スキーマ、自動思考、core beliefs(中核信念)

認知行動療法における重要な概念であるスキーマ、自動思考、core beliefs(中核信念)について、解説します。

スキーマ

スキーマとは、私たちの心の中にある「物事の見方や解釈の枠組み」のことです。幼少期からの経験を通じて形成され、世界や自分自身、他者に対する基本的な考え方や信念のパターンを指します[1]。

スキーマは以下のような特徴を持っています:

  1. 長期的に形成される
  2. 安定していて変化しにくい
  3. 無意識のうちに働く
  4. 新しい情報の解釈や記憶に影響を与える

例えば、「世界は危険な場所だ」というスキーマを持っている人は、些細な出来事でも脅威と感じやすく、常に用心深く行動する傾向があります。

自動思考

自動思考は、ある状況に直面したときに、瞬間的に浮かぶ考えやイメージのことです[2]。これらは通常、意識せずに生じるため「自動」と呼ばれます。

自動思考の特徴:

  1. 素早く、自然に生じる
  2. 状況に対する即座の解釈や評価を含む
  3. 必ずしも現実的や合理的ではない
  4. 感情や行動に大きな影響を与える

例えば、テストの結果が思わしくなかった時に「自分は頭が悪いんだ」という自動思考が浮かぶかもしれません。

Core Beliefs(中核信念)

Core beliefsは、自分自身、他者、世界に対する最も根本的な信念や考え方のことです。これらは幼少期から形成され、私たちの思考や行動の基盤となっています[1]。

Core beliefsの特徴:

  1. 非常に強固で変化しにくい
  2. 普遍的で絶対的な信念として機能する
  3. 自動思考やスキーマの基礎となる
  4. しばしば意識されずに働く

例えば、「自分は価値のない人間だ」や「世界は公平だ」といった信念がcore beliefsに当たります。

スキーマ、自動思考、Core Beliefsの関係

これら3つの概念は、以下のように関連しています:

  1. Core beliefsは最も深層にあり、スキーマや自動思考の基盤となります。
  2. スキーマはcore beliefsに基づいて形成され、日常的な状況解釈の枠組みとなります。
  3. 自動思考は、特定の状況下でスキーマやcore beliefsが活性化されることで生じます。

例えば:

  • Core belief: 「自分は失敗する人間だ」
  • スキーマ: 「新しいことに挑戦するのは危険だ」
  • 自動思考: (新しい課題を与えられて)「きっとうまくいかないだろう」

認知行動療法におけるアプローチ

認知行動療法では、これらの概念を理解し、不適応的な思考パターンを特定・修正することで、心理的問題の改善を目指します[1][2]。

主なアプローチ:

  1. 自動思考の特定と修正
  • 状況、感情、自動思考を記録する
  • 自動思考の妥当性を検証する
  • より適応的な代替思考を見つける
  1. スキーマの修正
  • 不適応的なスキーマを特定する
  • スキーマの起源を探る
  • 新しい経験を通じてスキーマを更新する
  1. Core beliefsの再構築
  • 否定的なcore beliefsを特定する
  • core beliefsを支持する・反駁する証拠を集める
  • より適応的なcore beliefsを形成する

まとめ

認知行動療法では、スキーマ、自動思考、core beliefsという3つの層の思考パターンに注目します。これらは互いに関連し合い、私たちの感情や行動に大きな影響を与えています。

therapy(療法)の目標は、これらの思考パターンを意識し、より適応的なものに変えていくことです。そうすることで、ネガティブな感情や問題行動を減らし、より健康的で充実した生活を送ることができるようになります。

認知行動療法は、単に「前向きに考えよう」というだけではなく、科学的な方法で思考パターンを分析し、具体的な技法を用いて変化を促します。この過程で、自己理解が深まり、人生の様々な課題に対処する力が身につくのです。

Citations:
[1] https://www.heartfullife.jp/cbt/schema-therapy/
[2] https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf
[3] https://www.kwansei.ac.jp/cms/kwansei_i_industrial/2021/pdf/ronsyu48-kato.pdf
[4] https://terapi.jp/column/automatic-thoughts-improvement/
[5] https://utsumi-mcl.com/cbt/ct.html

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スキーマ療法には、以下のような具体的な実践テクニックがあります:

  1. スキーマの特定と評価
  • スキーマ質問票を用いて、クライアントの不適応的スキーマを特定します。
  • ライフヒストリーの聴取を通じて、スキーマの起源を探ります。
  1. 認知的技法
  • スキーマの妥当性を検証するために、証拠の吟味を行います。
  • より適応的な新しい見方を見出すために、認知的再構成を行います。
  1. 経験的技法
  • イメージ rescripting: トラウマ的な記憶を想起し、新たな結末を想像します。
  • チェアワーク: 空の椅子を用いて、健康的な大人の自分と傷ついた子どもの自分との対話を行います。
  1. 行動的技法
  • 行動実験: 新しい適応的行動を試し、スキーマに反する経験を積みます。
  • 段階的曝露: 恐れている状況に徐々に向き合います。
  1. 対人関係的技法
  • 制限的再養育: セラピストが健康的な親のモデルとなり、クライアントの情緒的ニーズを満たします。
  • 関係性のパターンの分析と修正を行います。
  1. モード・アプローチ
  • 様々な自己モードを特定し、健康的な大人モードを強化します。
  • モード対話を通じて、不適応的なモード間の葛藤解決を図ります。
  1. セルフケアの促進
  • リラクセーション法や自己慰撫のスキルを学びます。
  • 健康的な生活習慣の確立を支援します。

これらのテクニックを組み合わせて用いることで、クライアントの不適応的スキーマの修正と、より健康的な対処方法の獲得を目指します。セラピストは、クライアントの個別のニーズに合わせてこれらの技法をカスタマイズし、段階的に適用していきます。

Citations:
[1] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9306742/
[2] https://www.apa.org/pubs/videos/core-conflictual-relationship-theme-method
[3] https://en.wikipedia.org/wiki/Core_conflictual_relationship_theme
[4] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32252696/
[5] https://nikhelbig.at/research-core-conflictual-relationship-theme-method-ccrt/

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