転移について、それは一種のテンプレートであると説明する。
同様に、防衛機制についても、テンプレートであると説明する。
心を不安にする状況に対して、心は自分を防衛するために、防衛メカニズム(防衛機制)を発動する。
どの状況に対してどの防衛機制を用いるかを意識的にコントロールしているわけではないことが多いだろう。無意識のうちにどれかの防衛メカニズムを発動している。
どの防衛メカニズムを発動するかを選択するところが重要である。意識的にできれば、適応度が高い人になる。
その部分を意識化できないで、無意識の力で、間違った防衛メカニズムを選択して、現実適応を悪化させることがある。それは誰のせいでもない。自分のせいである。
場合によっては、手持ちの防衛メカニズムが少なくて、仕方なくその中のどれかを用いる場合もある。結果として、無効な場合が多い。防衛メカニズムを多彩に用意しておくことは有効な対策である。
どの防衛メカニズムを選択するかを、意識的に実行することは難しい。むしろ、周囲の人間を観察して、手本としたい人の言動の中に、防衛メカニズム選択の実際を見て、学ぶのだろう。反面教師となることもあるだろう。独自に開発するというよりは、学ぶことのほうが多いのではないだろうか。年長者のまねをすることが多いだろう。
防衛メカニズムもテンプレートと考えてよいと思う。
人間はテンプレートに縛られているが、
(1)環境が変化しないなら、古いテンプレートが多分有効である。
同じ環境で、似たDNAの親とか祖父母が使ったテンプレートを使えば、多分有効だろうと思う。現代では環境変化が速すぎる。古いテンプレートが役立たないことがある。
(2)適応を改善するためには、数多くのテンプレートを用意しておいた方がよい。
(3)テンプレートに頼らず、その場で新しく開発することも大切である。その場合は試行錯誤になる。
(4)新しい環境で、どのテンプレートが有効か、試行錯誤が必要である。
(5)どの場面でどのテンプレートを使うか、意識的に選択できる人は、適応度が高い。たいていの人は無意識に選択している。
防衛メカニズムはその人の性格傾向と深く関係する。外側に現れた防衛メカニズムは性格と認識されるだろう。
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現実を歪めて認知するタイプの防衛メカニズムを使えば、強い不安にも対応できるが、現実適応は低下する場合が多い。
現実を歪めない程度の防衛メカニズムを使えば、現実適応もマイルドに適応的になる。
昇華などは良い適応戦略と言われている。打ち込めることを見つけられれば、一生の財産である。