引用して解説
認知行動療法小史と各手法の紹介
1960年代初頭に「認知の革命」が出現し、初期には、エリスや、アーロン・ベック、マイケンバウム、マホニーなどは、行動的な手法の限界を指摘した[9]。1970年代には、情報処理と学習に関する研究で著名なアルバート・バンデューラが認知の修正についての最初の影響力のあるテキストを公開し、自らを認知行動的な理論であるとする理論家が増えてきた[9]。
同時代は1920年代から続いた行動主義に対して、1967年にナイサーが『認知心理学』という著作を公開し、新分野に名称を与え形作り、認知心理学が行動主義を引き継いでいった[11]。当時は、行動主義はその行きすぎた傾向において、心という概念を抜きにして、客観的な心理学としての観察が可能であるとしたが、動物の行動を変化させる強化因子である、いわゆる賞と罰を決定する際に、生物学的欲求を満たすわけでもない強化因子が数多くあることや、賞と罰に関係なく子供が言語を獲得することなどについての自己矛盾を無視することができなくなった。[11]。
行動療法や認知行動療法では、従来の精神分析のような高水準の抽象化は行われず、内省によって提供される情報に基づいているため、無意識や防衛機制といった精神分析の前提条件は除外されている[12]。意識的な思考に焦点を当てているということである[3]。論理療法(Rational therapy)論理療法はアルバート・エリスが1957年に提唱し[13]、最初の認知行動療法であるとみなされている[9]。彼の技法による目標は、不合理な信念(イラショナル・ビリーフ)を識別し、論理的な検討(つまり論駁)を通して修正することである[9]。「治療に何年もかける必要はない」と述べ、時間のかかる手法(精神分析)に挑んだ[14]。認知療法(Cognitive therapy)認知療法はアーロン・ベックが開発した。自動思考と呼ばれる、認知上の歪みを修正し、さらにスキーマと呼ばれる捉え方の根底的な部分にも焦点を当てる[15]。
従来の行動と感情だけに焦点をあてたものから、思考や言語といった認知への焦点を加えた[1]。自己教示訓練(Self Instruction Training)ドナルド・マイケンバウムによって1970年代に開発された[9]。認知行動療法という名称が最初に現れたのは、ドナルド・マイケンバウムの著作のタイトルである。問題解決療法(Problem-Solving Therapy)D’ZurillaとGoldfriedが1971年に提唱した[9]。
1980年代に、認知療法と行動療法を、認知行動療法へと積極的に統合したのはイギリスのポール・サルコフスキスであり、彼は強迫性障害の治療に応用した[16]。精神分析の伝統が強迫性障害の治療に過去の記憶の抑圧に原因を求めてうまくいかなかったが、強迫観念に対して理性的な評価を下すための認知療法と、避けている者に徐々にさらす脱感作という行動療法とを結びつけた[16]。
第三世代の認知行動療法
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文脈的認知行動療法ともいう。認知の機能に注目し、マインドフルネスとアクセプタンスを重視しているという共通点があると指摘されている[17]。
マインドフルネス認知療法(MBCT)マインドフルネス認知療法は、瞑想の技法を取り入れ、自動生起する思考にとらわれることなく、あるがままの状態に集中するという訓練である。1979年に仏教的な実践を痛みの患者に応用したマインドフルネスストレス低減法(MBSR)を基として、1990年代にうつ病の治療のためにマインドフルネス認知療法(MBCT)へと変換された。
マインドフルネス認知療法(MBCT)は、1979年に開発されたマインドフルネスストレス低減法(MBSR)を基に、1990年代にうつ病の治療のために適応された心理療法です。MBCTは、瞑想の技法を取り入れ、自動的に生じる思考にとらわれることなく、現在の瞬間に意識を集中させる訓練を行います。このアプローチは、うつ病の再発を防ぐために特に効果的であるとされています。
他にアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)があり、これは受容という面に焦点を当てている。
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、受容という概念に焦点を当てた心理療法です。ACTでは、思考や感情を否定するのではなく、それを受け入れ、価値に基づいた行動を選択することが重要視されます。このアプローチは、クライアントが自分の内面的な経験を受け入れ、より充実した生活を送る手助けをします。
弁証法的行動療法 (Dialectical Behavior Therapy:DBT)弁証法的行動療法は、1980年代から90年代にかけてマーシャ・リネハンが境界性パーソナリティ障害に特化させて技法を開発し、感情が不適切だと感じたなら、正反対の行動をとることや、禅の技であるマインドフルネスという、自分の呼吸や、感情が生じては去っていくまでを行動せずにただ観察することといった、要素を持つ[18]。その著作は、原著名で『境界性パーソナリティ障害の認知行動治療法』Cognitive-Behavioral Treatment of Borderline Personality Disorderである[19]。
マインドフルネス認知療法(MBCT)、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)、弁証法的行動療法(DBT)は、それぞれ異なるアプローチで心の健康を促進するための有効な手段です。これらの療法は、個々のニーズに応じて選択され、心の問題に対処するための強力なツールとなります。