早まり続ける女の子の思春期

早まり続ける女の子の思春期、なぜ? 早すぎる子の困難と対処法は

 思春期が始まる平均的な年齢は、20世紀以降、下がり続けており、中には6〜7歳から胸の発達が始まる女の子もいる。こうした早い時期からの生殖機能の発達は、女性の体と心の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があると専門家は言う。

 世界的に女の子の間で、思春期が始まる平均年齢が、1977~2013年の間に10年ごとに3カ月ずつ早まっていることが、2020年に医学誌「JAMA Pediatrics」に掲載されたレビュー論文で示されている。つまり、この傾向が今も続いていれば、思春期が合計で1年以上も早まっていることになる。女の子の場合、思春期の最初の兆候は乳房の成長であり、月経の始まり(初潮)はそのあとに起こる。

 2024年5月29日付けで医学誌「JAMA Network Open」に掲載された新たな研究によると、米国では、乳房の成長と月経のいずれも始まる時期が早まっているという。1950~2005年の間に米国で生まれた女性7万1341人のデータからは、初潮を迎える年齢が早まり、生理周期が規則正しくなるまでにより長い時間がかかるようになっていることがわかった。同研究で対象となった55年間で、早い時期(11歳未満)に初潮を迎える人の割合はほぼ倍増し、16%に達した。

「これは十分な証拠に裏付けられた世界的な現象です」と、米ブラウン大学ウォーレン・アルパート・メディカルスクールの小児科准教授リサ・スウォーツ・トポー氏は言う。このような現象が起きている理由については、現時点では「わかっていることよりも疑問の方が多い」状態だと、氏は述べている。「多くの異なる要因が重なった結果であり、全体に関わる要素としては、過去200年における世界の変化が挙げられるでしょう」

 年齢にかかわらず、思春期が始まるきっかけとなるのは、脳の視床下部による「性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)」の分泌だ。GnRHは脳下垂体を刺激して黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンを分泌させ、思春期の開始を促す。

 女の子の場合、これら2種類のホルモンが卵巣にシグナルを送ることで、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌が始まり、それが乳房の発達、陰毛の発生、月経の開始、体型の変化につながる。

 通常よりも早くから思春期が始まると、健康への長期的な影響が懸念されるほか、「子どもたちが親の予想よりも早くティーンエイジャーのような外見になったり、そうした振る舞いをするようになったりすることがあります」と、米インディアナ大学ブルーミントン校心理・脳科学部門の心理学者ナターシャ・チャク氏は言う。

 その結果、「親は自分の予想よりも早い時期に、体の変化について子どもたちと話し合う必要が出てくるもしれません」(参考記事:「女性のADHDが増えている、男性と異なる気づかれにくい特徴とは」)

思春期が早まる原因
 これはさまざまな要因が関係する問題だと、専門家は言う。まずひとつには、1970年代以降、肥満の児童の割合が増えていることが挙げられる。一部の研究では、女子の「思春期早発症」(通常の範囲より早く始まる思春期)と肥満との関わりが指摘されている。

「肥満はインスリン、インスリン様成長因子1(IGF-1)、レプチンといったさまざまなホルモンの血流への放出と関連しています」と、米コロンビア大学アービング医療センターの小児科准教授アビバ・ソファー氏は言う。(参考記事:「食欲を左右する7つのホルモン、自分でコントロールするには」)

 これらのホルモンは食欲や満腹感、体脂肪の蓄積などに影響を与えるほか、 思春期のタイミングを変化させる可能性がある。

 また、肥満の女子は、通常体重の女子よりもエストラジオール(エストロゲンの一種)の濃度が高いことが研究でわかっており、これが乳房の発育や思春期の早期化に関わっていると推測される。

 子どもたちの食事の質もまた、何らかの影響を及ぼしていると考えられる。特に果物や野菜が少なく、動物性タンパク質や高度に加工された食品が多い食事は、「エストロゲンなどの性ホルモンの濃度が高くなることと関連があります」と、米シンシナティ小児病院医療センターの小児科教授フランク・ビロ氏は指摘している。(参考記事:「「超加工食品」でたばこ並みの依存性が判明、渇望や禁断症状も」)

 事実、中国の研究者らが3種類の食事(伝統的な食事、不健康な食事、高タンパクの食事)を比較した研究では、スナック菓子、デザート、揚げ物、ソフトドリンクを多く含む「不健康な食事」の摂取は、女子の思春期早発症と関連があることが示された。

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