投影(Projection)をテンプレートと見たら

投影(Projection)
患者は、自身が抱える許容しがたい衝動や感情を、他者(または機関)に投影する。怒り、支配欲、性的感情、嫉妬などが、しばしば他者に投影される。投影は、妄想(パラノイア)の主要なメカニズムである。

このメカニズムは、他者にはない性質を、他者の中に見てしまうのだから、現実を歪曲している。
相手は起こっていないのに、「あなたは怒っている」と言いがかりをつけると、相手は本当に怒ったりして、事実かどうかわからなくなったりする。相手を怒らせる方法でもある。すると、「あなたは怒っている」の判断は現実になるわけで、現実を変化させる技術でもある。混乱させる技術ともいえる。

いずれにしても、このような複雑な状況を招いてしまうので、患者の現実適応は悪化する。
精神病レベルの病態水準と言える。
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Projective Identification :投影性同一視。
自分の受け入れられない感情や不快な部分を他者に投影する
自分の悪い部分や良い部分のいずれかを外界の対象に投影する
投影した自己の部分と、それを受け入れた外界の対象を同一視する
自分の願望や衝動を支配、統制しようと試みる

【投影性同一視の発生状況】
境界性パーソナリティ障害者に見られる
トラウマや境界性パーソナリティ障害に見られる原始的な防衛機制
人間関係において複雑な影響を及ぼすことがある
しばしばコミュニケーションの混乱を引き起こし、誤解や紛争の原因となる

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一応、そのように考えられるが、自分の中に抱えている衝動や感情を相手に投影するのは、特に利益があってそうするのではないだろう。自動的に、むらむらと、そのようにしてしまう、結果としてしてしまった、そんな感じだと思う。
ということは、これは転移で議論された、自分の中にある対人関係や感情のテンプレートを、今現在の対人関係や状況に使ってしまうのと似ている。
新しい状況に対して、柔軟に、新しい方法で対処することができない。これは一面では不適応であるが、一面ではエネルギーの節約でもある。

ーーーーー以下、引用
投影は日常生活の中でよく見られる健康的なものから、日常生活や人間関係に支障が出てしまうような病的なものまで、さまざまなレベルのものがあります。
病的な投影は原始的防衛機制に分類され、未熟な自我の防衛の在り方とされています。
相手や物事には、良いところもあれば、悪いところもあるものですが、こころの中でそうした両側面を上手く統合することができないと、『良い』か『悪い』かのどちらかを相手に映し出してしまうことがあります。
例えば『良い』対象を相手に投影した時には、過度に相手を理想化することになり、無条件に相手が素晴らしい人だと思い込んで尊敬したり、好意を抱いたりします。
反対に『悪い』対象を相手に投影した時は、自分を傷つけてくる人物として恐れたりもします。
このように病的な投影は、この人は「良い人だ」、この人は「悪い人だ」というように極端に区別してしまったり、良い人だと思い込んでいた人の中に悪い部分が見えてくると、「良い人」から「悪い人」へと急激に評価を下げしてしまったりすることがあります。
『良い』か『悪い』に限局されてしまうことで、相手に対する評価が極端に揺れ動いてしまい、安定した人間関係が築きにくくなってしまう要因になることもあります。
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投影同一視(Projective identification)とは
投影同一視はメラニー・クラインが提唱した概念です。投影同一視とは、「受け入れられない自分の感情や不快なもの、あるいは自分の悪い部分などを相手に映し出して、相手が持っていると思い込み(投影)、そしてさらに相手に投影したものに同一化すること」をいいます。ですので、投影同一化と呼ばれることもあります。
例えば、自身の投影により「私はAさんに嫌われている」と感じたとしましょう。
Aさんに投影した感情に同一化すると、「私のことを嫌いなAさんなんて、私も嫌いだ」となるのです。
このように投影同一視によってAさんへの敵対意識を強めてしまうことがあります。
ですが、よく知らない相手に対して、「なんだか気が合わないな」と感じて初めは苦手意識を持っていても、実際に交流していく内に相手の人となりが分かり、親交が深まることもよくあることかと思います。
このように、相手とのやりとりを通して自分の思い込みに気付き、相手とのコミュニケーションを修正していくことができる投影同一視もあります。
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病的な投影同一視
病的な投影同一視は病的な投影を経て起こり、人間関係に支障を与えてしまうこともあります。
例えば、『良い』対象を相手に投影した場合は、相手に対して敬意や好意を過剰に抱き、実際に献身的に尽くしたり、表立って讃えたりするなど、あからさまな行動をしまうことがあります。
その反対に『悪い』対象を相手に投影した場合は、相手が自分を脅かす恐ろしい人物に感じたり、敵意を向けられていると感じてしまったりして、「私のことを攻撃するのであれば、私もやってやる」と考えて、投影した相手に攻撃を向けてしまうので、関係性を自分で破壊してしまうことにもなります。
いずれにしても自分の投影したものに同一化しているため、第三者から見ると度が過ぎた行動に感じられ、周囲から距離を取られてしまう要因になることもあります。

このように投影や投影同一視には、相手とのやりとりの中で、思い込みに気付いて後のコミュニケーションを修正ができるものから、自分と相手との関係性をひどく悪化させてしまうものまであり、程度の違いによって生じてくる問題は大きく異なります。
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投影性同一視は、他者に関して虚偽を信じる人物が、その信念を実現すべく相手が行動を変更するように関係を持つところの、自己成就的予言である点において、単純な投影とは違う。相手は投影に影響されてあたかも彼あるいは彼女が事実実際に投影された考えや信念によって特徴付けられているかのように振る舞い始める。

投影性同一視のひとつの例は、警察に迫害されているという妄想を発展させている妄想型統合失調症者のそれである。すなわち警察に怯える彼は警察官の周囲でコソコソまた不安気に行動し始めるが、それによって警官の嫌疑が増大し、彼を捕まえる理由が何かないかと探し始めることになる。

もっとも頻繁に投影されるのは、投影する人物が受け入れることができない(すなわち「私は間違った行動をしてしまった」や「私は~に対して性的感情を持っている」)ところの自身に関する、我慢出来ない、苦痛に満ちた、また危険な考えや信念である。あるいはそれは、同様に投影者には知ることが難しいような価値や評価のある考えかもしれない。投影性同一視は ごく早期のまたは原初的な心理作用であると見られていて、より原初的な防衛機制のひとつであると理解されている。けれども同様に、共感や洞察のようなより成熟した心理作用の基盤であるとも考えられている。

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