兵庫県の斎藤元彦知事が、内部告発文書を「うそ八百」と断じた記者会見から、まもなく1年。文書内容の真偽を調べてきた県議会調査特別委員会(百条委員会)は、曲折の末、文書の一部の真実性を認めた。
「業務時間中に、うそ八百含めて、文書を作って流す行為は公務員失格です」。昨年3月27日の記者会見で、斎藤知事は文書の作成者が元西播磨県民局長と明言した上で、こう言った。
この内部告発をめぐり、県議会は当初、斎藤知事に第三者委員会による調査を求めていた。県の内部調査で済ませようとしていた斎藤知事は第三者委の設置を余儀なくされたが、行程表を明確にしないなど、消極的な姿勢も見せていた。
そこで最大会派の自民党と、立憲民主党の県議らが属する「ひょうご県民連合」が主張したのが、第三者委だけでは良しとせず、強い調査権限を持ち、地方議会の「伝家の宝刀」とも呼ばれる百条委の設置だった。第2会派の維新や公明党は反対したものの、賛成多数で6月に百条委の設置が決まった。
告発者の元西播磨県民局長が7月、「死をもって抗議する」とのメッセージを残し、自殺とみられる形で亡くなると、空気が一変した。
その後、斎藤知事が告発の存在を知った3月に「徹底調査」を部下に指示したことや、片山安孝・前副知事が元県民局長を「告発者なのか」と問い詰めたことなど、県による公益通報者保護法違反の疑いが次々と発覚し、知事への批判が急速に強まった。
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斎藤元彦兵庫県知事の疑惑告発文書問題で、県議会調査特別委員会(百条委)は4日、パワハラ疑惑などを挙げた文書内容に「一定の事実が確認された」とする最終報告書を公表した。文書を公益通報と扱わず告発者を特定した対応は「公益通報者保護法に違反している可能性が高い」とし、職員への叱責は「パワハラと言っても過言ではない不適切なものだった」と認定した。5日に議会へ提出する。
県政を揺るがした問題の端緒となった文書が昨年3月、関係者に配られてから1年。百条委は関係者の証人尋問を重ねた末の総括で、文書を「うそ八百」「真実相当性がない」とした斎藤氏に説明責任を果たすよう迫った。公益通報対応の違法性やパワハラを否定してきた斎藤氏の姿勢、認識が改めて問われそうだ。
百条委は報告書で、県西播磨県民局長だった男性が配った文書の疑惑7項目のうち5項目で「一定の事実」を認定した。
百条委は昨年6月の設置後、斎藤氏や県幹部らの尋問や全職員アンケートを実施。議会の不信任決議を受け失職し、知事選で再選された斎藤氏の疑惑を検証してきた。
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兵庫県百条委の報告書「総括」全文 「混乱と分断、憂うべき状態」
兵庫県の斎藤元彦知事らを内部告発した文書の真偽などを調べてきた兵庫県議会調査特別委員会(百条委員会)が4日、調査報告書を全会一致で決定した。報告書の最後に記された「総括」は次の通り。(原則は原文のまま。一部の固有名詞は●●にしています)
調査結果のとおり、調査項目のうち、「令和3年の知事選挙における県職員の事前選挙活動等について」、「次回知事選挙に向けた投票依頼について」は文書の真偽について事実確認ができなかったが、以下の項目については一定の事実が確認された。
「●●理事長ご逝去に至る経緯について」は、片山氏から副理事長解任を伝えられた●●理事長が憤りを覚えていたことが認められる。よって、公社や外郭団体の再編や人員削減において、憶測や不信感が生まれないよう、対象団体の状況を公平公正に判断し、当事者をはじめ関係者に十分な理解を得る努力を怠ることのないように求める。
「知事が贈答品を受け取っていることについて」は、PR等でなく斎藤知事個人として消費していたと捉えられても仕方がない行為もあったと言わざるを得ない。昨年12月11日発表の「県民の信頼確保に向けた改善策の実施」において、一定の措置が講じられているが、受け取らない一定の基準を客観的に示すことや接待対応についてのルールの明確化も図るべきである。
「知事の政治資金パーティー実施にかかるパーティー券の購入依頼について」は、片山氏の依頼により経済界に影響力のある県信用保証協会理事長が疑念を抱かれる行動をとっていたことは否めず、一般職だけでなく役員も含めた政治活動や選挙活動に関わる倫理規程等を定めることが必要である。
「阪神・オリックス優勝パレードにかかる信用金庫等からのキックバックについて」は、資金調達が難航し、パレード後も継続して資金調達をする特異な状況に追い込まれていたことが認められるため、県が利害関係のある企業団体に寄付金や協賛金を依頼するにあたっては、行政運営に不信感を抱かれることのないよう細心の注意を払うことを求める。また、刑事告発されている背任容疑について、県関係者が起訴され有罪となる事態となった場合は、斎藤知事自らの管理・監督責任を重く受け止め対処することを求める。
「知事のパワーハラスメントについて」は、「パワハラを受けた」との証言は無かったものの、パワハラ防止指針が定めるパワハラの定義である「①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの」に該当する可能性があり、パワハラ行為と言っても過言ではない言動があった。前述の「県民の信頼確保に向けた改善策の実施」において、一定の措置が講じられているが、知事、副知事などの特別職を含む管理職等へのアンガーマネジメント研修の実施など、さらに踏み込んだ対策に取り組むことを求める。
公益通報者保護については、元県民局長の文書は公益通報者保護法上の外部公益通報に当たる可能性が高く、県の初動は、文書内容の調査をせずに通報者の特定を行うなど、不適切な対応に終始しており、現在も体制整備義務違反の疑いが指摘されている。初動対応のほかにも、調査方法や3月27日の記者会見、公益通報者保護法に対する関わり方ついても問題なしとはいえない。
この度の兵庫県の対応は、組織の長や幹部の不正を告発すると、告発された当事者自らがその内容を否定し、更に通報者を探して公表されたうえ、懲戒等の不利益処分等により通報者が潰される事例として受け止められかねない状況にある。
今後は、知事を含めた幹部職員が公益通報者保護法に対する理解を深めるとともに、組織内の不正行為や違法行為に関する告発に対しては、常に公益通報の可能性を念頭に対応することが不可欠である。さらに、外部公益通報に対応できる体制づくりを進めるとともに、告発内容の調査に当事者は関与しないこと、通報者探索及び範囲外共有等は行わないことの明確化が必要である。
●●氏による元県民局長のプライバシー情報の漏洩(ろうえい)については、告発者潰しを企図していたと言われかねない状況がうかがえる。弁護士による調査の結果を速やかに公表するとともに、県として刑事告発も含め、適切かつ早急な対応を求める。
知事は、3月27日の記者会見で元県民局長の文書を「事実無根」、「うそ八百」と評したが、約9カ月に及ぶ本委員会の調査により、文書には一定の事実が含まれていたことが認められた。
今回の文書問題を振り返ると、文書に記載の当事者である知事や幹部職員による初動対応や内部公益通報後の第三者機関の検討、元県民局長の処分過程など全体を通して、客観性、公平性を欠いており、法令の趣旨を尊重して社会に規範を示すべき行政機関の行うべき対応としては大きな問題があったと断ぜざるを得ない。
最後に、斎藤知事におかれては、本報告書の期するところを重く受け止め、兵庫県のリーダーとして厳正に身を処していかれることを期待する。また、文書問題に端を発する様々な疑惑によって引き起こされた兵庫県の混乱と分断は、いま、憂うべき状態にあることを真摯(しんし)に受け止めなければならない。これを脱却し、一刻も早く解消するために、県民に対して過不足のない説明責任を果たすとともに、先導的かつ雄県の名にふさわしい進取の気質に富んだ兵庫県政を取り戻すことを切に願うものである。
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兵庫県の斎藤元彦知事らが内部告発された問題で、県議会調査特別委員会(百条委員会)は4日、調査報告書を全会一致で決定した。元西播磨県民局長(故人)に対する「告発者捜し」や懲戒処分を「公益通報者保護法違反の可能性が高い」と結論づけ、内部告発判明後の斎藤知事らの一連の対応を「客観性、公平性を欠き、行政機関の対応としては大きな問題があった」と厳しく批判した。報告書は5日の県議会本会議に提出する。
報告書や提言の内容に法的拘束力があるわけではない。ただ、県議会議員は、知事と同様に選挙で選ばれている。この「二元代表制」のもと、地方自治法に基づいて設置され、県議会議員が委員を務める百条委が下した判断は軽くない。
斎藤知事は内部告発の発覚から約2週間後の昨年3月下旬の記者会見で、元県民局長の告発について、調査をしていないのに「うそ八百」と批判。告発者捜しなどの対応に関しても「問題ない」と繰り返し主張してきたが、百条委はいずれも受け入れなかった。
百条委は昨年6月に設置され、元県民局長が告発した斎藤知事らの「七つの疑惑」や、県の対応が公益通報制度に照らして適切だったか否かを調査してきた。疑惑について斎藤知事は「誹謗(ひぼう)中傷性が高く、真実相当性が認められない」と主張してきたが、報告書は総括として「一定の事実が確認された」と認定した。
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百条委員会の調査の「総括」
●内部告発に対する知事らの一連の対応
は客観性·公平性を欠き、社会に規範を
示すべき行政機関として大きな問題
●知事らが告発内容を自ら否定し、通報者
を捜して公表し、懲戒処分などで通報者
がつぶされる事例ととられかねない
●前総務部長による個人情報の漏洩は、
告発者つぶしを企図したと言われかね
ない
●知事には報告書を重く受け止め、厳正に
身を処すことを期待。県の混乱と分断は
憂うべき状態と真摯に受け止めるべきだ
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内部告発された「七つの疑惑」の判断
一定の事実、是正を要請
●県職員へのパワハラ
●贈答品の受け取り
経緯が不自然、捜査当局の判断を注視
●優勝パレードの協賛金集め
臆測も含まれるが一部は事実
●前副知事から部下の解任を通告された
財団法人理事長の心理的ストレス
●前副知事がパーティー券の購入で圧力
確認できず
●県幹部の2021年知事選の事前運動
●県幹部を随行させた知事による投票依頼
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県職員へのパワハラについては、執務室や出張先での厳しい叱責(しっせき)など告発どおりの出来事があったと指摘。国のパワハラ防止指針をふまえると、「パワハラ行為といっても過言ではない言動があった」とし、知事ら県幹部への研修など「踏み込んだ対策」を求めた。
また、企業などからの贈答品の受け取りも問題があったとし、ルールの明確化を要請。プロ野球優勝パレードをめぐる信用金庫からの補助金のキックバック疑惑は「違法性は認められない」と判断したが、県の補助金の拠出決定と、信金からの協賛金の時期が近接しており「不自然」と指摘。この問題が刑事告発されたため、「捜査当局の対応を待ちたい」とした。
告発文書については「外部への公益通報に当たる可能性が高い」としたうえで、告発者捜しの是非を検討。斎藤知事は昨年3月、匿名の告発文書を入手した直後、片山安孝・前副知事に「徹底調査」を指示して元県民局長と特定。県は内部調査のみで5月に「(文書は)核心的部分が事実ではない」として、他の3件の不適切な行為も合わせて停職3カ月の懲戒処分とした。こうした対応は「通報者がつぶされる事例と受け止められかねない」と言及した。
奥谷委員長「斎藤知事は説明責任果たして」
さらに、知事側近だった前総務部長が元県民局長の私的情報を漏洩(ろうえい)した行為は「元県民局長をおとしめることによって、告発文書の信頼性を毀損(きそん)しようとした。告発者つぶしと言われかねない」と指摘。第三者による調査結果は速やかに公表し、県として刑事告発も含め、適切かつ早急な対応をするよう提言した。そもそも、元県民局長の懲戒処分の理由となった不適切な行為は、違法の可能性がある調査で公用パソコンを回収されたことで見つかった。これを踏まえ、元県民局長の懲戒処分については、保護法の指針に基づき「適切な救済・回復の措置をとる必要がある」と対応を求めた。
百条委の調査途中だった昨年9月、県議会は全会一致で斎藤知事の不信任を可決し、失職。11月の知事選で斎藤知事は再選したが、選挙期間中から百条委メンバーに対する真偽不明の情報や中傷がSNSで拡散された。その一人だった竹内英明・前県議は議員辞職後の今年1月、自殺とみられる形で死去した。
奥谷謙一委員長は「斎藤知事は報告書の内容を重く受け止め、兵庫県の混乱と分断を一刻も早く解消すべく、県民に対する説明責任を果たしてほしい」と述べた。
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斎藤·兵庫県知事の内部告発などをめぐる経緯
2024年
3月 12日
元県民局長が報道機関などに告発文書を配る
25日
斎藤知事から指示を受けた副知事(当時)らが元
県民局長を聴取。公用パソコンを回収し、告発者
と特定
27日
知事が会見で文書を「うそ八百」と批判。元県民
局長の退職人事を取り消し
5月 7日
県は内部調査の結果、元県民局長を停職3カ月
の懲戒処分に
21日
知事が第三者委員会による文書問題の再調査を表明
6月 13日
県議会が百条委員会の設置を決定
7月 7日
元県民局長が死亡
9月 4日
元県民局長の公用パソコンにあった私的情報を
県の前総務部長が外部に漏らした疑惑を受け、
知事が「第三者委」の設置を表明
19日
県議会が知事の不信任決議を全会一致で可決
11月17日
出直し知事選で斎藤氏が再選。立花孝志氏との
「2馬力選挙」と批判が集まる
20日
PR会社社長が斎藤氏陣営の「広報全般を任せ
られた」とネットに投稿。公職選挙法違反の疑い
が浮上
12月25日
百条委で最後の尋問。実質的な調査が終了
2025年
1月18日
百条委メンバーだった前県議が死亡
3月 4日
百条委が調査報告書を公表。翌5日の県議会
本会議に提出へ
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兵庫県の斎藤元彦知事らが内部告発された問題で、県議会調査特別委員会(百条委員会)の調査報告書が4日、公表された。百条委が果たした役割は何だったのか。それを受けて斎藤知事はどうするべきか。「100条調査ハンドブック」の著書がある明治大公共政策大学院兼任講師の広瀬和彦さん(地方自治論)に聞いた。
――百条委の調査権とはどのようなものでしょうか。
犯人捜しをするのが目的ではない。誰が問題だったかは警察や検察の領域。行政機関をチェックし、今後こういうことが起きないように再発防止のためにするものだ。提言の中で考えを示すことができる。
――今回の百条委の特異な点は何でしょうか。
2021年の知事選での政治的な対立の影響を受ける中で設置が決まったと推察されます。そういった意味では、17年に豊洲市場をめぐる問題を検証した東京都議会の百条委と似ている。ただ、最終的な引き金は、公益通報をめぐる県の元西播磨県民局長の取り扱いだった。そして報道されている調査報告書の概要を見る限り、知事としての対応は、違法ではないかもしれないが適切ではなかったと判断する議員が多かったようだ。
――兵庫県議会の百条委が果たした役割は。
斎藤知事をはじめとする県側は「一連の対応には法的に問題がない」と考えていた。でも執行機関として適法であっても適当であったかということを自分たちで評価することが必ずしも適正かというと、それは違う。そのために議会は二元代表制のもと、知事ら執行機関に対する監視機関として存在する。一定の役割は果たしたと思う。
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先導的かつ雄県の名にふさわしい進取の気質に富んだ兵庫県政
なんていう文言
昔の役人が全国あちこちで似たような文言で文章を作って、いまだに役人が使いまわしているのだろう
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なつかしい一太郎ファイルが登場した。役所や教育現場でよく使われているとの話だったが、実際に現在も兵庫県庁で使われていた。私も一太郎のほうが使いやすいと思う。イメージ通りに作って、印刷できる感じがする。ワードは細かいところで思い通りにならず、言いなりになってしまう。