CT15-4多文化心理療法 用語集と確認問題 学習補助

多文化心理療法:学習ガイド

用語集

用語定義

文化的能力:実践者が多文化の状況下で効果的に働くことを可能にする知識、行動、態度、スキル、方針のまとまり (Cross, Bazron, Dennis, & Isaacs, 1989)

文化的自己認識:心理療法士が、自身の文化、価値観、信念、偏見が、他文化のクライアントとの治療関係にどのような影響を与えるかを理解すること。

民族文化的転移:クライアントが、過去の関係における感情や行動パターンを、セラピストとの関係に投影すること。特に、クライアントとセラピストの民族的・文化的背景が異なる場合に起こりやすい。

民族文化的逆転移:セラピストが、クライアントの民族的・文化的背景や、クライアントからの転移に対して、自身の感情や過去の経験に基づいて反応すること。

説明モデル:クライアントが自身の病気、症状、治療についてどのように考えているかを理解するための枠組み。クライアントの文化や信念体系に基づいて、病気の原因、経過、適切な治療法などが異なることを認識する。

文化的定式化:DSM-IV に含まれる評価ツール。クライアントの文化的背景を考慮して、精神疾患の診断や治療計画を立てるために用いられる。

文化的ジェノグラム:家族療法で使用されるジェノグラムを拡張し、家族の文化的な背景や歴史、移民経験、人種的アイデンティティなどを視覚的に表現したもの。

民族心理療法:特定の民族集団の文化や伝統、信念体系に基づいた心理療法のアプローチ。

良心化:パウロ・フレイレが提唱した概念。抑圧されている人々が、自身の置かれている状況や、抑圧の構造を批判的に認識し、自己変革や社会変革に向けて行動を起こすようになるプロセス。

解放の心理学:ラテンアメリカで生まれた心理学の一派。抑圧、社会的不正義、不平等が、人々の精神的健康に与える影響を重視する。

人種的マイクロアグレッション:人種、肌の色、民族性を理由とした、日常的な言動による攻撃。意図的である場合も、無意識のうちに行われる場合もある。

目に見えないナップサック:ペギー・マッキントッシュが提唱した概念。白人や男性など、特権的な立場にある人々が、無意識のうちに享受している利点や特権を指す。

魂の傷:歴史的な抑圧、差別、トラウマなどが、世代を超えて受け継がれ、個人の精神的健康に影響を与えること。

練習問題(簡潔に答えてください)

  1. 多文化心理療法とは何か、2~3文で説明してください。
  2. 心理療法における「文化的感受性」とは何か、例を挙げて説明してください。
  3. 心理療法における「世界観」とは何か、なぜそれが重要なのかを説明してください。
  4. 治療関係において、セラピストとクライアントの世界観が異なる場合、どのような問題が起こりうるでしょうか?
  5. 文化的能力の 5 つの段階を説明し、それぞれの段階におけるセラピストの行動の特徴を挙げてください。
  6. 「人種的マイクロアグレッション」とは何か、心理療法の場面における例を挙げて説明してください。
  7. 多文化心理療法における「エンパワーメント」とはどういう意味ですか?
  8. 心理療法士にとって、自身の「目に見えないナップサック」を認識すること が重要なのはなぜですか?
  9. 文化的ジェノグラムとは何か、標準的なジェノグラムと比較して、どのような利点がありますか?
  10. 多文化心理療法において、スピリチュアリティが重視されるのはなぜですか?

エッセイ問題

  1. 支配的な西洋文化の影響を受けた心理療法の限界について論じなさい。
  2. 心理療法士の文化的自己認識の重要性について、具体的な例を挙げて説明しなさい。
  3. 民族文化的転移と逆転移が治療関係に与える影響について論じなさい。
  4. 多文化心理療法におけるエンパワーメントのアプローチについて、具体的な理論や技法を例に挙げて説明しなさい。
  5. 多文化心理療法の将来における課題と展望について論じなさい。
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