対象関係(Object Relations)
フェアベーン(Fairbairn, 1954)らは、対象関係理論(Object Relations Theory) として知られる概念を発展させました。(彼は「対象(object)」という言葉を、人間の感情生活において 極めて重要な存在となる人物 を指すために使用しました。この用語は、フロイトが「欲動(drive)の対象(object)」として養育者を説明した際に用いた概念を引き継いだものです。)
フェアベーンは、虐待を受けた子どもたちと関わる中で、彼らが 深刻な虐待を受けたにもかかわらず、加害者である親に強く執着し続ける ことを観察しました。これは、子どもたちが 単なる欲求充足以上のものを親に求めている ことを示唆していました。さらに、こうした子どもたちは 後に自らも、幼少期の関係と同じような虐待的な関係を求める傾向 があることが分かりました。
対象関係理論は、人間の感情生活や対人関係は、無意識の中に保持された「最も早期で最も強烈な関係の心的イメージ(内在化された対象表象)」 を中心に展開されると結論づけています。
この理論によれば、子ども(あるいは大人)は、喪失や見捨てられることの恐怖 を回避するために、あらゆる手段を講じて 幼少期の愛着対象(愛する人)とのつながりを維持しようとする のです。その方法の一つとして、幼少期の感情生活において重要な役割を果たした人物の 内在化されたイメージ に一致するような相手を求め、同じような関係性を再現しようとします。このようにして、人は「つながりの感覚」を取り戻そうとするのです。
対象関係理論は、なぜ人々が適応的でない(時には自己破壊的な)関係に繰り返し陥るのか を理解するのに役立ちました。この理論は、さまざまな人々や状況に応用され、特に 境界性パーソナリティ障害(BPD) や 自己愛性パーソナリティ障害(NPD) などの、治療が困難とされる精神病理の理解に大きく貢献しました。
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虐待を受けた子どもたちは、深刻な虐待を受けたにもかかわらず、加害者である親に強く執着し続ける。こうした子どもたちは 後に自らも、幼少期の関係と同じような虐待的な関係を求める傾向 がある。不思議なことだ。なぜなのかなと思う。心の深いところにテンプレートが出来上がっていて、それを使うことでしか生きていけないかのようだ。
虐待された人が、後に自分から、虐待状況に入り込んでしまう。虐待される側であることも、虐待する側であることもある。性被害などでも類似の側面がないではない。薬物なども似ている。
すこし違う話であるが、ギャンブルも、いけないと分かっていながら、ふらふらと再発してしまう。
なぜか再演して、さらに深刻に傷つき、テンプレートが強固になってしまう。