自発的隷従

自発的隷従の日米関係史 日米安保と戦後(岩波書店) 松田 武

日米関係を「対等な関係」とは程遠いものにさせている原因は何なのか。戦後から今日に至る日本政府の「対米追随」は、どのようにして「日本が望んだ」ものとされていったのか。日米安保体制の歴史的構造を多角的な観点から明らかにし、日米関係の新たな構図を描き出す。ジョン・ダワー推薦!

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対米依存の起源――アメリカのソフト・パワー戦略 (岩波現代全書) 松田 武

なぜ日本はこれほど深くアメリカに依存してしまっているのか。なぜそこから抜け出すことができないのか。その秘密は、戦後日本における文化交流事業と政治の関係にあった。リベラルな知識人がアメリカのソフト・パワーの「落とし穴」にはまり込んでいく歴史を、「知」と「権力」と「カネ」から描き出す。

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戦後日本におけるアメリカのソフト・パワー: 半永久的依存の起源(岩波書店) 松田 武

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対米従属の起源 「1959年米機密文書」を読む 2019年 大月書店 谷川 建司 (翻訳), 須藤 遙子 (翻訳)

1950年代のアメリカによる対日文化工作の実態を報告した機密解除文書を翻訳したもの

アメリカが日本に行った「文化工作」の実態を描いています。目的の1つは、日本人にアメリカへの親近感を持たせ、日本にアメリカ流の民主主義を根付かせること。そしてもう1つは日本を共産主義の防波堤とするため、日本人に反共の意識を植え付けることです。つまりは、日本をアメリカにとって都合のいい国にすることです。目指すのは、編訳者の一人である須藤氏の言葉を借りれば、「日本がアメリカに『主体的に従属』する」状態です。

それがまぁ、見事にうまくいったことに、いっそ感心させられました。もちろんその工作は、「アメリカ」を前面に押し出して行うような稚拙なものではありません。むしろそのことが明るみに出かけたら、さっさと手を引くことすらします。講演会や映画の内容を通じ、じわじわ教化するやり方がメインです。一見迂遠なやり方のようですが、本文中の言葉を借りれば「他の影響力のある市民に伝達する能力のある者たち」を積極的に取り込むので、実は効率が良いんですね。特に大学や高校などの教員を取り込む手法には、呆然とします。彼らは頭の柔らかい生徒・学生に、自分の思想を語るわけですから。

でも気づかずに利用されていたなら、まだましでしょう(もちろんそれで許されるわけではありませんが)。問題なのは、積極的にアメリカに利用された日本人がいたこと。例えば映画の製作費への支援欲しさに、USIA(アメリカ広報・文化交流庁、いわば文化工作の親玉)が気に入りそうな内容のものが作られた可能性は否定できないそうです。それは当時の話ですが、その傾向は間違いなく今も続いているのでしょう。

でもこの本の大部分を占める2つの報告書を書いたマーク・メイの言葉の端々ににじみ出る、日本人を格下の存在と見る意識には、脱力させられます。例えば、「日本人のなかにはかなり非現実的ながら『対等』なパートナー関係を志向する者がいる」などの言葉です。侮蔑や蔑視ですらなく、ただ単に「格下」なのです。

それを思えば、積極的に利用されている場合ではないはずですよね。日本国憲法はかなり早い段階でアメリカにとって邪魔になったようで、その結果生まれたのが須藤氏の言葉を借りれば、「親米政党の自民党がアメリカによる『押し付け憲法論』を主張。一方の社会党/野党がその憲法を守ろうとする親米・反米の倒錯状態」なわけです。改憲を主張する人には、まずはこの本を読み、「自分はアメリカに利用されていないか」を考えてほしいです。

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