多元的な社会 移住 様々な喪失と並行して、新たな精神的成長と変容の機会も生まれる

文化から切り離された思考が存在しないのは、言葉のない言語が存在しないのと同じことである。

我々の多元的な社会では、葛藤や症状形成は、二世代・三世代にわたる文化価値観の違いによって生じることが多い。

近年、異なる文化的背景を持つ患者の治療に関する著作が増えており、喪失やディスロケーション(移住・離散)の経験が、患者の問題の中に隠されている場合があること、そしてそれを治療の中で明らかにすることの価値が指摘されている。

ある国から別の国への移住は、複雑で多面的な心理社会的プロセスであり、個人のアイデンティティに重大かつ持続的な影響を与える。

「母国を離れることは深い喪失を伴う。多くの場合、慣れ親しんだ食べ物、母国の音楽、疑うことのなかった社会的習慣、さらには母語さえも手放さなければならない。新しい国では、味の違う食事、新しい歌、異なる政治的関心、不慣れな言語、なじみのない祭り、未知の英雄、精神的に共有されていない歴史、視覚的に馴染みのない風景が待っている。しかし、こうした様々な喪失と並行して、新たな精神的成長と変容の機会も生まれる。」(Akhtar, 1995, p. 1051)文化的な違いは、分析家にとって、治療において探求すべき領域を示唆するものである。

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