概要
このテキストは、マインドフルネスと受容を認知行動療法(CBT)に統合する取り組みについて論じています。テキストは、マインドフルネスと受容の概念と定義を説明し、マインドフルネスを達成する方法を探求し、マインドフルネスと受容がCBTにどのように統合されてきたかを示しています。さらに、テキストは、マインドフルネスと受容に基づく様々な治療法、例えば、マインドフルネスに基づくストレス軽減(MBSR)、再発予防、弁証法的行動療法(DBT)、受容とコミットメント療法(ACT)、マインドフルネスに基づく認知療法(MBCT)、統合的行動カップル療法(IBCT)について説明します。最後に、テキストは、CBTにおけるマインドフルネスと受容のいくつかの臨床戦略と応用を分析しています。
第11章 認知行動療法におけるマインドフルネスと受容介入 目次
はじめに
近年、認知行動療法(CBT)におけるマインドフルネスと受容介入の活用が広がっています。本章では、これらの概念を定義し、CBTへの統合方法、主要なアプローチ、臨床応用例を紹介します。
定義と概念化
- マインドフルネスと受容: マインドフルネスは、現在の経験に注意を向けること、受容は経験に対してオープンであることを意味します。CBTにおいて、これらは望ましい変化が困難な状況において重要となります。
- CBTへの統合: マインドフルネスと受容は、不適応な行動の代替となり、刺激制御戦略として機能します。
- 歴史的ルーツ: マインドフルネスは東洋の宗教的伝統にルーツを持ちますが、CBTへの統合は世俗化された形で行われています。
- 定義の曖昧さと今後の課題: マインドフルネスと受容の定義や概念化には曖昧さが残っており、一貫した運用上の定義と作用機序の解明が課題です。
マインドフルネスと受容介入の歴史と臨床的ルーツ
- 行動療法の進化: 行動療法は、行動に焦点を当てた第1世代、認知を統合した第2世代を経て、マインドフルネスと受容を重視する第3世代(「第3の波」)へと進化しました。
- 科学心理学におけるマインドフルネス: 1970年代に瞑想の生理学的効果が研究され始め、マインドフルネスへの関心が高まりました。
認知行動療法における様々なマインドフルネスと受容戦略
- 合理的感情行動療法 (REBT): 不合理な思考の特定と修正に重点を置きつつ、無条件の自己受容、他者受容、人生受容も重視します。
- マインドフルネスに基づくストレス軽減 (MBSR): 慢性疼痛やストレス関連障害の治療として開発され、判断せずに感覚に気づく訓練を行います。
- 再発予防: 物質使用の促進要因への対処に焦点を当て、マインドフルネスは衝動に対処するための重要なスキルとなります。
- 弁証法的行動療法 (DBT): 対立するものを統合する弁証法に基づき、受容と変化のバランスを重視します。マインドフルネスは感情制御や対人関係スキルなどの基礎となります。
- 受容とコミットメント療法 (ACT): 経験の回避が苦痛につながると考え、心理的柔軟性を高めることを目指します。マインドフルネスは、思考の文字通りの解釈を減らし、柔軟な対応を促進します。
- マインドフルネスに基づく認知療法 (MBCT): うつ病の再発予防として開発され、反芻的な思考パターンを減らし、感情や経験の回避に対処します。
- 統合的行動カップル療法 (IBCT): パートナーの受容を重視し、関係における否定的な反応を減らすことを目指します。
- その他の応用例: 摂食障害、不安障害、トラウマ、家族問題など、様々な領域でマインドフルネスと受容が活用されています。
臨床応用
- スキルとしてのマインドフルネス:
- 観察する: 注意を払い、気づくこと
- 説明する: 批判的でない言葉で表現すること
- 参加する: 意識を集中させずに活動に没頭すること
- 偏見を持たない姿勢: 判断を下さずに受け入れること
- ワンマインドフルなエンゲージメント: 一度に一つのことに集中すること
- 効果的であること: 有益な行動を選択すること
- 思考に対する感情的な反応を減らす:
- 思考を思考として観察する: 思考を現実ではなく、単なる思考として捉える
- 感情的な経験とその背景を観察する: 一次感情と二次感情を区別し、一次感情に気づく
- 許容する:苦痛な経験を受け入れ、許容する: 回避ではなく、痛みや苦しみを受け入れることを学ぶ
- 自己と他者の受容と検証: 相手の行動や感情を理解し、受け入れる
- 急進的な受け入れ: 人生における困難なこと、不快なこと、苦痛なことさえも受け入れる
- セラピストのマインドフルネスと受容: セラピスト自身がマインドフルネスと受容を実践し、クライアントを効果的に支援する
結論
マインドフルネスと受容介入は、CBTにおいて重要な役割を担うようになりました。今後の研究により、その作用機序や最適な活用法がさらに解明されることが期待されます。