電磁波と光子は、密接に関連しています。電磁波は、電場と磁場が時間とともに変化しながら空間を伝播する波のことです。電磁波は波の一種であり、その波の特性には周波数や波長があります。光子は、この電磁波の波動としての性質を持つと同時に、粒子としての性質も持つ量子のことを指します。
電磁波の性質:
- 電磁波には非常に広いスペクトルがあり、ラジオ波、マイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線、ガンマ線などが含まれます。これらはすべて同じ基本的な波の性質を持ちながら、周波数と波長によって区別されます。
光子の性質:
- 光子は、電磁波の量子であり、エネルギーを持つ粒子としての性質を持ちます。光子のエネルギーは、プランク定数(hhh)とその電磁波の周波数(fff)の積によって決まります。すなわち、エネルギーEEEは E=hfE = hfE=hf で表されます。
- 光子は質量を持たず、真空中では光速で移動します。
- 光子は、波動と粒子の二重性を持ち、波のように干渉や回折を示すとともに、粒子として物質と相互作用する際にエネルギーを伝達することができます。
電磁波と光子の関係:
- 電磁波は波としての性質を持つ一方で、光子という粒子がそのエネルギーや運動量を運ぶ単位です。例えば、可視光は波長約400~700ナノメートルの電磁波であり、これに対応する光子が私たちの目で「光」として認識されます。
- 量子力学的には、電磁波は無数の光子の集まりとして説明されます。例えば、光の強さが増加すると、実際には光子の数が増加することを意味します。
このように、電磁波と光子は一体であり、異なる側面から見ることによって、波動としての性質と粒子としての性質を理解することができます。
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太陽から地球に到達するエネルギーは、主に電磁波の形で放射されます。これは、物質が運ばれているわけではなく、エネルギーが空間を通じて伝達されているという点で、物質と異なる性質を持っています。以下に、そのメカニズムをわかりやすく説明します。
1. 電磁波としてのエネルギー伝達:
太陽は光と熱を放射しますが、これは電磁波として地球に到達します。電磁波は、電場と磁場の変動が空間を伝わる形でエネルギーを運びます。光や赤外線などの電磁波の形でエネルギーが地球に届き、私たちはそれを光や熱として感じることができます。
2. 光子としてのエネルギー伝達:
電磁波は光子という量子単位でエネルギーを持っています。光子は質量がゼロで、電磁波のエネルギーを運ぶ粒子のようなものです。光子自体は質量を持たないため、物質としての性質はありませんが、エネルギーと運動量を持ちます。これが、光子を通じてエネルギーが伝達される理由です。
3. エネルギーの伝達と物質の違い:
物質は質量を持ち、空間を通って移動することができます。対照的に、光子は質量を持たず、エネルギーを運ぶだけです。これにより、光子が伝えるのはエネルギーや情報であって、物質そのものが移動しているわけではありません。
4. エネルギーが地球に到達する仕組み:
光子が地球の大気や地表に到達すると、そのエネルギーは様々な方法で変換されます。例えば、太陽光が植物の葉に当たると、光合成によって化学エネルギーに変換されます。また、地表に当たった太陽光は熱に変わり、気温を上昇させます。このように、光子が運ぶエネルギーは、地球上で物質との相互作用を通じてさまざまな形に変換されます。
まとめ
光子はエネルギーを運ぶ量子であり、質量を持たないため物質ではありません。太陽から放射されるエネルギーは電磁波として伝わり、その波動の単位である光子によってエネルギーが運ばれます。これにより、地球には物質ではなくエネルギーが届き、それが私たちの周りで様々な形で利用されています。
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電磁波の伝播は、電場と磁場の相互作用によって行われます。これらの場は、マックスウェルの方程式に従い、相互に生成し合いながら空間を進む性質を持っています。電場と磁場がどのようにして生成されるか、そして電磁波が伝播する際の電子の役割について詳しく説明します。
1. 電磁波の発生:
電磁波は、加速する電荷(通常は電子)によって発生します。例えば、アンテナで電流が加速されると、その周囲に変動する電場が生じ、これに伴って磁場も生成されます。この変動する電場と磁場のセットが電磁波として放射されます。電磁波の伝播には最初にエネルギーを供給する電荷の加速が必要です。
2. 電場と磁場の相互作用:
電磁波が一度放射されると、その伝播は電場と磁場の相互作用によって維持されます。マックスウェルの方程式によれば、時間的に変化する電場は磁場を生成し、逆に時間的に変化する磁場は電場を生成します。この過程が連続的に起こることで、電磁波は空間を伝播します。
3. 電子の役割とその後の電磁波の伝播:
電磁波の発生において、電子の加速は不可欠な役割を果たしますが、一旦電磁波が発生し放射されると、その後の電磁波の伝播には追加の電子や電流は必要ありません。これは、電磁波が自己維持的な波動として伝播するためです。放射された電磁波は、空間内で独立した存在として伝播し、電子や他の電荷の影響を受けることなく進むことができます。
4. エネルギーの伝播と物質の関係:
電磁波が物質に到達すると、電磁波のエネルギーは物質と相互作用することがあります。例えば、電磁波が物質に吸収されると、そのエネルギーが物質の原子や分子に伝達され、温度の上昇や化学反応などが起こります。このとき、電子が再び関与することがありますが、これは電磁波が伝播してきた後の現象です。
まとめ
電磁波は最初に加速する電荷、つまり電子の運動によって発生しますが、一旦放射されると、電磁波の伝播は電場と磁場の相互作用によって維持されます。そのため、放射された電磁波の進行には、追加の電子や電荷の関与は必要ありません。電磁波が物質と相互作用する場合は別ですが、これは電磁波のエネルギーが物質に吸収される際の現象です。
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二重スリット実験で光子を1個発射するというのは、光の量子である光子を1つずつ検出可能なレベルで放射することを意味します。このプロセスを行うためには、非常に微弱な光源を使って光を放射し、光子を一度に1つだけ検出できるように調整します。
光子の単独発射の方法
- 非常に微弱な光源の使用: 光子を1個ずつ発射するには、光源が非常に低い強度で光を放射するように調整されます。このような微弱な光源では、発生する光子の数が大幅に減少します。
- 光子検出器の使用: 光子の検出には非常に感度の高い検出器が必要です。通常、光子検出器は1個の光子が入射したときに電気信号を生成します。この信号を使って、光子が1個通過したことを確認します。
- 光の量子制御技術: 光子の発射と検出は、量子光学技術を使用して制御されます。例えば、光源における量子光学の技術により、光子が1個ずつ発射される確率を制御できます。このプロセスでは、非常に短い時間スケールで光を制御する技術が重要です。
実験の実施
二重スリット実験で1個ずつの光子を発射すると、スリットを通過した光子がスクリーンに到達し、その位置が検出されます。実験を繰り返して多数の光子を送ると、干渉パターンが形成されるのを観察できます。これは光子が波としての性質を示す結果です。
このようにして、光子1個の発射と検出は、光の量子性を実験的に観察するための重要な手段となります。光子が1個ずつスリットを通過するにもかかわらず、干渉パターンが形成されることから、光が粒子と波の二重性を持つことが確認されます。この結果は、量子力学の基本的な性質を理解する上で非常に重要です。
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https://event.phys.s.u-tokyo.ac.jp/physlab2021/pdf/quantph_quantumeraser.pdf
世界でもっとも美しい実験と評される『二重スリット実験』。観測すると世界が決まる⁉
量子の振る舞いはとても不思議。当初、物理学者さえその真偽を判じかね、四半世紀に亘り検証実験が繰り返されてきました。
今回はそんな二重スリット実験について、会話を聞いてみましょう。
解説者
二重スリット実験を理解するには、まず「粒」と「波」という2つの形を知る必要がある
聞き手
粒?波?
解説者
とうもろこしで言えば、粒としてシャキッと立ってるか、ポタージュでのペーっとしているか
聞き手
ん?
解説者
クラスで当てられたときは粒としてシャキッとするけど、全校集会では波みたいでしょ
聞き手
たとえが独特・・・
解説者
下の図みたいに、壁を2枚置いて手前の壁にはすき間を作る
聞き手
すき間。英語でスリットね
解説者
そう。手前からボールをスリットめがけてたくさん投げる。そうすると、スリットを通り抜けたボールだけが後ろの壁に当たって、こんな筋ができるよね
解説者
じゃあ次に、そのスリットを2つにしたらどうだろう?
聞き手
後ろの壁には2つの筋ができる
解説者
当たり
聞き手
二つのスリット。これが二重スリットの名前の由来ね!
解説者
うん!
解説者
じゃあ次に、プールで考えてみるよ
解説者
黒丸のところで波を起こすと、波はスリットを抜けて奥の壁に、やはり一本の筋を作る。そこが一番強く当たる場所だから。じゃあ、これが二重スリットだとどうなる?
聞き手
分からない。2つの筋ではなさそうだけど
解説者
うん。波は干渉しあって縞模様ができるんだ。これを干渉縞と呼ぶ。山と山がぶつかるところは高くなって、谷と谷がぶつかるところは低くなる。その強弱が縞模様を作るんだ
聞き手
へー
解説者
こんな感じで、物質には粒の性質と波の性質があるよ
解説者
さて、ここからが本題。さっきはボールで実験したけど、これを『すごく小さい世界』で実験したのが『二重スリット実験』。そしたら、常識では考えられない現象を観察することになったんだよ
聞き手
すごく小さな世界?
解説者
そう。ボールの代わりに使ったのは電子。電子は量子の仲間。量子の仲間にはほかにも光を構成する「光子」がある。光子も二重スリット実験でよく使われてきたよ
聞き手
ちょっと置いてかれた・・・
解説者
そかそか、今のは忘れていいよ。夜空を見上げれば星がある。その星々は粒みたいに小さいけど、実際には太陽よりも大きい星ばかり。それくらいスケールが違うお話ってこと
聞き手
なおさら分からん。で、常識では考えられない現象って?
解説者
電子をボールと同じように発射したのに、縞模様ができたんだ
聞き手
ボールなら粒だから、二本線の方じゃないの?
r6.png
電子の粒を発射したのに、縞模様が現れた
聞き手
粒なのに波の干渉が起こったってこと?
解説者
そう。2本のぶつかった跡が現れると思われたけど、そうはならなかった。ただ、こんな指摘もあった。そのときの実験は、電子を同時にたくさん発射して行ったから、電子同士が干渉し合って縞ができたんじゃないかと。だから、その13年後、今度は電子を1個ずつ発射して実験したんだ。でも、結果は同じだった。電子を1個ずつ発射しても干渉縞ができたんだ
r7.png
量子を1個ずつ発射しても縞模様ができた
二重スリット実験の結果写真
実際の実験結果
(出典:Dr. Tonomura, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)
聞き手
ほんとだ。縞模様になってる・・・
解説者
なぜ一粒ずつ発射してるのに、つまり、粒同士の干渉が起こりえない状態なのに、縞模様ができたか、そこはまだよく分かっていない。数学的には、一つの電子がスリットを「片方だけ通った」と「両方通った」と「どちらも通らなかった」が同時に存在すると解釈されてる。また、電子が壁に当たるまでは、どこか一箇所に存在することのではなく、こっちなら10%、あっちなら20%って感じで確率の波として存在してて、壁に当たったとたんに波が消滅して電子の場所が確定するという解釈もある。観測したとたん、世界が決まるんだ
聞き手
分からん!
解説者
まあ無理もないかも。アインシュタインでさえ、確率の波として電子が存在するという提唱を信じられず、「神はサイコロを振らない」と言ったくらい。それに、これは勝手な直感だけど、量子一つ一つが持つ波動性が時間をまたいでる可能性もあると思う。このことは、僕たちが当たり前に持ってる時間の概念を一旦忘れないと理解できないような気がする
聞き手
ますます分からんわ!で、これが二重スリット実験のすごいところなのね?
解説者
いや、実は違うんだ。電子が波の性質を持つことは実は以前から指摘されていたから。驚くのはこのあとだ
聞き手
・・・
解説者
二重スリット実験で1粒ずつ発射しても縞模様ができることが分かると、今度はある科学者がその電子がどちらのスリットを通ったのか、観測機器を置いて調べることにした
聞き手
右のスリットを通ったのか、左のスリットを通ったのか?ってことね
解説者
そう。そしたら、またもや当時の物理学では到底理解できない不思議な現象を捉えることになった
聞き手
なになに?
解説者
観測をはじめたとたん、干渉縞が消えて、二つの筋だけになったんだ
r8.png
量子を1個ずつ発射して、どちらを通ったか観察すると縞模様が消失した
聞き手
え?さっきまで縞模様だったのに?
解説者
そう。検出カメラを置いただけで。それだけで縞模様が消えて、ボールの二本筋になった
聞き手
へー!驚きがミルフィーユ
解説者
たとえが独特
聞き手
そういうこん言っちょし
解説者
粒子がどちらのスリットを通ったか、人間が観測するという行為をしただけで、電子は粒として振る舞うようになった。観測をやめると、また縞模様が現れる
聞き手
こわ!でも少しわかるかも・・・私も見られてるって分かると姿勢こぴっとするもん
解説者
ほら、最初言ったやつ
解説者
観測するというのはとりもなおさず装置が電子を検出する作業であり、その行為自体が電子の状態に影響しているのではないか、という指摘もあった
聞き手
とりもなおさず笑
解説者
だから今度は、二重スリット実験をもっと複雑にして、すごく意地悪な仕掛けにしたんだ。つまり、量子がどちらのスリットを通ったか、それを突き止める観測をしたかどうかを、あとから判明させるようにしたの。縞模様を作るか作らないか量子に最終決定させてから、観測してたかどうかをそのあとで打ち明けるという感じ
聞き手
『観測してたかどうかは今はわかりません。後から分かるので、先に縞作っといてください、作りたいなら』みたいな?
解説者
そうそう
聞き手
そんなことして神様を怒らせない?
解説者
今のところは
聞き手
私なら激おこ
解説者
その実験でも縞模様ができたり消えたりしたから、まずは観測機器の影響ではないことが分かった。そして世界を驚愕させたのは、そのあとだった。未来に下される答えに量子はいつも正解してたんだ
聞き手
ん?どゆこと?
解説者
『じつは見てました。あなた、さっき右のスリット通りましたね』とか『どっちのスリットを通ったか、今回は観測してませんでした』と判明するのは、量子が縞模様を形成するかしないか決めないといけないタイミングの数ナノ秒後になるように装置が組まれてる。それなのに、どっちのスリットを通ったか観測してなかったときだけ、ちゃんと縞模様を作ってたんだ。まるで未来を分かってたみたいに。これが一体どういうことか・・・
聞き手
こわ!
遅延選択量子消しゴム実験の解説
左側(R01とR02)はどちらのスリットを通ったか観測できなかった時。右側(R03とR04)はどちらのスリットを通ったか観測できた時
(出典:Stigmatella aurantiaca, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)
解説者
未来を知っていたとか、未来から過去を選んでいるとか、そういうことではないかもしれない。どうやら量子にとっては、過去、未来の概念はあまり意味を持たないかもしれない。これが、人類が足を踏み入れてしまった量子の奇妙な世界なんだ。いよいよ時空への理解に人間が手をかけた?実際、量子もつれと量子テレポーテーションも、量子が時間や空間を越えて情報を瞬時に行き来させてる現象だからね
聞き手
完全、置いてかれた!
解説者
まあそれは余談だからいい。二重スリット実験のことは分かったかな?
聞き手
分かったような、分からないような・・・だけど、過去、現在、未来っていう言葉は、たしかに人間が勝手に作ったものにすぎないのかも。愛とか正義って言葉と同じでね
解説者
お!
聞き手
言葉って、いつだって曖昧模糊。でもその言葉の中に正しさを見つけながら私たちは生きてる
解説者
ん?
※会話には、二重スリット実験の一種である「遅延選択量子消しゴム実験」の内容も含みます。
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