問題解決療法(PST)まとめ 2025.3.16-2 あまりに難解な文献だったので、個人的に整理してみた。
●問題解決療法(PST)は、ストレスや心理的な困難に直面した際に、適応的な問題解決スキルを身につけることを目的とする。
・ストレスの多い人生の出来事を「挑戦(challenge)」または「解決すべき問題(problem to be solved)」と認識する。
・具体的には「ADAPTアプローチの具体化・簡略化」または「14のトレーニングモジュール」を実行する。
・「姿勢」と「スキル」を学ぶ。
●ADAPTアプローチ
A = Attitude(姿勢):問題を解決しようとする前に、個人は問題に対して、そして自分の問題解決能力に対して、前向きで楽観的なポジティブな態度を採用します。
D = Define(現実を正確に把握する):このステップでは、個人が前向きな態度を採用した後、関連する事実を収集し、目標達成を妨げる障害を特定し、現実的な目標を設定します。
A = Alternatives(代替案):適切に定義された問題に基づいて、個人は障害を克服し、目標を達成するためのさまざまな代替案を生成します。
P = Predict(予測):代替案のリストを生成した後、個人は各代替案の肯定的および否定的な結果を予測し、問題解決の目標を達成する可能性が最も高いもの、コストを最小限に抑え、利益を最大化するものを選びます。
T = Try out(試してみる):個人が解決策を選択した後、その解決策を実生活で試し、その効果を検討するよう求められます。もし結果に満足すれば、問題は解決され、自信を付けます。もし満足できなければ、再び「A」のステップに戻り、より効果的な解決策を探します。
●ADAPTアプローチの具体化・簡略化
・ポジティブに取り組む。自己制御が大切。
・現実を把握する 客観的状況
・自分を知る 性格、リソース
・目標は何か明確にする 優先順位も
・希望・願望(・・したい。prefer)と絶対条件(・・ねばならない。must)を区別する。
・おもな障害を知る 複数あげて関係を考える
・対策案を複数考える。それらを評価して、選択する。 たくさんの可能性を検討する。
・試してみて、結果を検討して、修正して、さらに試し、解決するまで続ける。
●大切な3つの要素
・問題解決の準備・姿勢(Problem-Solving Orientation)問題に対する認識や態度(ポジティブ/ネガティブ)
・問題解決スキル(Problem-Solving Skills)問題を明確化し、解決策を考え、評価・実行する能力
・自己制御(Self-Regulation)問題解決スキルを適切に適用し、長期的に維持する力
*適切な問題解決スキルを持つことで、ストレスの影響を軽減し、ポジティブな心理状態を維持できるなど、3つは相互に支えあう。
●5つの姿勢
ポジティブな姿勢 問題を「解決可能な挑戦」と捉え、前向きな姿勢を持つ。
ネガティブな姿勢 問題を「脅威」として捉え、解決を困難と感じる。
合理的な姿勢 系統的・計画的に問題を分析し、最適な解決策を選択する。
衝動的/不注意な姿勢 即興的で計画性のない解決方法を選び、適切な対処ができない。
回避的姿勢 問題を先送りし、解決を他者に依存する傾向がある。
・ポジティブ(Positive Problem Orientation)
問題を「挑戦(challenge)」として評価する(すなわち、利益や成長の機会として捉える)。
問題は解決可能であると信じる(ポジティブな結果期待、つまり「楽観主義」)。
自分が問題を成功裏に解決できると信じる(「問題解決の自己効力感」)。
成功する問題解決には時間、努力、忍耐が必要であると認識する。
問題を回避せず、迅速に解決に取り組むことを自らに課す。
・ネガティブ(Negative Problem Orientation)
問題を心理的、社会的、行動的、または健康面の幸福に対する「実際よりも」重大な脅威とみなす。
自分が問題を成功裏に解決できるかどうかを疑う。
日常生活の問題に直面したときに感情的に動揺する(すなわち、低いフラストレーション耐性と不確実性耐性)。
・合理的(Rational Problem Solving)
問題の定義と形成(Problem Definition and Formulation)
代替解決策の生成(Generation of Alternative Solutions)
意思決定(Decision Making)
解決策の実施と検証(Solution Implementation and Verification)
・衝動的/不注意(Impulsivity/Carelessness Style)
狭く、衝動的で、不注意で、性急かつ不完全であることを特徴とする機能不全的な問題解決パターン
わずかしか代替解決策を考えず、しばしば思いついた最初のアイデアに衝動的に従う
拙速かつ不注意に、体系的ではない方法でざっと見てしまい、解決策の結果を適切にモニタリングせず、不十分に評価する
・回避(Avoidance Style)
先延ばし、受動性または無行動、依存を特徴とするもう一つの機能不全的な問題解決パターン
できる限り問題解決を先延ばしにし、問題が自然に解決するのを待ち、さらに自分の問題を他者に解決してもらおうとする傾向
●よくある障害
新規性
曖昧性
予測不可能性
相反する要求
パフォーマンススキルの不足
リソースの不足(能力、時間、資金、空間、人材、相談相手)
個人特性
集団特性
●ストレス・行動・結果の相互関係
・間違った対処行動と否定的結果の悪循環
精神病理の症状は、多くの場合、非効果的で適応不全的かつ自己破壊的な対処行動として理解でき、それらがさらに心理的・社会的な否定的結果(例:不安、抑うつ、低い自尊心、対人機能の障害)を引き起こす。この悪循環を防止する。
・ストレスの3つの主要変数の相互関係
ストレス(Stressful Life Events)
感情・姿勢(Emotional Stress/Well-Being)
対処行動(Problem-Solving Coping)
この3つが相互に原因・結果として関連している。
たとえばストレスは問題解決能力に負の影響を与える。だから些細なことを積極的に解決する。
非効果的な問題解決(ineffective problem solving) → 日常的な問題が増加する。→問題解決能力が低下し、姿勢はネガティブになる。
効果的な問題解決(effective problem solving) → 日常的な問題が減少する。→問題解決能力が向上し、姿勢はポジティブになる。
些細な出来事と幸福は関係が大きい。些細な出来事を解決できればストレスが軽くなり、重大事件も起きにくくなる。
・ストレスの多い人生の出来事(Stressful Life Events)の2つの主要なタイプ
1.重大な否定的出来事(Major Negative Events)
2.日常的な問題(Daily Problems)→こちらの対処をおろそかにしない。
*二つは相互に関係して誘因となっている。
*例えば、離婚という重大な否定的出来事は、多くの新たなストレスの多い問題(例:支払い困難、子どもの世話の問題、新しい人間関係の構築)を生じさせることがある。逆に、未解決の日常的な問題が積み重なる(例:夫婦間の対立、仕事上の問題、過度の飲酒)ことで、最終的に離婚を引き起こしたり、それに寄与したりする可能性がある。
*例えば、失業のような重大な否定的出来事は、個人にとって多くの新たな日常的な問題(例:請求書の支払い困難、仕事探し)を引き起こす可能性が高い。逆に、職場での未解決の日常的な問題が積み重なる(例:業績目標の未達成、同僚との対立、遅刻の繰り返し)と、最終的に解雇または自主退職による失業を招く可能性がある。
*未解決の日常的な問題の蓄積が、重大な否定的出来事の数よりも幸福に対してより大きな負の影響を与える可能性がある。
*PST(問題解決療法)において、重大な否定的出来事によって引き起こされる可能性のある日常的な問題を特定し、それらの日常的な問題を解決することに焦点を当てることが重要である。些細な問題も解決すれば助けになる。
*ストレスの多い人生の出来事は問題解決能力とパフォーマンスに負の影響を与え、問題解決能力の低下が幸福に負の影響を与える。ストレスも問題だが、ストレスによって能力低下することも問題である。
●PSTの14のトレーニングモジュール(PST Training Modules)
・このモジュールの目標
「自分はやればできる」姿勢を持つ
問題は解決できると信じる
自部の内部の自己破壊的な感情のコントロール
明確な現実把握
代替解決策を生み出す
意思決定能力の改善
・5つの姿勢を念頭に置く
ポジティブを向上させる
ネガティブを減少させる
合理的を養う(かなえられない願望は減らす)
回避を減少させる
衝動的/不注意を最小限に抑える
・14のモジュールの中で役立つものを活用する。
1.初期構築
- ポジティブな治療的関係を築く。
- 楽観的な態度を促進する。
- 導入としてPSTの全体的な構造と合理性の理解。
2.アセスメント
- 生活でのストレスを些細なものまで明確にする。
- 成育歴、現在状態の確認、背景となる価値観、必要に応じて心理検査
3.効果的な問題解決を妨げる自分の内部の障害
- 自分の意識の限界について知る(例:「マルチタスク」の困難さ、特にストレス下で)。
- 集中、マルチタスク、我慢、持続を促進する方法について:(a)「外部化」「視覚化」(例:アイデアリストを作成する);(b)「簡素化」(例:複雑な問題をサブ問題に分解する)など。
- 自己否定的、自己破壊的な信念がないか。
4.解決への姿勢:自己効力感の促進
- ポジティブな信念を持つ。「やればできる」「できるまであきらめない」
- 自己効力感を高める。例えば、問題を解決し成功した状況を明確にビジョンする。
5.問題を認識する。何が問題なのか明確にする。
- 問題が発生した時にそれを認識する能力を高める。
- 問題を明確に言語化する。問題相互の関係を明確にする。
- 感情、非効果的な行動、特定の思考を問題の存在の手がかりとして使用する。
6.姿勢:問題を挑戦として捉える
- 問題を挑戦として捉える。積極的に取り組む。問題解決のメリットを明確に意識する。
7.感情の使用と管理
- 感情の大切さを理解する。自分の感情をモニターする。
- 感情を問題解決過程に活用する方法(例:問題の存在を知らせる手がかりとして、モチベーションを促進する)や、感情を管理する方法(例:認知再構成技法、リラクゼーション演習)。
8.STOP & THINK!
- 衝動的または回避的な傾向を抑制するためにSTOP & THINK技法(例:赤いSTOPサインや信号を視覚化して「止まる」ことを促し、その後「考える」ことを問題解決モードで行う)。
9.問題の明確化
- 問題の性質をよりよく理解する(例:その人にとってなぜそれが問題であるのか)。現実的な問題解決の目標と目的を設定する。
- prefer(したい)とmust(ねばならない)の区別を意識する。
10.代替案の生成
- 問題に対して広範囲で多様な解決策のアイデアを創造的に生み出す。様々なブレインストーミング技法を使用(「多いほど良い」)。
11.意思決定
- 効果的な意思決定を行うために(a)行動の結果を予測し、(b)費用対効果分析を行う。
- 複数の対策の優先順位を考える。
12.解決策の実行と検証
- 個人が解決策の計画を(a)効果的に実行し、(b)その結果をモニターし、(c)その効果を評価する。(d)問題解決の過程と実際の成果の成功において自己肯定感強化を行う。
13.指導付き練習
- リハーサル。ロールプレイ。
14.必要時に思い出して検証
- 生活の中で、以上を短時間で全体的に思い出し検証し、認知や感情、行動に反映する練習をする。
●補助的トレーニング戦略の使用
講義的指導(例:特定の問題解決原則を教える)
コーチング(例:問題に対する可能な代替案を口頭で促す)
モデリング(例:さまざまな問題解決原則を適用する特定の方法を示す)
シェーピング(例:徐々に難易度を上げたステップでのトレーニング)
リハーサル(例:実際の問題に対して問題解決演習を行う)
フィードバック(例:修正的な評価を提供する)
積極的強化(例:クライアントの努力を称賛する)
●「問題焦点の目標」(問題のストレスを最小化する)と「感情焦点の目標」(感情的な苦痛を最小化する)の両方を使用すること