モード(Child Modes)
    2. 2. 大人モード(Parent Modes)
    3. 3. 適応的モード(Healthy Adult Mode)
  42. モードとスキーマの関係
  43. モードの調整とスキーマ療法
    1. モード調整のプロセス
    2. モードとスキーマ療法の活用
  44. 🔍 スキーマ簡易チェックリスト
    1. 基本的ニーズの欠如
    2. 自立性・能力の障害
    3. 他者志向性
    4. 過剰な警戒と抑制
  45. ✨チェックの見方(簡易)
    1. 🔹対処モードとは?
  46. ✳️ 1. 降伏モード(スキーマに従ってしまう)
    1. 🔍 どんな反応?
    2. 🧠 例:
    3. 🧩 背景:
  47. ✳️ 2. 回避モード(スキーマから逃げようとする)
    1. 🔍 どんな反応?
    2. 🧠 例:
    3. 🧩 背景:
  48. ✳️ 3. 過剰補償モード(スキーマに逆らって極端に行動する)
    1. 🔍 どんな反応?
    2. 🧠 例:
    3. 🧩 背景:
  49. 🌱なぜこれを知ることが大事?
  50. 🧭 スキーマに対する対処モードチェックリスト(簡易版)
    1. 🔹 1. 降伏モード(スキーマに従ってしまう)
    2. 🔹 2. 回避モード(スキーマから逃げようとする)
    3. 🔹 3. 過剰補償モード(スキーマの逆を演じる)
  51. 📝結果の見方(目安)

図解①:スキーマモデルの全体像

この図は、スキーマがどのように形成され、現在の問題行動に影響しているかを示す 因果モデル です。

【幼少期の体験】
   ↓
🧸 基本的欲求が満たされない
(例:愛情、安全、自由、自尊心など)

   ↓
💥 早期不適応スキーマの形成
(例:見捨てられ不安、無価値感、失敗スキーマ)

   ↓
⚙️ モード・対処スタイルの発動
(例:回避、過剰順応、攻撃など)

   ↓
😞 現在の問題・症状として表出
(例:うつ、不安、対人関係の混乱、自傷行為)

図解②:スキーマモードの相関図(代表的モード)

スキーマモードは、瞬間的に切り替わる「自分の状態(心のモード)」です。以下はよく使われる6つの主要モードとその関係性です:

     🧒 子どもモード(感情の核)
     ├─ 傷ついた子ども(悲しみ、孤独)
     ├─ 怒れる子ども(怒り、欲求不満)
     └─ 衝動的な子ども(衝動・自制困難)

   ⬇(満たされない)

👩‍👧‍👦 機能不全な親モード(内面化された否定的メッセージ)
     ├─ 批判的な親(自己否定)
     └─ 要求の多い親(完璧主義)

   ⬇(対処行動)

🧍‍♂️ 機能不全な対処モード(感情回避)
     ├─ 回避モード(無感情、切断)
     ├─ 過剰順応モード(NOが言えない)
     └─ 攻撃モード(防衛的反応)

   ⬆(治療のゴール)

🌱 健康な成人モード(統合・ケア・現実的対応)
     └─ 子どもを保護・慰め、親モードを制限

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

もちろんです!
ここでは、ヤングが提唱した「早期不適応スキーマ(Early Maladaptive Schemas)」の18分類について、それぞれの内容を詳しく解説します。これらのスキーマは、幼少期の基本的欲求(愛情、安全、自由、自尊心など)が満たされなかった体験から形成される「深層の思い込み」や「感情のパターン」です。


✅ 早期不適応スキーマ:18分類(5領域)


🌱 領域①:基本的欲求の剥奪(Disconnection and Rejection)

1. 見捨て・不安(Abandonment/Instability)

「いつか大切な人は自分を見捨てる」と信じている。
家族の離婚、不安定な養育、病気や死別などが原因。人間関係で過剰に執着したり、逆に距離を取りすぎたりする。


2. 不信・虐待(Mistrust/Abuse)

「他人は傷つけたり裏切ったりする存在だ」と思っている。
過去にいじめ、虐待、強い批判などがある場合に形成される。他人を信じられず、警戒心が強い。


3. 情緒的剥奪(Emotional Deprivation)

「自分は本当に必要な愛情を得られない」と感じている。
親からの共感、安心、愛情を得られなかった人が形成しやすい。空虚感や孤独感を抱えやすい。


4. 欠陥・恥(Defectiveness/Shame)

「自分は欠陥のある、愛されない存在だ」と感じる。
厳しい批判や羞恥体験から生じる。自己否定的で、人前で本当の自分を見せられない。


5. 社会的疎外・孤立(Social Isolation/Alienation)

「自分は社会に馴染めない、他人と違う存在だ」と感じる。
仲間外れ、文化の違い、障害などの経験から。他人と距離を置きやすく、孤独を感じやすい。


🔐 領域②:自律性と業績の障害(Impaired Autonomy and Performance)

6. 依存・無能(Dependence/Incompetence)

「自分には自立して何かをする力がない」と思い込む。
過保護や制限された環境で育つと形成される。大人になっても他人への依存が強くなりがち。


7. 脆弱性への過度な恐れ(Vulnerability to Harm or Illness)

「自分はすぐに病気や災害に遭う」と不安を抱えている。
過去の事故、病気、災害などの体験がきっかけに。日常の安全確認に過剰になることがある。


8. 自己が未発達(Enmeshment/Undeveloped Self)

「自分という存在がよく分からない」「他人に過度に融合している」状態。
親との心理的な境界が曖昧な家庭で育つと形成される。他者の感情に振り回されやすい。


9. 失敗(Failure)

「自分はいつか失敗する」「他人より劣っている」と感じている。
学業や運動、社会的成功などで否定的な体験を積み重ねることで形成される。


🧠 領域③:他者志向性の過剰(Other-Directedness)

10. 服従(Subjugation)

「他人の意見に従わないと罰せられる」と感じ、自己を抑圧する。
親や権威に抑圧されて育つと形成される。怒りを表現できず、後で爆発することも。


11. 自己犠牲(Self-Sacrifice)

「他人を優先しないと愛されない」と思い、自分を後回しにする。
共感性が高く、自己肯定感が低い人に多い。慢性的な疲労や抑うつの原因にもなる。


12. 承認追求(Approval-Seeking/Recognition-Seeking)

「他人の評価が自分の価値を決める」と感じる。
賞賛や承認を得ることに過剰に執着し、自分の本心を見失いやすい。


⚖️ 領域④:過剰な抑制と基準の高さ(Overvigilance and Inhibition)

13. 否定的感情の抑圧(Emotional Inhibition)

「感情を表すと迷惑になる、受け入れられない」と信じている。
感情表現が抑圧された家庭で育つと形成される。表面的には冷静だが、内側は孤独や抑圧感で苦しむ。


14. 厳格な基準(Unrelenting Standards/Hypercriticalness)

「完璧でなければ価値がない」と感じてしまう。
親からの期待が過剰だった人に多い。自己評価が厳しく、燃え尽きやすい。


15. 罰(Punitiveness)

「失敗したら罰せられるべき」と思ってしまう。
ミスを許さない環境で育つと形成される。他人にも自分にも厳しい傾向がある。


🪫 領域⑤:他者への過度な否定と権利意識(Impaired Limits)

16. 権利意識・自己中心性(Entitlement/Grandiosity)

「自分は特別で制限を受けるべきではない」と信じている。
甘やかされた経験、または自尊心を補う防衛として形成される。他者の境界を無視する傾向がある。


17. 自律の欠如・無秩序(Insufficient Self-Control/Self-Discipline)

「欲求や感情を抑えることが苦手」
欲求が無制限に許された環境、あるいは感情のコントロールを教わらなかった場合に形成される。依存症などにも関連。


18. 承認欲求と外的イメージへの依存(過剰な外的承認への欲求)

※これは「承認追求」に含まれる場合もあり、ヤングの後期モデルで細分化されることがあります。


🧩 スキーマは複数が重なる

1人の中に 複数のスキーマ が同時に存在することが普通です。
例)「情緒的剥奪」+「自己犠牲」+「厳格な基準」など。


🧭 スキーマへの対処

スキーマ療法では、これらのスキーマを:

  • 特定する(自覚)
  • 感情面で癒す(イメージ再体験など)
  • 認知的に修正する(反証や再構成)
  • 健康な行動に置き換える(行動実験など)

という形でアプローチしていきます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

早期不適応スキーマの18分類のうち、代表的なスキーマをピックアップして、具体的な事例とともに解説していきます。それぞれのスキーマが、どのような幼少期の体験から形成され、どんな思考・感情・行動に結びつくのかがわかるよう構成しています。


🧩 1. 見捨て・不安スキーマ(Abandonment)

🌱 幼少期の背景:

両親の離婚、母親の病気や入退院、転校など「大切な人が急にいなくなる」体験。

👤 事例:

田中さん(30代女性)は、恋人と親密になると「いつか私のこと飽きる」「突然いなくなるかも」と不安でいっぱいになり、執着的・疑い深い行動を取ってしまう。

🧠 スキーマ的信念:

「人は必ず私を見捨てる。だから、自分から先に距離を取るか、つなぎとめなければならない」


🧩 2. 情緒的剥奪スキーマ(Emotional Deprivation)

🌱 幼少期の背景:

親が無関心、感情を言葉にしてくれない、忙しくて構ってもらえなかった。

👤 事例:

佐藤さん(40代男性)は、妻や同僚から「何考えてるかわからない」と言われることが多い。自分の感情もよくわからず、常に「何かが足りない」と感じる。

🧠 スキーマ的信念:

「自分は決して心から理解されたり、共感されたりはしない存在だ」


🧩 3. 欠陥・恥スキーマ(Defectiveness/Shame)

🌱 幼少期の背景:

親からの批判、いじめ、「男らしくしろ」「女の子らしく」と人格を否定された経験。

👤 事例:

山口さん(20代女性)は、人前で話すとき「こんな私が話してもいいのかな」と強い不安に襲われ、必要以上に謝ったり、言葉を濁してしまう。

🧠 スキーマ的信念:

「私はダメな人間。ばれたら嫌われるに決まっている」


🧩 4. 依存・無能スキーマ(Dependence/Incompetence)

🌱 幼少期の背景:

何でも親が決めてしまう、危ないからと挑戦させてもらえなかった。

👤 事例:

井上さん(30代男性)は、仕事で新しいことに挑戦するたびに「自分には無理だ」と感じ、すぐに上司や同僚に頼ってしまう。

🧠 スキーマ的信念:

「自分一人では何もできない。他人がいないと不安でたまらない」


🧩 5. 服従スキーマ(Subjugation)

🌱 幼少期の背景:

怒鳴る親、権威的な家庭環境で「自分の意見=わがまま」とされてきた。

👤 事例:

中村さん(40代女性)は、夫に強く言われると「自分が悪いのかも」と思い、NOと言えない。内心は怒りでいっぱいになり、抑うつ気味になる。

🧠 スキーマ的信念:

「自分の気持ちを主張すると人に嫌われる。だから従っていた方が安全だ」


🧩 6. 厳格な基準スキーマ(Unrelenting Standards)

🌱 幼少期の背景:

「100点を取って当たり前」「頑張らないと価値がない」と言われ続けてきた。

👤 事例:

藤本さん(30代男性)は仕事でもプライベートでも完璧を求め、つねに疲れている。「少しでも失敗したら自分には価値がない」と思ってしまう。

🧠 スキーマ的信念:

「自分は常に最高の成果を出さなければならない。それができなければ無価値だ」


🧩 7. 自己犠牲スキーマ(Self-Sacrifice)

🌱 幼少期の背景:

親が弱っていて子どもなのに“お世話役”をしていた/「人のために尽くすのが善」と教え込まれた。

👤 事例:

木村さん(50代女性)は、家族や職場のために自分の時間や体力を削ってまで尽くすが、心の中では「私のことは誰も見てくれない」と寂しさを抱えている。

🧠 スキーマ的信念:

「自分の欲求は後回しにすべき。他人を優先することでしか価値は得られない」


🧩 8. 回避・切断モードとの連動:スキーマからの逃げ

上記のスキーマを持つ人は、それが刺激された時に:

  • 感情を切断してしまう(無感情)
  • 他人を避けて孤立する
  • 飲酒やネット、過食に逃げる

といった「回避モード」に入ることが多いです。


💡 実際のセラピーでは…

  • 「過去のどんな場面でスキーマが形成されたか」
  • 「今、どんな場面でスキーマが活性化されているか」
  • 「どんなモード(対処)が起きているか」

を明確にしながら、**スキーマの修正+感情の再処理(イメージワーク)**を通じて、健康な成人モードを育てていきます。



早期不適応スキーマの9番~18番までを、具体的な事例とともに解説していきます。


🧩 9. 失敗スキーマ(Failure)

🌱 幼少期の背景:

勉強や運動でうまくいかなかった経験が多く、周囲と比べて「自分は劣っている」と感じ続けてきた。

👤 事例:

松井さん(30代男性)は、仕事で昇進のチャンスを与えられても「自分には無理」と感じ、無意識にチャンスを逃す行動をとってしまう。

🧠 スキーマ的信念:

「自分は他人より劣っている。努力してもどうせ失敗する」


🧩 10. 承認追求スキーマ(Approval-Seeking)

🌱 幼少期の背景:

親から「良い子にしていれば褒められる」「目立つことでしか注目されない」と教えられてきた。

👤 事例:

加藤さん(20代女性)は、SNSで「いいね」が少ないと不安になる。自分が何をしたいかより「どう思われるか」が最優先になってしまう。

🧠 スキーマ的信念:

「他人に認められなければ、自分には価値がない」


🧩 11. 否定的感情の抑圧スキーマ(Emotional Inhibition)

🌱 幼少期の背景:

「泣くな」「怒るな」など感情表現を禁止された家庭環境。

👤 事例:

石田さん(40代男性)は、悲しくても怒っても表情に出さず「平気そう」に見えるが、夜に1人で落ち込む。人間関係もどこか表面的。

🧠 スキーマ的信念:

「感情を見せると迷惑をかけるし、弱い人間だと思われる」


🧩 12. 厳格な基準スキーマ(Unrelenting Standards)

※前回紹介済みですが、ここでも補足事例つきで再掲

👤 補足事例:

伊藤さん(管理職・50代男性)は、部下にも「完璧さ」を求め、細かく指摘してしまう。周囲からは「怖い上司」と思われ、孤立しているが本人は「妥協したら終わり」と信じている。


🧩 13. 罰スキーマ(Punitiveness)

🌱 幼少期の背景:

ミスに対して過剰に叱責された、罰が重かった、「悪いことをしたら厳罰が当然」と教えられてきた。

👤 事例:

田村さん(30代女性)は、小さな失敗でも自分を強く責めてしまい、「こんな自分は罰せられるべき」と自己否定に陥る。他人の失敗にも厳しい態度をとる傾向がある。

🧠 スキーマ的信念:

「人はミスや失敗をしたら罰を受けるべき。自分にも他人にも甘えは許されない」


🧩 14. 権利意識スキーマ(Entitlement/Grandiosity)

🌱 幼少期の背景:

過度に甘やかされて育ち、欲しいものがすぐ手に入った。制限やルールを学ぶ機会が少なかった。

👤 事例:

斉藤さん(30代男性)は、「自分は特別だから、遅刻しても文句を言われる筋合いはない」と感じている。上司からのフィードバックにも反発しやすい。

🧠 スキーマ的信念:

「自分は特別。人と同じルールに従う必要はない」


🧩 15. 自律の欠如スキーマ(Insufficient Self-Control)

🌱 幼少期の背景:

欲しいものはすぐ手に入った/親が子どもの感情を制御せずに育てた。

👤 事例:

森さん(20代男性)は、イライラするとすぐに爆発してしまい、後で自己嫌悪に陥る。ダイエットや禁煙などの「我慢」が非常に苦手。

🧠 スキーマ的信念:

「感情や衝動はコントロールできない。我慢は自分には向いていない」


🧩 16. 社会的疎外スキーマ(Social Isolation)

🌱 幼少期の背景:

引っ越しが多く友達ができなかった、障害や文化的背景の違いで周囲になじめなかった。

👤 事例:

高橋さん(30代女性)は職場でも会話に加われず、「自分だけ浮いている」と感じる。誘われても断ってしまい、ますます孤立する悪循環に。

🧠 スキーマ的信念:

「私は他の人とは違う。どこにも自分の居場所はない」


🧩 17. 自己が未発達スキーマ(Enmeshment / Undeveloped Self)

🌱 幼少期の背景:

親が子どもをコントロールしすぎる/心理的に親と融合している状態。

👤 事例:

中島さん(30代女性)は、何を決めるにも母親に相談してしまい、1人で意思決定ができない。「自分が何をしたいのか分からない」と感じている。

🧠 スキーマ的信念:

「私は他人と切り離されると、自分というものがわからなくなる」


🧩 18. 脆弱性への過度な恐れスキーマ(Vulnerability to Harm or Illness)

🌱 幼少期の背景:

災害、事故、病気、家族の死、または「危ないからやめなさい」と過度に恐怖を教えられてきた。

👤 事例:

永井さん(40代女性)は「外に出たら車にひかれるかも」「風邪から重病になるかも」といった強い不安を常に抱え、外出や新しいことに消極的。

🧠 スキーマ的信念:

「いつ自分に災難が降りかかるかわからない。だから、常に警戒していないと危険」


🔚 まとめ

スキーマキーワード典型的な行動傾向
失敗無力感・回避チャレンジを避ける
承認追求評価依存他人中心の選択
否定的感情抑圧無表情・過剰適応感情を抑えてしまう
完璧主義・批判的自己責め・他者非難
権利意識自己中心・規律無視衝突・孤立
自律欠如衝動・中断継続困難・後悔
社会的疎外孤立・回避関係構築が苦手
自己未発達同一化・依存自分の軸がない
脆弱性恐怖・心配過剰な安全行動

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここからは、「早期不適応スキーマ」の理解をさらに深めるために、以下の4つの視点で掘り下げて解説していきます。


🧠 1. スキーマの「構造」— 何でできているか?

スキーマとは、単なる“考え方”ではなく、以下のような深層構造からできています:

要素内容例
✅ 信念「私は見捨てられるに違いない」
😢 感情不安、孤独、恥、怒り
🧍‍♂️ 身体反応胃の痛み、胸の締めつけ、泣きたくなる感覚
🧠 記憶幼少期のつらかった出来事
🌀 行動傾向回避、自己犠牲、怒り、依存などのパターン

これらがセットになって**自動的に再生される「心のOS」**のようなものがスキーマです。


🧬 2. スキーマが「活性化されるとき」

スキーマは普段は眠っていますが、似たような状況や人間関係で再び活性化されます。

🔁 例:「見捨てスキーマ」が活性化されるとき

  • LINEの返信が遅れる
  • 相手が疲れていてそっけない
  • 会う回数が少し減った

▶️ 「また見捨てられるかも!」と不安 → 過剰に連絡・束縛 or 距離を取ってしまう

このように、現在の出来事が“過去の傷”とつながることでスキーマが作動します。


🛠️ 3. スキーマに対する「3つの対処モード」

スキーマが刺激されたとき、人は無意識に以下のどれかの行動モードをとりがちです:

モード説明例(見捨てスキーマの場合)
🏃‍♂️ 回避モード感じないように避ける距離をとる/親密さを拒否する
🛡️ 過剰補償モード真逆の行動で抑え込む相手を試す・束縛する
🙇 服従モード抵抗せず受け入れる「どうせ捨てられる」とあきらめる

この対処が短期的には「楽」でも、長期的にはスキーマを強化してしまう悪循環に陥ります。


🧘 4. 治療・克服のアプローチ(スキーマ療法の実践)

スキーマは非常に根深いですが、以下のような方法で変化させていくことが可能です。

🔎 ステップ① スキーマの認識

  • 「この考えは自分のどのスキーマに由来しているか?」
  • 「いつどこでこのスキーマが作られたのか?」

▶︎ イメージワークやジャーナリングでスキーマの“起源”に気づくことが重要。


💬 ステップ② 健康な大人モードの育成

  • 「本当にそうなの?証拠は?」
  • 「もし親しい友人が同じことを言ったら、あなたは何て返す?」

▶︎ 子どもの頃にはできなかった**“自分を守る言葉”**を使えるようにする。


💡 ステップ③ 行動の変容

  • 服従 → 主張的に伝える練習
  • 回避 → 安全な場面で感情を表現してみる
  • 過剰補償 → 相手の自由を尊重しながらつながる

▶︎ 小さな成功体験を積むことで、スキーマに基づかない新しい選択肢を身につけていきます。


📌 具体的なワーク例(セルフでも可能)

ワーク名内容
スキーマ・ジャーナル「その出来事で自分は何を感じたか?」「それはどのスキーマと関係があるか?」などを書き出す
内なる子どもとの対話小さい自分を想像し、その子に寄り添う言葉をかける
モードの識別今の自分がどのモードに入っているか(回避・服従・過剰補償・健康な大人)を確認する

📊 スキーマの関係性を可視化した相関マップ(例)

          【核心スキーマ】                       【対処モード】
         ┌────────────┐             ┌──────────────┐
         │ 見捨て ← 感情剥奪 → 欠陥感 │────→│ 過剰補償モード:束縛 │
         └────────────┘             ├──────────────┤
                   ↓                                     │ 回避モード:距離・無感情 │
               不安・孤独                             ├──────────────┤
                   ↓                                     │ 服従モード:自己否定   │
          行動:依存、回避、怒り                    └──────────────┘

こういったスキーマ+モードの可視化マップを自分用に作ると、感情と行動の理解が深まります。


✍️ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スキーマ療法におけるスキーマ診断チェックリストは、個人の「早期不適応スキーマ(Early Maladaptive Schemas)」を評価するためのツールです。代表的なものに「Young Schema Questionnaire(YSQ)」があります。これは、心理療法の現場で広く使用されています。

以下に、代表的なスキーマのリストと、チェックリストで尋ねられるような内容の一例を紹介します。


✅ スキーマ診断チェックリスト(簡易版)


◆ 1. 見捨てられ(Abandonment)

・大切な人は、いつか自分の元からいなくなると感じてしまう
・人と離れることに強い不安を感じる


◆ 2. 不信・虐待(Mistrust/Abuse)

・人は自分をだましたり傷つけたりすると思っている
・他人の言動に常に警戒してしまう


◆ 3. 情緒的剥奪(Emotional Deprivation)

・誰にも自分の気持ちをわかってもらえないと感じる
・本当の意味で大切にされていないと思う


◆ 4. 欠陥/恥(Defectiveness/Shame)

・自分にはどこか深刻な欠点があると感じている
・人に知られたくない「恥ずかしい自分」がある


◆ 5. 社会的孤立(Social Isolation/Alienation)

・自分は周りの人とは違っていて、なじめない
・どこにいても「自分は浮いている」と感じる


◆ 6. 依存/無能(Dependence/Incompetence)

・一人で何かをするのが不安で、自信が持てない
・他人に頼らないと不安


◆ 7. 脆弱性(Vulnerability to Harm or Illness)

・災害や病気など、悪いことが起こるのではないかと強く不安になる
・自分では守れないと感じる


◆ 8. 絡みつき/未分離(Enmeshment/Undeveloped Self)

・自分の考えや気持ちよりも、親や家族の意見が優先されてきた
・自分という存在がよく分からない


◆ 9. 失敗(Failure)

・自分は努力しても成功できないと思っている
・他人より劣っていると感じている


◆10. 権利/特権意識(Entitlement/Grandiosity)

・自分は特別で、特別扱いされて当然だと感じる
・ルールに従わなくてもいいと思ってしまう


◆11. 自己犠牲(Self-Sacrifice)

・自分よりも他人のことを優先しすぎてしまう
・自分の気持ちを後回しにすることに慣れている


◆12. 承認・認可の追求(Approval-Seeking/Recognition-Seeking)

・人からよく思われるために、自分を犠牲にしてしまう
・他人の評価ばかり気にしてしまう


◆13. 否定的思考(Negativity/Pessimism)

・いつも物事の悪い面ばかり見てしまう
・良いことがあっても、また悪いことが起こる気がして楽しめない


◆14. 感情抑制(Emotional Inhibition)

・怒り、悲しみ、愛情などの感情を表に出さないようにしている
・感情を出すことに不安や罪悪感がある


◆15. 過剰な自己コントロール/抑制(Overcontrol/Self-Discipline)

・楽しみよりもルールや義務を優先してしまう
・「ちゃんとしていなきゃ」と思いすぎて、息が詰まることがある


◆16. 基準の厳しさ/過剰な批判(Unrelenting Standards)

・常に完璧を求めてしまう
・自分に対してとても厳しく、達成しても満足できない


◆17. 罰(Punitiveness)

・失敗やミスをした人には罰が必要だと感じる
・自分の失敗を許せず、強く責めてしまう


◆18. 欲求抑制/情緒抑制(Emotional Inhibition)

・自分の感情を抑え込んでしまう傾向がある
・泣く、怒る、甘えるなどを「してはいけない」と思ってしまう


※14と18は似ていますが、

  • 14は「感情表現の制限」(表に出さない)
  • 18は「感情や欲求そのものの抑圧」(感じないようにする)
    という違いがあります。


🔍 使い方(簡単なセルフチェック)

それぞれの項目について、以下のスケールで自己評価してみましょう:

評価意味
1全く当てはまらない
2ほとんど当てはまらない
3時々当てはまる
4よく当てはまる
5非常によく当てはまる

スコアが高い項目ほど、そのスキーマが自分に強く影響している可能性があります。

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このテンプレートは、自分のスキーマを見つけて・理解し・修正していくための実践的な構成になっています。


🧠 スキーマ療法・自己ワークブック テンプレート


✍️ Step 1:スキーマの特定

対象スキーマ(例:見捨てられ不安):______________

どんなときに強く反応する?
(例:大切な人が返信をくれないとき)


________________________________

どんな感情・思考・行動になる?
(例:不安になり、過去の失敗を思い出し、連絡を何度もしてしまう)


________________________________


🧩 Step 2:スキーマの起源に気づく

このスキーマは、どんな経験から生まれたと思う?
(例:子どもの頃に親が急にいなくなることが多かった)


________________________________

子どもの自分がどう感じていた?


________________________________


🔁 Step 3:現在の影響を見つめる

今の生活でこのスキーマが悪影響を及ぼしている場面は?


________________________________

そのとき本当は、どう感じたい/どうしたい?


________________________________


🗣️ Step 4:スキーマに挑戦する

このスキーマに対して反論してみると?
(例:「誰もが私を見捨てるとは限らない」)


________________________________

過去の経験の中で、このスキーマと矛盾する証拠は?
(例:友人が辛いときにずっとそばにいてくれた)


________________________________


🌱 Step 5:新しい信念・行動を選ぶ

このスキーマに代わる、もっと現実的で自分を支えてくれる信念は?
(例:「私は関係を築く価値のある人間だ」)


________________________________

次に同じ状況が起こったら、どう反応してみたい?
(例:不安が出ても少し間を取って、落ち着いてから連絡する)


________________________________


🧘 Step 6:自己ケア & ふりかえり

自分に優しくするためにできることは?
(例:不安なときに自分をなだめる言葉を書く)


________________________________

今日のワークで得た気づき・感想


________________________________


📄

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あなたのスキーマ構造の整理」は、スキーマ療法を深めるうえで非常に効果的なアプローチです。

これは、自分の中にある複数のスキーマの関係性を1枚の図や表で**「見える化」**する作業です。
モヤモヤした自己反応が、「なぜ」「どこから」「どう影響しているか」を体系的に理解できます。


🧠 「あなたのスキーマ構造の整理」テンプレート

① スキーマの一覧(例)

スキーマ名具体的な思考・行動パターン発生場面
見捨てられ不安返信が遅れると「嫌われた」と思う恋人・友人とのやりとり
承認欲求褒められたいがために無理して頑張る上司の前・SNS投稿
情緒的剥奪感情的な支えをもらえない気がするパートナーとの会話中
自己犠牲人のために我慢する/NOと言えない家族との関係

② スキーマの背後にある「起源スキーマ(ルーツ)」

  • 💔 親との関係が希薄だった → 「情緒的剥奪」「見捨てられ不安」
  • 🎯 常に優等生でいなければ愛されないと感じた → 「承認欲求」「完璧主義」
  • 😢 弱音を吐ける雰囲気がなかった → 「情緒抑制」「自己犠牲」

③ スキーマの「つながり図」:例

      [情緒的剥奪]
             ↓
     [見捨てられ不安]
             ↓
     [承認欲求]  → [自己犠牲]
             ↑
       [完璧でなければ]

このように図にすると:

  • 中心的なスキーマ(=核スキーマ)がどれか?
  • 他のスキーマがどう連動して発動しているか?
  • 自分のストレスの「パターン」がどこで回っているか?

がわかってきます。


④ 整理の目的

  • ✔️ 問題の「根っこ」に気づける
  • ✔️ スキーマごとの優先度や影響力を視覚化できる
  • ✔️ どのスキーマからワークしていけばよいか判断しやすくなる

📌コーピングスタイルとは、

ストレスや困難な状況に直面したときに人々がどのように対処し、適応するかの個人的な方法や戦略のことを指します。
人それぞれ異なるコーピングスタイルを持ち、それがどのようにストレスを乗り越えるか、あるいは場合によってはストレスを悪化させるかに影響を与えます。

コーピングスタイルは以下のカテゴリーに分類されます。


1. 問題焦点型コーピング(Problem-Focused Coping)

これは、問題を直接的に解決しようとするアプローチです。困難な状況やストレスの原因に立ち向かうことで、解決策を見つけようとします。

主な特徴:

  • 分析的アプローチ:問題の本質を理解し、解決策を見つけ出す。
  • 積極的行動:状況を改善するために行動を起こす。
  • 問題解決志向:直面している問題に対する具体的な解決策を考える。

例:

  • 仕事の期限が迫っている場合、計画を立て直してタスクを効率よく終わらせようとする。
  • 人間関係に問題がある場合、その問題を話し合って解決しようとする。

2. 感情焦点型コーピング(Emotion-Focused Coping)

このアプローチでは、ストレスや困難に対して自分の感情を管理したり、コントロールしたりすることに焦点を当てます。問題の解決よりも、自分の気持ちを和らげることを優先します。

主な特徴:

  • 感情の調整:ストレスに対する感情的な反応を緩和し、心の平安を保つ。
  • 自己慰労的行動:自分を落ち着かせる方法や心のケアを行う。
  • 回避的行動:問題を直接的に解決しようとせず、感情的な面での解決策を見つける。

例:

  • ストレスを感じたときに友達と話したり、趣味に没頭したりして気持ちをリフレッシュさせる。
  • 深呼吸や瞑想、リラックス法を取り入れて心を落ち着ける。

3. 回避型コーピング(Avoidant Coping)

回避型コーピングは、問題そのものに立ち向かうのではなく、問題から逃げる方法です。感情や状況を避けることで一時的にストレスを軽減しようとするが、長期的には問題が解決されないため、繰り返し使用されると有害になることがあります。

主な特徴:

  • 逃避的行動:問題に直面しないようにするため、逃げる行動を取る。
  • 回避的思考:困難な状況に関する思考を意識的に避ける。
  • 感情の抑圧:感情的な痛みを避けるために無視や否認をする。

例:

  • ストレスを感じたときに問題に直面せず、過度に飲みすぎたり、ネットサーフィンをして現実逃避する。
  • 対人関係の問題を放置して、話し合いを避ける。

4. 積極的回避型コーピング(Active Avoidance)

積極的回避型は、回避行動を取るが、問題から完全に逃げるのではなく、代替手段を使って対処しようとする方法です。

主な特徴:

  • 代替戦略:問題から逃げるのではなく、問題に立ち向かう代わりに他の方法で問題を回避しようとする。
  • 他者依存:他者に助けを求めることで自分の問題からのストレスを回避する。

例:

  • 仕事のプレッシャーを感じたときに、上司や同僚に助けを求め、サポートを受けることでプレッシャーを和らげる。
  • どうしても避けられない問題がある場合、友達や家族に相談して対処する。

5. 社会的支援型コーピング(Social Support Coping)

社会的支援型コーピングは、他者とのコミュニケーションを通じてサポートを求める方法です。自分の感情や考えを他の人と共有することによって、ストレスの軽減を図ります。

主な特徴:

  • 人間関係の活用:友人、家族、同僚などと悩みを共有し、サポートを得る。
  • 共感的なやり取り:他者とのやり取りを通じて感情的な支えを受ける。

例:

  • 友人と悩みを話し合って、アドバイスをもらう。
  • 仕事のストレスを家族と共有し、気持ちを楽にする。

まとめ

コーピングスタイルには、ストレスを直接的に解決する方法や、感情を調整する方法、回避する方法などがあります。
自分のコーピングスタイルを知ることで、ストレス管理や自己成長の手助けになります。
特に、問題焦点型と感情焦点型コーピングは、その場面に適した方法を選ぶことで、より効果的なストレス対処ができるようになります。

どのコーピングスタイルを使うかは、状況や自分の性格にもよるため、柔軟に使い分けることが重要です。

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モード(Mode)は、スキーマ療法における重要な概念で、個人の感情的、思考的、行動的な反応パターンを示すものです。モードは、過去に形成された早期不適応スキーマ(Early Maladaptive Schemas)と関連しており、特定の状況や刺激に反応する際に現れる心の状態役割のことを指します。

モードとは?

モードとは、特定の心の状態を指し、過去に形成されたスキーマに基づき、ある状況で生じる感情、思考、行動のパターンです。スキーマ(深層的な信念や思い込み)は、普段は意識的ではなくても、特定の状況で「モード」として現れ、私たちを特定の行動や反応に導きます。

モードは、私たちがどのように物事を認識し、感じ、反応するかに深く影響を与えます。特にストレスフルな状況や感情的なトリガーに直面したときに、モードが強く発動します。


モードの種類

モードにはいくつかの異なる種類がありますが、一般的にスキーマ療法で重要とされるモードは以下の通りです。

1. 幼児モード(Child Modes)

これらのモードは、幼少期の感情的なニーズや経験に関連しています。通常、感情的に困難な状況で現れます。

  • 傷ついた子供モード(Vulnerable Child Mode)
    • 特徴:恐れ、不安、孤独、無力感を感じるモード。過去の感情的な傷を思い出す。
    • 状況:孤独や見捨てられる不安を感じるときに発動することが多い。
  • 怒りの子供モード(Angry Child Mode)
    • 特徴:不公平や過度な制限に対する怒りを感じるモード。自分の感情や欲求が無視されたときに現れる。
    • 状況:他人に不当な扱いを受けたり、感情的に抑圧されたときに発動する。
  • 甘えたい子供モード(Impulsive/Undisciplined Child Mode)
    • 特徴:衝動的で、欲求が満たされないことに対して我慢できないモード。即時の快楽や満足を求める。
    • 状況:感情的に過剰に反応したり、何かを過度に求めたりするときに現れる。

2. 大人モード(Parent Modes)

これらのモードは、子供時代に影響を受けた親の役割社会的規範に関連しています。

  • 批判的親モード(Critical Parent Mode)
    • 特徴:自己批判的で、他者にも厳しい評価を行うモード。自己や他人に対する過剰な期待や評価が現れる。
    • 状況:自分を責めたり、他人を評価し過ぎたりする状況で発動する。
  • 保護的親モード(Nurturing Parent Mode)
    • 特徴:優しさ、支援、配慮を与えるモード。自己や他者を守り、サポートしようとする姿勢をとる。
    • 状況:他人を支援したり、感情的にサポートを提供したりするときに現れる。

3. 適応的モード(Healthy Adult Mode)

適応的な大人としての反応や思考のモードです。自己のニーズや感情を健全に理解し、対処することができる状態です。

  • 健全な大人モード(Healthy Adult Mode)
    • 特徴:自己理解があり、感情や行動を適切に管理できるモード。問題を冷静に分析し、行動することができる。
    • 状況:感情的に安定し、現実的な視点から物事を判断できる状態。

モードとスキーマの関係

スキーマ(早期不適応スキーマ)とモードは密接に関連しています。スキーマはその人が持っている深層的な信念や思い込みに過ぎませんが、特定の状況下でモードとして現れます。モードはスキーマが活性化される状態とも言えます。

例えば、「見捨てられ不安」というスキーマが強い場合、その人は恋人からの連絡が遅れると「見捨てられた」と感じ、傷ついた子供モードが発動し、不安や恐怖を感じることになります。


モードの調整とスキーマ療法

スキーマ療法では、不適応なモード(例えば、傷ついた子供モードや批判的親モード)を認識し、それらを適切に調整していくことが重要です。目指すべきは、健全な大人モード(Healthy Adult Mode)を強化し、不適応な反応から脱却することです。

モード調整のプロセス

  1. モード認識
    自分がどのモードにいるのかを認識することが第一歩です。例えば、感情的に動揺したときに「今、傷ついた子供モードになっている」と気づくこと。
  2. モードの切り替え
    モードを認識したら、健全な大人モードに切り替える方法を学びます。冷静な思考を取り入れ、問題解決的な行動を選択することが求められます。
  3. 過去の体験に対する新たな意味づけ
    幼少期の傷ついた経験に対して、新しい視点からの解釈を行い、過去のスキーマを修正することが重要です。

モードとスキーマ療法の活用

スキーマ療法では、モードを理解することで、感情や行動の反応パターンを改善し、健全な人間関係や自己理解を深めることができます。
モードを調整することは、長期的な自己改善や心理的な回復にとって非常に重要です。

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以下に、**スキーマ療法の18の早期不適応スキーマ(チェックリスト形式)**をまとめました。
各項目について、「自分に当てはまる」と思ったら、☑ チェックを入れてください。
(目安:現在または過去に強く当てはまったと感じるもの


🔍 スキーマ簡易チェックリスト

基本的ニーズの欠如

☐ 1. 見捨て:大切な人にいつか見捨てられる気がする
☐ 2. 不信・虐待:他人は自分を傷つける存在だと感じてしまう
☐ 3. 情緒的剥奪:誰にも本当の自分を理解してもらえない
☐ 4. 欠陥/恥:自分にはどこか恥ずかしい欠点があると感じる
☐ 5. 社会的孤立:周りになじめず、自分だけが孤立している気がする


自立性・能力の障害

☐ 6. 依存/無能:一人では何もできない・判断できないと感じる
☐ 7. 脆弱性:大きな事故や病気などが常に不安
☐ 8. 絡みつき/未分離:親や特定の人と強く結びつきすぎて、自分が分からない
☐ 9. 失敗:自分は他の人より能力が劣っていると感じる


他者志向性

☐10. 権利/特権意識:自分は特別で、特別扱いされるべきだと思う
☐11. 自己犠牲:自分よりも他人を優先しすぎて疲れてしまう
☐12. 承認の追求:人からの評価や賞賛を強く求めてしまう


過剰な警戒と抑制

☐13. 否定的思考:常に最悪のシナリオばかり考えてしまう
☐14. 感情抑制:感情を外に出すのが苦手、または不安
☐15. 過剰な自己コントロール:遊びやリラックスよりも義務・成果を重視しすぎる
☐16. 基準の厳しさ:常に完璧を目指し、自分に厳しすぎる
☐17. :間違いや失敗には厳しく罰を与えるべきだと感じる(自分にも他人にも)
☐18. 欲求・情緒の抑制:欲しい・楽しいと感じることを無意識に抑え込んでいる


✨チェックの見方(簡易)

  • 5つ以上に強く当てはまる場合:スキーマが現在の生きづらさに関わっている可能性があります。
  • 特に当てはまる項目を深掘りしていくと、心のパターンや傷つき体験への理解が進みます。

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「スキーマに対する対処モード(coping modes)」は、スキーマ療法の中でもとても重要な考え方です。これは、私たちが過去のつらい体験(特に子ども時代)で身につけた“スキーマ”に直面したときに、どんなふうに反応しがちかを説明するものです。


🔹対処モードとは?

「スキーマ」は、心の深いところにある“思い込み”や“信念”です。たとえば、「どうせ私は愛されない」といった感情のクセがスキーマです。
それが刺激されたとき、心は自分を守ろうとして**3つの典型的なパターン(対処モード)**で反応します。


✳️ 1. 降伏モード(スキーマに従ってしまう)

🔍 どんな反応?

スキーマを「本当のこと」と信じて、そのまま受け入れてしまうパターンです。

🧠 例:

  • 「私はダメな人間だ」と思い込み、いつも人の言いなりになる。
  • ひどく扱われても「仕方ない」と感じ、我慢し続ける。

🧩 背景:

このモードの人は、抵抗する力が育たなかったり、過去の経験で「従うことが安全」だと学んできたことが多いです。


✳️ 2. 回避モード(スキーマから逃げようとする)

🔍 どんな反応?

スキーマが刺激されると不安になり、それを感じないように感情をシャットアウトしたり、現実逃避したりします。

🧠 例:

  • 感情を麻痺させる(何も感じたくない)。
  • アルコールやスマホ、ゲームなどに依存する。
  • 人と深い関係を避ける。

🧩 背景:

苦しい気持ちから逃げることで心を守ろうとしているけれど、問題は解決しないまま残ってしまいます。


✳️ 3. 過剰補償モード(スキーマに逆らって極端に行動する)

🔍 どんな反応?

スキーマの反対を演じて、自分を守ろうとするパターンです。表面上は強く見えても、内面にはスキーマがしっかりあります。

🧠 例:

  • 「どうせ私は価値がない」と思いながら、無理して完璧にふるまう。
  • 他人を支配したり、攻撃的になったりすることで「弱く見られないようにする」。

🧩 背景:

本当は自己価値を疑っているけど、それを見せないように“強がり”や“仮面”をかぶって生きている状態です。


🌱なぜこれを知ることが大事?

対処モードは、一時的には自分を守ってくれますが、長い目で見ると自分を苦しめたり、問題を長引かせてしまうことがあります。
スキーマ療法では、これらのモードに気づいて、少しずつ健全な反応(=「健康な大人モード」)を育てていきます。

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こちらが「スキーマに対する対処モードチェックリスト(簡易版)」です。ご自身の行動パターンや感じ方に当てはまるものがないかチェックしてみてください。


🧭 スキーマに対する対処モードチェックリスト(簡易版)

以下の各項目について、「はい」または「いいえ」で答えてください。
※複数のモードが混ざる場合もあります。


🔹 1. 降伏モード(スキーマに従ってしまう)

チェック質問内容
他人の言うことに逆らえず、つい我慢してしまうことが多い。
自分の気持ちよりも他人の期待に応えようとしてしまう。
「どうせ自分はダメだ」と思ってしまうことがよくある。
ひどい扱いをされても「私が悪いから」と思ってしまう。

🔹 2. 回避モード(スキーマから逃げようとする)

チェック質問内容
感情を感じたくないと思い、無感覚になることがある。
不安や寂しさを感じたとき、ゲーム・スマホ・お酒などに頼ってしまう。
親密な人間関係を避ける傾向がある。
嫌なことがあると「なかったこと」にしたくなる。

🔹 3. 過剰補償モード(スキーマの逆を演じる)

チェック質問内容
自分の弱さを見せたくなくて、いつも強がってしまう。
完璧を目指して無理をしがち。失敗が許せない。
他人を見下したり、批判したくなることがある。
自分の価値を他人に認めさせようと、必死になることがある。

📝結果の見方(目安)

  • それぞれのモードで「はい」が2つ以上 → そのモードがあなたの対処パターンになっている可能性があります。
  • 複数のモードにチェックがある → 状況によって使い分けている、または混在している可能性があります。
  • どのモードにもチェックがない → 今は健全な対処ができている可能性があります(あるいは気づいていないだけのことも)。

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