「saltation(跳躍)錯視(VSI)」
VSIは、どのような錯視なのかというと、光刺激(光の点灯)が条件によっては、実際の光刺激が行われた位置や順番ではなく、都合のいいように脳が解釈してしまうという内容で、例えば周辺視において素速く3回の光刺激を行うとして、1番目と2番目は同じ位置で続けて行い、3番目を異なる位置で光刺激を行うと、なぜか2番目がホップして、1番目と3番目の中間位置に知覚されてしまうというものである。
この現象は、もともとは触覚において発見された歴史がある。前腕の3つの位置に分けて複数回皮膚を刺激すると、皮膚上を均等な間隔で順にタッピングされたように感じるという実験結果が1970年代前半に報告され、この現象はウサギが皮膚上をホッピングしているという比喩から、「皮膚ウサギ効果」(CRE)と命名された。VSIは、このCREを簡略化した視覚版の錯覚である。
VSIにおいて、2番目の光刺激が元の位置からホップして、1番目と3番目の光刺激の間の位置に知覚されるということは、脳は3番目の光刺激を知覚した後に、2番目の位置を知覚していることを意味し、それは現実とは異なる順番で知覚しているということを示すという。その理由は、脳における予測や、動きの方向に対する位置ずれなどが考えられており、2000年代に入ってからは、ポストディクションの概念も仮説に加えられてきたとする。
周辺視領域に3つの光が短い間隔で次々に提示されると、目に映る光の位置がさまざまに変化しても、2番目の光は、1番目と3番目の光の間に並んで知覚される傾向があることが確認された。これは光刺激の間隔がゆっくりだと起きないため、間隔が短い場合は3つの光刺激を1つの出来事としてまとめ、単純でもっともらしい解釈を脳で作っていることが考えられる。