持久筋と瞬発筋に対応する持久脳と瞬発脳

筋肉には持久筋と瞬発筋がある。ということは、筋肉を作動させている脳神経系も、持久系と瞬発系があるのではないだろうか。
持久系脳と瞬発系脳と区別して考えると何となくイメージがわくのではないか。
この二つの脳に対して同じ対応をしていたら能率が悪い。
二つの脳に応じて、それぞれに得意不得意があるわけだ。

瞬発系脳は俳句などに向くだろう。ユーモアなどもこの系統かもしれない。
持続系脳は長編小説などに向くだろう。音楽でも、演奏に40分かかるようなものは、持続脳が活躍しているだろう。

男女で持久脳と瞬発脳の組み合わせの場合、うまくいくものだろうか。足りない部分を補い合ってかえってうまくいくものだろうか。それとも、理解しあえないで、終わるのだろうか。

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持久力の赤身魚、瞬発力の白身魚

生物の筋肉には赤い色の『遅筋』と白い色の『速筋』がありますが、持久力が高い『遅筋』を持つのが赤身魚です。回遊魚は泳ぎ回るための持久力が必要なので赤身魚が多く、マグロ、カツオ、サバ、アジなどが代表です。

一方、白身魚は瞬発力が出る『速筋』を持っています。白身魚は普段は回遊魚ほど泳ぎ回らず、じっとしていることがあるものの、餌を捕まえたり、敵から逃げたりするのに瞬発力が必要なのです。タイ、ヒラメ、タラ、フグなどになります。
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人間の場合も、陸上選手の筋肉は、短距離選手の筋肉と長距離選手の筋肉では質に違いがあるだろう。

短距離走と長距離走では、筋肉の硬さ(伸び縮みしにくさ)や速筋線維(白筋)と遅筋線維(赤筋)の割合が異なります。

短距離走では筋肉が硬い方が、長距離走では筋肉が軟らかい方が成績が良い。
硬い筋肉は短時間で効率よく力を伝えられる性質があるため、瞬発力を必要とする短距離競技に向いている。
軟らかい筋肉は少ないエネルギーで動かせるため、持久力が求められる長距離競技に向いている。

短距離選手と長距離選手で速筋線維(白筋)と遅筋線維(赤筋)の割合が大きく異なることが知られている。
一般に、遅筋線維は速筋線維よりも、安静時、および収縮時において硬いことが分かっている。
筋肉を硬くするには筋トレ、軟らかくするにはストレッチというように、競技に合わせたトレーニングが必要である。
短距離走では、大臀筋やハムストリングス、大腿四頭筋、腓腹筋やヒラメ筋などの筋肉を鍛える。
長距離走では、大腿四頭筋(太ももの前面にある筋肉)を鍛える。
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短距離走は筋肉が硬い方が、長距離走は軟らかい方が成績が良い
「αアクチニン3遺伝子」にはRR型、RX型、XX型の3種類があります。RR型とRX型を持つ人は瞬発系の能力に優れ、速い短距離選手になれる可能性が高い一方、XX型の人はどんなにトレーニングを積んでも100m走で10秒4~5という記録が限界というデータがあります。2016年リオデジャネイロ・オリンピックの男子参加標準記録は10秒16。つまり、RR型やRX型が必ずしも標準記録を切れるわけではありませんが、少なくともXX型の選手は100m走でオリンピックに出場がかなわないことがわかります。

「αアクチニン3遺伝子」の型は父親と母親の遺伝子の組み合わせで決まります。仮に父親も母親も速いスプリンターで、どちらもRX型だとしたら、生まれてくる子どもはRR型、RX型、XX型のいずれかです。もし、3つのうちのXX型であれば、その子どもは両親の足の速さを受け継がず、スプリンターとしては大成しない可能性が高いでしょう。

興味深いことに、この結果は100m走や200m走には当てはまりますが、400m走には当てはまりません。つまり「αアクチニン3遺伝子」は瞬発系の中でも特に短い瞬発系競技に関わっているわけです。この研究成果は2014年に論文発表しました。

「αアクチニン3遺伝子」は細胞の核にあるDNAですが、私たちは並行してミトコンドリアDNAの研究もおこなっています。

双子を対象とした疫学研究において、持久系の運動能力の約50%は遺伝要因の影響を受けること、さらに父親よりも母親の遺伝の影響を受けるとされています。そこで私たちは「母系遺伝するミトコンドリアDNAの個人差が持久系に関係する」という仮説を立てて研究を進めました。その結果、ミトコンドリアDNA多型は持久系だけでなく瞬発系の能力にも影響することが分かりました。また、ミトコンドリアDNAの型によってミトコンドリアの以外の機能が変わるということも、最近の研究では常識になりつつあります。

例えば、瞬発系の能力に関連する「F」タイプは持久系の能力に関連する「G」タイプよりミトコンドリアの機能が低く、糖尿病になる人が多い可能性を発表しています。その代わり酸素を使わないでエネルギーを産生するシステムが発達しており、瞬発系に強い。これはアスリートのパフォーマンスを決める要因が疾病にも関係するとわかった興味深い研究で、米国の学術誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス」にも掲載されました。

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