両立しない目的間の「妥協形成」としての症状 

両立しない目的間の「妥協形成」としての症状 

Symptom as “compromise formation” between incompatible aims

Ryle “Psychotherapy :A Cognitive Integration of Theory and Practice”は

1982年の出版である。2024年から見ると、42年前の出版である。

アンソニー・ライル(Anthony Ryle)は、認知分析療法(Cognitive Analytic Therapy, CAT)を提唱するにあたり、認知療法と精神分析療法の要素を統合するというアプローチを採用しました。彼は、これら二つの異なる心理療法の有効性を結びつけることで、より効果的かつ包括的な治療法を目指しました。

1. 認知療法の観点

認知療法は、思考や信念が感情や行動に影響を与えるという考え方に基づいています。認知療法は、クライアントが非合理的な思考パターンを認識し、それを現実的かつ適応的なものに変えることで、問題の解決を図ります。アンソニー・ライルは、この認知療法の「思考パターンを再構築する」という実践的な側面をCATに取り入れ、クライアントの現在の問題に焦点を当てる技法として活用しました。

2. 精神分析療法の観点

一方、精神分析療法は、過去の経験や無意識の動機が現在の行動や感情にどのように影響を与えるかに注目します。特に、幼少期の体験や親子関係が成人後の心理的問題にどのように関連しているかを探ります。ライルは、この「過去の経験や無意識の影響を探る」観点をCATに取り入れました。彼は、クライアントの現在の問題行動が過去の体験や対人関係のパターンに由来していることを理解し、それを変化させることを目指しました。

3. 統合の視点

ライルのCATは、認知療法と精神分析療法の強みを活かし、クライアントの問題を多面的に理解し、解決することを可能にする統合的なアプローチです。具体的には、ライルは以下の観点で両者を統合しました:

  • 現在と過去のバランス: CATは、クライアントの現在の問題行動に焦点を当てつつ、その行動が過去の経験や対人関係のパターンからどのように生まれたのかを理解します。これにより、クライアントは現在の問題を解決するための新しい洞察を得ることができます。
  • 実践的な介入と深い理解: 認知療法のように、クライアントに具体的な行動や思考の変更を促す一方で、精神分析療法のように、クライアントの深層心理や過去の影響を探求します。これにより、クライアントは表面的な問題解決にとどまらず、根本的な原因に対処することができます。
  • 個別化された治療計画: CATは、クライアント一人ひとりの特定の問題や背景に応じた個別の治療計画を立てます。これは、精神分析療法の個別性と、認知療法の構造化されたアプローチを組み合わせたものです。

まとめ

ライルのCATは、認知療法の実践的で構造化された技法と、精神分析療法の深層的な理解を統合することで、クライアントが現在抱えている問題を多面的に理解し、効果的に解決するためのアプローチを提供します。この統合により、クライアントは過去と現在の両方の視点から自己を理解し、持続的な変化を達成することができます。

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