CBT05 認知評価 要約 2025-3

ブリーフィングドキュメント:認知評価

概要

このドキュメントは、認知評価の実践に関連する主要なテーマ、重要なアイデア、事実をまとめたものです。特に、不安障害とうつ病における認知評価の方法、その妥当性、および測定される認知の産物、プロセス、構造に焦点を当てています。

主要テーマ

  1. 認知評価の基礎:
  • 人間の認知機能は情報処理の観点から記述でき、この視点は臨床評価の実践に役立つという前提。
  • 人間は情報を積極的に探し、選択し、利用して現実の認識を構築する存在として描かれる。
  • 認知システムは、認知構造(スキーマ)、プロセス(情報処理の方法)、産物/内容(意識的な思考やイメージ)の3つのレベルで分析される。
  1. 認知評価の方法:
  • 思考を評価する多様な方法が存在し、時間性(回顧的、同時的、未来的)、構造の程度(承認型 vs. 生成型)、反応様式(書面 vs. 口頭)、刺激の性質(一般的な思考、想像された状況など)、思考評価の主体(回答者 vs. 独立した評価者)という5つの次元で分類できる。
  • 同時的非構造化法:
  • 自発的な私的言語の記録
  • 自由連想
  • 思考発話法(Think-aloud)
  • 同時的構造化法:
  • ランダム思考サンプリング
  • 自己モニタリング
  • 回顧的非構造化法:
  • ビデオテープ思考再構成
  • 思考リスト作成
  • 回顧的構造化法:
  • 自己記述式質問紙
  • 臨床面接
  1. 図 5.1: 認知評価の時間的次元と構造的次元の連続体(Glass & Arnkoff, 1982より引用)。
  2. 自己モニタリング法:
  • 自然環境下での思考サンプリング(思考サンプリング法、経験サンプリング法 ESM):ランダムまたは準ランダムな間隔で合図(通常は携帯型デバイスのビープ音)を受け、その瞬間の思考を記録する。
  • Hurlburt (1997) によるレビュー。
  • 「被験者自身の環境で、特定の環境イベントの発生に依存しない間隔で、比較的長期間にわたってデータを収集することが可能になる。」
  • 特定の刺激状況下または特定の時間における特定の思考の発生を記録する自己モニタリング:臨床的に関連性の高い、まれな状況に関する情報を収集するのに役立つ。
  • パニック発作中の苦痛な認知と症状の研究(Westling & Ost, 1993)。
  • 反応性、社会的望ましさ、評価懸念といった問題が内在する。
  • 日常プロセスデザイン:日々のストレスと気分症状を数日から数週間にわたって評価する自己モニタリングの一形態。
  • 回顧的な自己報告式質問紙と比較して、回顧的バイアスを減らし、ストレスに直面した際の日常的な思考をより正確に把握できる。
  • 特定の認知評価(他者からの批判の認識など)の変動と気分の変化との関連性を詳細に分析できる(Dunkley et al., 2003; Gunthert et al., 2007)。
  1. その他の生成法:
  • ビデオテープ思考再構成:問題のある状況のビデオを見て、当時の思考の流れを再構成する。回顧的。
  • 思考リスト作成:考えている(または考えていた)ことすべてをリストアップする。回顧的、未来的、同時的に実施可能。思考、期待、評価、イメージ、感情といった認知プロセスの報告可能な産物を収集し分類する。
  1. 承認法(自己報告式質問紙):
  • 意識的な自己言語化や思考を評価するために設計されている。
  • 肯定または否定的な価数を持つ特定の思考を、評価状況で経験したかどうか、およびその発生頻度を評価する。
  • 臨床現場で最も一般的に使用される正式な認知評価法(Haaga, 1997)。
  • 子供向けに開発されたものもある(Ronan, Kendall, & Rowe, 1994)。
  • 認知的質問紙の妥当性には懐疑的な意見もあるが(Segal & Dobson, 1992)、基準妥当性や予測妥当性が確立され、認知理論の研究に有用であることが示されている。
  • 治療効果に敏感であり、臨床研究の転帰指標として広く使用されている(Haaga, 1997)。
  • 回答された思考の主観的な意味を臨床家が探ることが推奨される(Glass & Arnkoff, 1997)。
  1. 臨床面接:
  • 回顧的な認知評価ツールとして使用可能。
  • クライアントに動揺した状況を思い出させ、その時の思考や感情を語らせる。
  • 認知ケースフォーミュレーション(CCF)における患者固有の認知スキーマ(ICS)の妥当性を検証するための個別事例研究アプローチ(Mumma, 2004)。
  1. 認知評価の妥当性への脅威:
  • 構成概念妥当性の問題:質問紙形式、特に自己記述式質問紙が、関心のある認知プロセスを実際に測定しているのかという疑問。
  • 自己記述式質問紙における項目の承認は、思考の頻度だけでなく、その影響や重要性を示している可能性もある。
  • 「非常に頻繁に」思考すると報告する場合、必ずしも頻度ではなく、その思考の重要性を示している可能性がある(Glass & Arnkoff, 1982, 1997)。
  • 回答者は、状況で経験した特異な思考を、質問紙に現れる文法的に正しい文章に翻訳する可能性がある。
  • 承認は、特定の思考の実際の経験ではなく、自己イメージに合致する思考を反映している可能性がある。
  • 例:「数学は苦手だから、やっても無駄だ」という項目への承認は、実際の思考ではなく、自己イメージに基づいている可能性がある。
  • 承認は、感情的な経験を言語ベースの形式に翻訳したものを反映している可能性がある。
  • 例:「これには本当に動揺している」という思考を、実際にその思考を経験していなくても承認する可能性がある(Glass & Arnkoff, 1982)。
  • 自己記述式質問紙実施時に意味の確認や問い合わせがまれに行われないため、自己記述がすべての個人にとって同じ個人的意味を持つという仮定がある。
  1. 不安に関連する認知の産物:
  • 全般性不安:
  • 否定的評価への恐れ尺度 (FNE)
  • 社会的回避・苦痛尺度 (SAD)
  • 不安感受性指数 (ASI, ASI-3):不安に関連する身体感覚への恐れ。
  • 不安自己記述質問紙 (ASSQ):不安な思考の頻度。
  • 認知チェックリスト (CCL):危険(CCL-Anxiety)または喪失と失敗(CCL-Depression)に関連する認知の頻度。
  • ペンシルバニア州立心配質問紙 (PSWQ):一般的な心配傾向。
  • 心配領域質問紙 (WDQ):非病的な心配の5つの領域(人間関係、自信の欠如、目標のない将来、仕事の無能さ、経済)。
  • 不安思考目録 (AnTI):健康、社会、メタ認知(心配についての心配)の次元の心配傾向。
  • 不確実性耐性尺度:否定的な出来事が発生する可能性を受け入れられない傾向。
  • 社会不安障害:
  • 社会的相互作用自己記述テスト (SISST):社会的な相互作用後の自己記述。肯定的および否定的な思考を評価。
  • パニック障害:
  • パニック評価目録 (PAI):広場恐怖に関連する状況でのパニック発作の可能性、破局的な結果への懸念、将来のパニック発作への対処能力の自信を評価する3つの尺度。
  • 強迫性障害:
  • パドヴァ目録改訂版 (PI-WSUR):強迫観念と強迫行為。
  • 強迫性思考チェックリスト (OCTC):過去1週間の強迫観念。
  • 認知侵入質問紙:侵入思考、イメージ、衝動。
  • 改訂版強迫観念侵入目録 (ROII):最も動揺する思考の評価と思考制御戦略。
  • 心的外傷後ストレス障害 (PTSD):
  • 心的外傷後認知目録 (PTCI):トラウマ関連の思考と信念。自己に関する否定的認知、世界に関する否定的認知、自己非難の3つの要因。
  • メタ認知:
  • メタ認知質問紙 (MCQ):思考についての信念を評価する5つの下位尺度(肯定的心配信念、思考の制御不能性と危険性についての否定的信念、認知的自信の欠如、全般的な思考についての否定的信念、認知的自己意識)。
  • 心配の結果尺度:心配の結果についての信念を評価。否定的結果と肯定的結果の尺度。
  • 侵入思考解釈目録 (III):望ましくない侵入思考の解釈。
  • メタ認知信念質問紙 (MCBQ):望ましくない侵入思考に関連する制御の重要性と否定的結果についての信念。
  1. 不安に関連する認知プロセス:
  • 脅威的な曖昧なシナリオの解釈における主観的なコストと発生確率の評価。不安な被験者は、曖昧な材料をより脅威的と解釈し、脅威的な出来事の主観的なコストをより高く評価する(Butler & Mathews, 1983)。
  • 特定のパフォーマンスにおける否定的な出来事の確率の認識である「知覚された危険」の評価(Williams, 1985)。
  • 社会的状況における自己知覚の変化を評価するための思考リスト作成(Hofmann et al., 2004)。
  • 認知ベースおよび曝露ベースの広場恐怖症治療を比較するための思考サンプリング(Williams & Rappoport, 1983)。運転能力の行動テスト中に実施されたため、生態学的妥当性が高い。
  • 内部対話の内容が捉えにくい不安において特に有益な思考発話法(Think-aloud)。全般性不安障害患者は、出来事の破局的な解釈を示唆する発言の相対頻度が高く、硬直的で規則に縛られた解釈スタイルと身体的不安の言葉の使用を示唆する(Molina et al., 1998)。
  • 心配が問題解決の試みを伴うかどうかを調査する研究(Szabo & Lovibond, 2002)。自然発生的な心配の約50%が問題解決プロセス(解決策の生成と予想される結果に関する評価)を反映し、約20%が予想される否定的結果への懸念を反映していることが示された。心配を非効果的な問題解決プロセスとして概念化することを明らかにした。
  1. 不安に関連する認知構造/組織:
  • 社会不安障害における病的な認知を評価するための社会思考・信念尺度 (STABS)。
  • パニック障害患者が身体的および感情的な経験に対して破局的な反応をする可能性を高める機能不全的な態度と信念を評価するためのパニック信念目録 (PBI)。
  • 強迫性障害の重要な信念領域を表す機能不全的な信念(仮定、態度)を評価するために開発された強迫観念信念質問紙 (OBQ)。責任/脅威評価、完璧主義/確実性、思考の重要性/制御の3つの因子が特定された(OCCWG, 2005)。
  • 不安な個人の「深い」構造の表象を評価する試み。行動から推測されるプロセス(Rudy et al., 1982)。
  • 社会的に不安な男子大学生のサンプルを用いた多次元尺度構成法により、異性との交流の機会に直面した際、不安を引き起こす可能性に関して「評価される可能性」の次元を最も重視し、「親密さ」と「学術的関連性」の次元を低く評価することが示された(Goldfried et al., 1984)。非不安な男性は、「評価される可能性」よりも「親密さ」を2倍重視した。
  • 不安障害患者は脅威キューの選択的処理を示すことが確認されている(Mathews & MacLeod, 1994; Bar-Haim et al., 2007)。
  • 個人的な危険やその他の脅威に関連する情報の処理に偏ったスキーマの活性化は、不安状態の特徴である(Mathews & MacLeod, 1994)。
  • 感情ストループ課題において、不安な被験者は脅威的な単語(「病気」、「棺」)の色を命名するのに、中立的な単語(「歓迎」、「休日」)よりも時間がかかる(Mathews & MacLeod, 1985)。
  • ドットプローブ課題において、不安な被験者は正常なコントロール群よりも脅威関連の刺激に対してより警戒心が強く、注意をそらすのが困難である(Bar-Haim et al., 2007)。これは、活性化されると注意前レベルでの情報処理を偏らせる認知的な「危険」スキーマの存在を支持する。
  • 社会不安障害の文脈では、顔の表情を刺激として使用した修正版ドットプローブ研究は、視覚的に提示された単語への注意を測定した研究と比較して、より肯定的な結果が得られている。現実の社会的脅威刺激には他者の反応、顔の表情、言葉による反応が含まれるため、顔の表情は社会恐怖症の研究においてより生態学的妥当性が高い可能性がある(Bögels & Mansell, 2004)。
  1. 不安とうつ病の関連性:
  • 不安と抑うつ症状の密接な関係(Clark & Watson, 1991)。
  • 全般性不安障害とうつ病の間には注意バイアスに注目すべき違いがある(Mogg & Bradley, 2005)。
  • 全般性不安障害の個人は、非不安な個人と比較して、広範囲の軽微な外部の否定的な合図(脅威的な言葉、怒った顔の写真など)に注意バイアスを示す。
  • うつ病における注意バイアスは、より広範な処理を可能にする条件下で提示された、否定的で自己参照的な刺激に対して主に現れる。
  • パニック障害とうつ病の患者を対象とした感情ストループ課題の研究(Lim & Kim, 2005)。
  • パニック障害患者は、意識的な知覚を防ぐ条件下(サブリミナル露光)で、身体的脅威と否定的な言葉に対する選択的注意を示した。
  • うつ病患者は、明確な意識を可能にする条件下(スプラリミナル露光)で、否定的な言葉に対する選択的注意を示した。
  • 不安障害または抑うつ障害と診断された個人の不安関連認知とうつ病関連認知の相対的な寄与を評価する試みが最近始まった(Bar-Haim et al., 2007)。不安とうつ病を区別する認知と認知プロセスの価値を明確にするためには、さらなる研究が必要である。
  1. うつ病に関連する認知の産物:
  • 自動思考質問紙 (ATQ):過去1週間に生じた30の否定的な自動思考の頻度と信念の程度を測定。うつ病患者と非うつ病患者を識別する能力に基づいて経験的に導き出された。
  • 肯定的自動思考質問紙 (ATQ-P):肯定的な自動思考の頻度を測定。ATQを補完し、うつ病における自動思考パターンのより包括的な像を提供する可能性がある。
  • 完璧主義認知目録 (PCI):完璧主義に関連する自動思考に特化した尺度。頻繁な完璧主義思考の経験は、既存の完璧主義特性尺度や他の否定的な自動思考尺度によって予測される分散を超えて、不快感や不安と関連していることが確認された。
  • 帰属スタイル質問紙 (ASQ):再構成された学習性無力感モデルに基づいて開発された、うつ病の帰属を測定する最も頻繁に引用される尺度。達成または所属のテーマを含む12の架空のシナリオを提示し、結果の原因の内在性、安定性、普遍性を評価する。
  • 絶望感尺度 (HS):将来に対する絶望的な見方を測定するために設計された自己報告式尺度。精神科外来患者における自殺を予測することが示されている。
  • ベック自己概念テスト (BST):うつ病の中核的特徴としてベックが記述した否定的な自己観を評価する自己報告式尺度。性格、能力、適性、美徳、悪徳の25の次元で自己評価を行う。
  • 認知的偏り質問紙 (CBQ):対人関係または達成のテーマを含む問題のある状況の6つのビネットを提示し、主人公がその状況についてどのように考え、感じるかについての4つの反応の選択肢の中から最も近いものを選ぶ。うつ病的-歪んだ反応の頻度が特に重要。
  • 抑うつ状態の文完成テスト (SCD):抑うつ思考の既知の領域に触れる48の短い文の冒頭部分で構成され、多様な反応を促すように設計されている。文の完成は、否定的、肯定的、または中立的な思考としてコード化される。
  1. うつ病に関連する認知プロセス:
  • 自己焦点的文完成課題 (SFSC):文の冒頭部分(例:「私は願う…」「鏡を見ると…」)を読み、好きなように完成させる30項目の尺度。自己焦点と外部焦点の反応を評価。
  • 自己意識尺度 (SCS):私的自己意識、公的自己意識、社会的不安の3つの因子から構成される。私的自己意識下位尺度(例:「私はいつも自分のことを理解しようとしている」)は、自己焦点的な注意状態の気質的な等価物と見なされる。
  • 反応様式質問紙 (RSQ):抑うつ気分に対する気質的な反応を測定するために設計されている。反芻反応尺度 (RRS) と気晴らし反応尺度 (DRS) の2つの下位尺度で構成される。反芻はうつ病の発症、維持、再発において役割を果たす信頼性の高い個人差変数であると考えられている。
  • 日常プロセスデザイン:軽微な日常の出来事とうつ病患者の気分との相互作用の理解に貢献する。自己批判的な完璧主義者は、業績関連の悩みや他者からの批判の認識が高い日、および対処能力への自信が低い日に、より否定的な感情を経験する(Dunkley et al., 2003)。対照的に、依存性の高い個人は、社会的な悩みを多く経験した日に否定的な感情の増加を経験する。
  1. うつ病に関連する認知構造/組織:
  • 否定的自己スキーマはうつ病において活性化され、自分自身を不利に見る傾向と、過去、現在、未来の経験を主に否定的な方法で解釈する傾向をもたらす(Beck, 1967; Beck et al., 1979)。
  • 機能不全的態度尺度 (DAS):抑うつ障害に関連する比較的安定した態度のセットを特定するために設計された自己報告式目録。機能不全的な態度は、潜在的な自己スキーマを反映すると考えられているため、DASは重度の大うつ病性障害に対する認知的脆弱性の尺度として提案されている(Ingram et al., 1998)。
  • 完璧主義と承認欲求の2つの因子が繰り返し確認されている。
  • DASのスコアは、抑うつ気分レベルによって変化するだけでなく、個人の機能不全的態度のレベルにおける相対的な立ち位置は、抑うつ症状の減少にもかかわらず維持される傾向がある(Zuroff et al., 1999)。
  • DASは、抑うつ重症度や否定的自動思考の尺度と中程度の相関を示すが、うつ病に特異的ではない。全般性不安障害、神経性無食欲症、パニック障害、気分変調性障害の患者も異常なDASスコアを示す可能性がある。
  • 認知療法やその他のうつ病治療における仮説的な態度の変化を評価するために使用されてきた。DASは臨床的な改善に敏感であることがいくつかの研究で示されている。
  • プライミングの役割:うつ病になりやすい個人は、否定的な気分が存在する場合にのみDASスコアが高くなる傾向がある(Miranda et al., 1990)。否定的な気分状態は、否定的な自己スキーマをプライミングし、機能不全的な態度のアクセス可能性を高める可能性がある(Segal & Ingram, 1994)。
  • 自己報告式質問紙のプライミングとしての使用には注意が必要。質問紙間のプライムの特異性のばらつきが、構成概念の活性化のばらつきにつながる可能性がある。
  • 意識的に制御された認知プロセスに影響されない機能不全的な信念の研究を可能にする課題の使用。
  • 潜在的連合テスト (IAT):うつ病になりやすい個人における自己と否定的な特性形容詞との間の潜在的な関連性を評価するために使用される(Gemar et al., 2001)。
  • 自己参照符号化課題 (SRET):記憶の「処理水準」モデルをテストするために開発された実験室的パラダイムの応用。うつ病患者は非うつ病のコントロール群よりも多くの否定的な形容詞を自己記述的と認識し、事後的再生においてより多くの否定的な形容詞を想起する傾向がある。
  • 心理的距離尺度課題:自己参照的な形容詞刺激間の刺激間距離の計算を含み、うつ病における認知パターンの構造または相互接続性を評価する。うつ病患者は否定的な形容詞の自己記述子間のより強い関連性を示し、肯定的な自己関連内容の相互接続性が低いことが示された(Dozois & Dobson, 2001a)。
  • 感情ストループ色命名課題:うつ病患者は、肯定的なまたは中立的な単語よりも、否定的な単語の提示色の命名に一般的に時間がかかる(Gotlib & McCann, 1984)。
  • 修正版感情ストループ課題:プライミングデザインを組み込み、自己概念に関連するターゲットワードの色命名の前に、被験者の自己概念に関連するまたは関連しないと思われるプライムワードを提示する。うつ病患者は、自己記述的な否定的な情報によってプライミングされた場合、自己記述的でない否定的な情報によってプライミングされた場合よりも、否定的な自己参照情報に対して干渉の増加を示した(Segal et al., 1995)。
  • ドットプローブ課題:臨床的にうつ病の参加者は悲しい顔を選択的に注意することが一貫して示されている(Gotlib, Kasch, et al., 2004; Gotlib, Krasnoperova, et al., 2004)。これらの注意バイアスは、うつ病エピソードから回復した後、およびプライミング操作なしでも明らかであり、安定性があることが示唆されている(Joormann & Gotlib, 2007)。うつ病の母親を持つ娘は、気分の誘導後、否定的な顔の表情を選択的に注意することが示された(Joormann et al., 2007)。
  1. 残された課題:
  • 認知変数がうつ病に対する脆弱性のマーカーであるかどうかは依然として解明されていない。
  • うつ病エピソード中の認知変化を評価する方法は多数存在する。
  • いくつかの認知尺度の成人、子供、青年期の規範データが提示されている(Dozois et al., 2003; Ingram et al., 2007)。これらのデータは、認知、認知変化、治療効果の評価に役立つ。
  • うつ病の研究者は、認知的側面と対人関係的側面を統合し始めるべきである(Gotlib & Hammen, 1992)。
  • 社会的関係の認知的表象の評価を拡大することが推奨される(Segal & Dobson, 1992)。
  • うつ病の研究における生物学的アプローチの交差点を検討すべきである(Gotlib et al., 1997)。
  • 不安障害とうつ病に関して、認知的視点と神経生物学的視点の接点が最近示されている(Van den Heuvel et al., 2005; Booij & Van der Does, 2007)。

結論

この章は、認知評価の多岐にわたる方法論と、不安障害とうつ病の理解における認知の役割の重要性を強調しています。自己報告式質問紙は臨床現場で広く使用されていますが、その妥当性には潜在的な課題が存在します。生成法や実験室的課題は、より詳細な認知プロセスや構造の理解に貢献する可能性があります。今後の研究は、様々な認知評価法の長所と短所をさらに検討し、臨床実践と研究の両方において、より効果的で妥当性の高い評価アプローチの開発を目指す必要があります。また、認知と生物学的要因との相互作用を理解することも、精神障害のより包括的なモデルを構築するために不可欠です。

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認知アセスメントとは何ですか?その目的は何ですか?

認知アセスメントとは、人の思考、信念、および情報処理の方法を理解するための体系的なプロセスです。これは、人がどのように情報を収集し、選択し、利用して現実を認識しているかを把握することを含みます。その主な目的は以下の通りです。

  • 臨床的な問題(不安や抑うつなど)を理解し、診断する。
  • 心理療法の効果を測定する。
  • 個人の認知的な強みと弱みを特定する。
  • 介入戦略を立てるための情報を提供する。

認知アセスメントは、個人の内的な世界を理解し、心理的な問題に対処するための重要なツールです。

認知アセスメントはどのように行われますか?主にどのような方法がありますか?

認知アセスメントは、さまざまな方法を用いて行われます。これらの方法は、評価のタイミング、構造化の程度、回答の形式、刺激の種類、および評価者の観点によって分類できます。主な方法としては以下のものがあります。

  • 思考記録法 (Thought Listing): 特定の状況下で考えていることや考えていたことをリストアップしてもらう方法です。これは、事後的に行うことも、課題や状況の前、中に行うことも可能です。
  • 自己教示質問紙法 (Self-Statement Inventories): あらかじめ用意された肯定的な思考や否定的な思考のリストに対して、その状況でどの程度経験したかを評価してもらう方法です。
  • 自然な環境下での思考サンプリング (Random Thought Sampling): 日常生活の中で、ランダムなタイミングで合図を送り、その瞬間に考えていることを記録してもらう方法です。
  • 自己モニタリング (Self-Monitoring): 特定の状況下や特定の時間に、特定の思考が起こったかどうかを記録してもらう方法です。
  • ビデオテープ思考再構成法 (Videotape Thought Reconstruction): 実際の場面やロールプレイのビデオを見ながら、その時に何を考えていたかを思い出して報告してもらう方法です。
  • シンクアウド法 (Think-Aloud Procedures): 特定の課題遂行中や状況下で、考えていることを声に出して言ってもらう方法です。
  • 臨床面接 (Clinical Interview): 面接者がクライアントに過去の出来事を思い出させ、その時の思考や感情について尋ねる方法です。

これらの方法は、認知の異なる側面やレベルに焦点を当てており、目的に応じて使い分けられます。

認知アセスメントにおける「認知構造」「認知過程」「認知産物」とはそれぞれ何を指しますか?

認知心理学的な観点から、人間の認知機能は以下の3つのレベルで分析されます。

  • 認知構造 (Cognitive Structures): これは、情報処理を導くと考えられている、アクセスできない仮説的なスキーマ(知識の枠組み)を指します。例えば、自己や他者、世界に対する基本的な信念などがこれにあたります。
  • 認知過程 (Cognitive Processes): これは、環境からの入力情報を変換し、意味を推論する手段を指します。注意、記憶、判断、問題解決などがこれにあたります。
  • 認知産物 (Cognitive Products): これは、認知処理の結果として生じる、意識的な思考やイメージを指します。例えば、「自分はだめだ」という考えや、特定の場面を想像することなどがこれにあたります。

これらの3つのレベルは相互に関連しており、認知構造が認知過程を導き、認知過程が認知産物を生み出すと考えられています。認知アセスメントでは、これらの異なるレベルを理解するために、さまざまな方法が用いられます。

認知アセスメントの妥当性にはどのような脅威がありますか?自己報告式の質問紙を用いる際、特に注意すべき点は何ですか?

認知アセスメントの妥当性、特に自己報告式の質問紙を用いる際には、以下のような脅威に注意が必要です。

  • 構成概念妥当性の問題: 質問紙が意図する認知プロセスを本当に測定しているのかという疑問です。例えば、自己教示質問紙で「頻繁に」ある思考を報告した場合、それは本当にその思考の頻度を示しているのか、それともその思考の重要性や影響を示しているのかは明らかではありません。
  • 内容妥当性の問題との混同: 質問紙の項目が、評価したい内容領域を代表しているかどうかという問題と、質問紙が実際に意図する認知構造やプロセスを測定しているかという構成概念妥当性の問題は区別する必要があります。
  • 項目の解釈の個人差: 質問紙の項目は、すべての人にとって同じ意味を持つとは限りません。回答者は、自身の経験や視点に基づいて項目を解釈するため、同じ項目に回答しても、その背後にある思考や感情が異なる可能性があります。
  • 反応バイアス: 回答者が、社会的に望ましい回答をしたり、評価を恐れたりするなどのバイアスによって、実際の思考とは異なる回答をする可能性があります。
  • 感情体験の言語化の困難さ: 感情的な体験を言語化する際に、実際の体験とは異なる言葉で表現してしまう可能性があります。

自己報告式の質問紙を用いる際には、これらの点を考慮し、可能であれば他の評価方法と組み合わせて用いることや、回答者に対して項目の意味について дополнительныйな質問を行うことが推奨されます。

不安障害の認知アセスメントでは、主にどのような側面に焦点が当てられますか?どのような質問紙や手法が用いられますか?

不安障害の認知アセスメントでは、主に以下の側面に焦点が当てられます。

  • 脅威の過大評価と危険の認知: 日常的な状況や身体感覚を脅威として捉える傾向。
  • 否定的評価への恐れ: 他者からの拒絶や批判を過度に恐れること。
  • 不安に伴う身体感覚への恐れ (不安感受性): 不安症状が катастрофическийな結果につながると信じること。
  • 制御不能感: 不安や心配を自分でコントロールできないと感じること。
  • メタ認知: 自分の思考に対する信念(例えば、「心配することは悪いことだ」など)。
  • 特定の状況に関連する思考: 例えば、社交場面での否定的思考や、パニック発作時の катастрофическийな思考など。

これらの側面を評価するために、以下のような質問紙や手法が用いられます。

  • 恐怖の否定的評価尺度 (FNE): 社交場面での否定的評価への不安を測定。
  • 社会的回避・苦痛尺度 (SAD): 社交場面での苦痛や不快感を測定。
  • 不安感受性指数 (ASI): 不安に関連する身体感覚への恐れを測定。
  • 不安性自己教示質問紙 (ASSQ): 不安な思考の頻度を測定。
  • 認知チェックリスト (CCL): 危険に関連する認知(CCL-不安)や喪失・失敗に関連する認知(CCL-抑うつ)を測定。
  • ペンシルバニア州立心配質問紙 (PSWQ): 全般的な心配の傾向を測定。
  • 心配領域質問紙 (WDQ): 非病的な心配の領域(人間関係、自信の欠如など)を測定。
  • 不安思考インベントリー (AnTI): 健康、社会、メタ認知の側面からの心配の傾向を測定。
  • 不確実性耐性尺度: 不確実な出来事が発生する可能性を容認できない傾向を測定。
  • 社会的相互作用自己教示テスト (SISST): 社会的相互作用後の自己教示を測定。
  • パニック評価インベントリー (PAI): パニック発作の可能性、 катастрофическийな結果への懸念、対処能力への自信を測定。
  • パドヴァ・インベントリー改訂版 (PI-WSUR): 強迫観念と強迫行為を測定。
  • 強迫思考チェックリスト (OCTC): 過去1週間の強迫思考を測定。
  • 侵入思考質問紙: 過去1ヶ月の侵入思考、イメージ、衝動を測定。
  • 改訂版強迫性侵入思考インベントリー (ROII): 最も苦痛な思考の評価と制御戦略を測定。
  • 心的外傷後認知インベントリー (PTCI): トラウマに関連する思考や信念を測定。
  • メタ認知質問紙 (MCQ): 自分の思考に関する信念を測定。
  • 心配の結果尺度: 心配することの結果に関する信念を測定。
  • 侵入思考解釈インベントリー (III): 望ましくない侵入思考の解釈を測定。
  • メタ認知信念質問紙 (MCBQ): 望ましくない侵入思考に関連する制御の重要性や否定的結果に関する信念を測定。
  • 曖昧なシナリオの解釈課題: 脅威的な曖昧なシナリオの解釈を評価。
  • 注意バイアスの評価: 脅威に関連する刺激への注意の向け方を調べる(例:emotional Stroop課題、ドットプローブ課題)。

これらの手法を用いることで、個人の不安障害における特有の認知的な特徴を詳細に評価することができます。

抑うつ障害の認知アセスメントでは、主にどのような側面に焦点が当てられますか?どのような質問紙や手法が用いられますか?

抑うつ障害の認知アセスメントでは、主に以下の側面に焦点が当てられます。

  • 自動思考: 状況に応じて自動的に浮かんでくる否定的で非合理的な思考。
  • 認知の歪み: 現実を否定的に解釈するパターン(例:過度の一般化、選択的抽出など)。
  • 機能不全的態度 (Dysfunctional Attitudes): 抑うつ的な状態に関連する、硬直的で極端な信念やルール。
  • 自己概念: 自分自身に対する否定的な見方。
  • 帰属スタイル: 出来事の原因をどのように説明するか(例:失敗を自分の能力不足のせいにするなど)。
  • 絶望感: 将来に対する悲観的な見方。
  • 自責の念: 出来事を自分の責任であると過度に考えること。
  • 反芻 (Rumination): 否定的な感情や思考について繰り返し考えること。
  • 自己焦点性注意: 自分自身に向けられた注意の程度。

これらの側面を評価するために、以下のような質問紙や手法が用いられます。

  • 自動思考質問紙 (ATQ): 過去1週間に経験した否定的な自動思考の頻度と信念の程度を測定。
  • 肯定的自動思考質問紙 (ATQ-P): 肯定的な自動思考の頻度を測定。
  • 完璧主義認知インベントリー (PCI): 完璧主義に関連する自動思考の頻度を測定。
  • 帰属様式質問紙 (ASQ): 肯定的な出来事と否定的な出来事の原因に対する帰属(内的-外的、安定的-不安定、グローバル-特異的)を評価。
  • 絶望感尺度 (HS): 将来に対する絶望的な見方を測定。
  • ベック自己概念テスト (BST): 自分自身に対する否定的な評価を測定。
  • 認知バイアス質問紙 (CBQ): 対人関係や達成に関連する問題状況における抑うつ的で歪んだ思考の選択肢を選ぶ形式。
  • 文章完成法抑うつテスト (SCD): 抑うつ的な思考の領域を探る短い文章の続きを自由に記述してもらう形式。
  • 自己焦点性文章完成課題 (SFSC): 文章の続きを自由に記述してもらうことで、自己焦点性の程度を評価。
  • 自己意識尺度 (SCS): 私的自己意識、公的自己意識、社会的不安の程度を測定。
  • 反応様式質問紙 (RSQ): 抑うつ気分に対する一般的な反応(反芻と気晴らし)を測定。
  • 機能不全的態度尺度 (DAS): 抑うつ障害に関連する機能不全的な態度や信念を測定。
  • 感情的ストループ課題: 感情的な言葉の色を命名する際の反応時間を測定することで、特定の感情的な内容への注意バイアスを評価。
  • 自己参照符号化課題 (SRET): 肯定的および否定的な形容詞が自己記述的であるかを判断する際の反応時間と、その後の想起率を測定。
  • 心理的距離尺度課題: 自己参照的な形容詞間の関連性の強さを評価。
  • ドットプローブ課題: 特定の感情的な刺激(例:悲しい顔)への注意の選択性を評価。

これらの手法を用いることで、抑うつ障害における特有の認知的な特徴を多角的に評価し、治療計画の立案や効果測定に役立てることができます。

不安とうつ病の認知アセスメントにおいて、共通して用いられる手法や、それぞれの障害に特有の手法はありますか?

不安障害とうつ病の認知アセスメントにおいて、共通して用いられる手法としては、自己報告式の質問紙や、思考記録法臨床面接などが挙げられます。これらの方法は、個人の主観的な思考や感情、行動を把握するために広く用いられます。また、注意バイアスを評価するためのemotional Stroop課題ドットプローブ課題も、不安とうつ病の両方において研究に用いられることがあります。

一方、それぞれの障害に特有の手法としては以下のものがあります。

不安障害に特有の手法:

  • 特定の不安症状や状況に関連する質問紙: 例えば、社交不安障害に対する社会的相互作用自己教示テスト (SISST)、パニック障害に対するパニック評価インベントリー (PAI)、強迫性障害に対するパドヴァ・インベントリー改訂版 (PI-WSUR) などがあります。
  • メタ認知に関する質問紙: 例えば、メタ認知質問紙 (MCQ) や心配の結果尺度など、自分の思考に対する信念を評価するものが不安障害の研究で特に注目されています。
  • 不確実性耐性尺度: 不安障害、特に全般性不安障害との関連が研究されています。

うつ病に特有の手法:

  • 自動思考や機能不全的態度を評価する質問紙: 例えば、自動思考質問紙 (ATQ) や機能不全的態度尺度 (DAS) は、うつ病の認知モデルにおいて中心的な概念を測定します。
  • 帰属スタイルを評価する質問紙: 帰属様式質問紙 (ASQ) は、うつ病における絶望感や無力感と関連する認知パターンを評価するために用いられます。
  • 反芻や自己焦点性注意を評価する質問紙: 反応様式質問紙 (RSQ) や自己意識尺度 (SCS) は、うつ病の維持や悪化に関与する可能性のある認知プロセスを評価します。
  • 自己参照符号化課題 (SRET) や心理的距離尺度課題: これらは、うつ病における自己スキーマの構造や機能をより深く理解するために、実験室的な環境で用いられることが多いです。

このように、共通の手法も存在しますが、それぞれの障害の認知的な特徴をより詳細に捉えるために、特有の質問紙や課題が開発され、用いられています。

認知アセスメントの結果は、心理療法にどのように活用されますか?

認知アセスメントの結果は、心理療法のさまざまな段階で重要な役割を果たします。主な活用方法は以下の通りです。

  • 問題の明確化と概念化: アセスメントを通じて、クライアントがどのような状況で、どのような思考や感情を抱きやすいのか、その結果どのような行動をとっているのかを具体的に把握し、問題の全体像を明確にします。
  • 個別化された治療目標の設定: クライアントの認知的な特徴や問題点を理解することで、クライアント一人ひとりに合わせた具体的な治療目標を設定することができます。例えば、特定の自動思考の頻度を減らす、特定の機能不全的態度を修正するなどです。
  • 治療戦略の選択: アセスメントの結果に基づいて、最も効果的と考えられる治療戦略を選択します。例えば、自動思考の特定と修正には認知再構成法、機能不全的態度の変容にはスキーマ療法などが考えられます。
  • 治療の焦点の明確化: 治療の初期段階で、アセスメントによって特定された主要な認知的な問題に焦点を当てることで、効率的かつ効果的な治療を進めることができます。
  • 治療の進捗のモニタリング: 治療の過程で定期的に認知アセスメントを行うことで、クライアントの認知的な変化を客観的に評価し、治療の進捗状況を確認することができます。必要に応じて、治療計画の修正を行います。
  • 治療効果の評価: 治療終了時やフォローアップ時に認知アセスメントを実施することで、治療によって認知的な側面がどのように変化したかを測定し、治療効果を評価することができます。
  • クライアントへのフィードバック: アセスメントの結果をクライアントに分かりやすく伝えることで、自身の思考パターンや問題点を客観的に理解する助けとなり、治療への動機づけを高めることができます。

このように、認知アセスメントは心理療法の全過程において、診断、目標設定、戦略選択、進捗モニタリング、効果評価、そしてクライアントの理解促進に不可欠な情報を提供する重要なツールとなります。

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認知アセスメント研究ガイド

クイズ

  1. 認知アセスメントにおける「情報処理」の視点とは、人間の認知機能をどのように捉えるものですか?また、この視点は臨床アセスメントの実践にどのように役立ちますか?
  2. 認知アセスメントの方法を分類する際に用いられる5つの次元を挙げ、それぞれについて簡単に説明してください。
  3. 「思考サンプリング法」と「経験サンプリング法(ESM)」は、どのような目的で、どのように実施される認知アセスメントの手法ですか?
  4. 「自己モニタリング法」の利点と、それに内在する可能性のある問題点をそれぞれ一つずつ説明してください。
  5. 「ビデオテープ思考再構成法」は、他の認知産出法と比較してどのような点でより回顧的であると言えますか?また、この手法はどのように実施されますか?
  6. 自己報告式の質問紙を用いた認知アセスメントの主な目的は何ですか?また、この方法の利点と限界点をそれぞれ一つずつ説明してください。
  7. 臨床面接は、回顧的な認知アセスメントのツールとしてどのように活用できますか?具体的な例を挙げて説明してください。
  8. 認知アセスメントにおける「構成概念妥当性」の懸念は、主にどのような形式の評価方法に当てはまりますか?その理由とともに説明してください。
  9. グラスとアーコフ(1982, 1997)は、自己記述式質問紙における認知とその表現の間の同形性の仮定について、どのような批判をしていますか?
  10. 不安に関連する認知の一般的な特徴を測定するために用いられる質問紙の例を二つ挙げ、それぞれの主な目的を説明してください。

クイズ解答

  1. 情報処理の視点では、人間の認知機能を、内外の情報を受け取り、選択し、利用して現実を認識する過程として捉えます。この視点は、患者の認知的な構造、プロセス、および生成物を理解し、臨床的な問題の評価や介入に役立ちます。
  2. 認知アセスメントの方法は、以下の5つの次元で分類できます。(1) 時間性(回顧的、同時的、未来的)、(2) 構造の程度(肯定型 vs. 産出型)、(3) 反応様式(筆記 vs. 口頭)、(4) 刺激の性質(一般的な思考、想像された状況など)、(5) 思考評価の主体(回答者 vs. 独立した評価者)。
  3. 思考サンプリング法と経験サンプリング法(ESM)は、自然な環境における人々の思考を、時間的または状況的な偏りなく把握することを目的としています。通常、携帯型の合図装置(ポケベルなど)によってランダムまたは準ランダムな間隔で合図を送り、その瞬間の思考や経験を記録してもらいます。
  4. 自己モニタリング法の利点は、重要でありながら頻繁には起こらない可能性のある状況に関する臨床的に関連性の高い情報を収集できる確率を最大化できることです。一方、問題点としては、記録すること自体が思考や行動に影響を与える可能性(反応性)、社会的に望ましいように報告しようとする傾向(社会的望ましさ)、評価されることへの不安(評価懸念)などが挙げられます。
  5. ビデオテープ思考再構成法は、出来事が起こっている最中に報告するのではなく、過去の経験をビデオで追体験しながら報告することを目的とするため、以前に議論された手法よりも回顧的であると言えます。具体的には、実際のまたはロールプレイングされた問題のある状況のビデオを見て、その時の思考の流れをできるだけ正確に再構築してもらいます。
  6. 自己報告式の質問紙の主な目的は、意識的な自己対話や思考を評価することです。利点としては、一度に多くの人に実施でき、標準化されているため比較が容易である点が挙げられます。限界点としては、回答者が自身の思考を正確に認識または報告できない可能性や、社会的望ましさの影響を受けやすい点が挙げられます。
  7. 臨床面接では、クライアントに過去の動揺する状況を思い出してもらい、その時に何を考え、何を感じていたかを語ってもらうことで、回顧的な認知アセスメントツールとして活用できます。例えば、特定の出来事に対するクライアントの思考や信念を引き出し、それらを認知ケースフォーミュレーション(CCF)に統合するといった方法があります。
  8. 構成概念妥当性の懸念は、主に質問紙や自己報告形式の評価方法に当てはまります。なぜなら、これらの形式では、被験者に特定の思考内容が提示され、それに対する同意の程度などを評価するため、実際に測定したい認知プロセスそのものを捉えているのかどうか、という疑問が生じるためです。
  9. グラスとアーコフは、自己記述式質問紙で「非常に頻繁に」ある思考を報告する被験者は、必ずしもその思考の頻度ではなく、その思考が自身に与える影響や重要性を示している可能性があると指摘しています。また、被験者が自身の持つ特異な思考を質問紙の文法的に正しい文章に翻訳している可能性や、実際の経験ではなく自己イメージに合致する思考を選択している可能性も指摘しています。
  10. 不安に関連する認知の一般的な特徴を測定するために用いられる質問紙の例として、(1) 否定的評価への恐れ尺度(FNE)があり、社会的な状況で他者から不承認を受けることへの不安の程度を測定します。(2) 社会的回避・苦痛尺度(SAD)は、同様の形式で、社会的な状況における苦痛や不快感の経験を測定します。

論述式問題

  1. 認知アセスメントにおける産出法(例:思考発話法)と肯定法(例:自己記述式質問紙)のそれぞれに焦点を当て、その利点と限界点を比較対照しながら論じなさい。臨床場面において、これらの方法をどのように組み合わせることが効果的であると考えられますか。
  2. ベックの認知理論における「認知構造(スキーマ)」、「認知プロセス」、および「認知産物(思考とイメージ)」の概念について説明し、それぞれのレベルを評価するための具体的なアセスメント方法を挙げなさい。これらの異なるレベルの評価は、臨床的な理解にどのように貢献しますか。
  3. 不安障害の認知モデルでは、特定の認知バイアス(例:脅威への注意バイアス)が重要な役割を果たすと考えられています。不安障害における代表的な認知バイアスをいくつか挙げ、それらを評価するための実験的な手法(例:感情ストループ課題、ドットプローブ課題)について説明しなさい。これらのバイアスの理解は、不安障害の治療にどのように応用できると考えられますか。
  4. 抑うつ症状の認知アセスメントにおいて、自動思考を評価することの重要性について論じなさい。自動思考を測定するための代表的な質問紙(例:自動思考質問紙(ATQ))を紹介し、その利点と限界点について考察しなさい。また、抑うつ状態における自動思考の変化は、治療の評価にどのように役立ちますか。
  5. 認知アセスメントの妥当性を脅かす要因について、自己報告式の質問紙を中心に議論しなさい。構成概念妥当性の問題や、回答者の解釈の多様性、感情状態の影響などが、測定結果にどのように影響を与える可能性がありますか。これらの妥当性の問題を克服し、より信頼性の高い認知アセスメントを行うためには、どのような工夫が必要でしょうか。

用語集

  • 認知アセスメント (Cognitive Assessment): 個人の認知機能、すなわち思考、信念、知覚、記憶、問題解決などの心的過程を評価するための体系的な方法。
  • 情報処理モデル (Information-Processing Model): 人間の認知機能を、外部からの情報を受け取り、それを処理し、記憶し、行動として出力する一連の段階的なプロセスとして捉える理論的枠組み。
  • 認知構造 (Cognitive Structures): 知識や信念が組織化された比較的安定した枠組み。スキーマとも呼ばれ、情報処理を導く。
  • 認知プロセス (Cognitive Processes): 環境からの入力情報を変換し、意味を推論するための手段や方法。注意、記憶、判断などが含まれる。
  • 認知産物 (Cognitive Products): 認知処理の結果として生じる意識的な思考やイメージ。
  • 回顧的評価 (Retrospective Assessment): 過去の思考や感情、出来事について報告を求める評価方法。
  • 同時的評価 (Concurrent Assessment): 思考や感情が生じているその瞬間に報告を求める評価方法(例:思考発話法)。
  • 構造化された評価 (Structured Assessment): 評価の手順や質問が事前に明確に定められている評価方法(例:標準化された質問紙)。
  • 非構造化された評価 (Unstructured Assessment): 評価の手順や質問が柔軟であり、評価者の判断に委ねられる部分が多い評価方法(例:臨床面接)。
  • 肯定法 (Endorsement Method): 事前に提示された思考や信念に対して、当てはまるかどうかを回答する評価方法(例:自己記述式質問紙)。
  • 産出法 (Production Method): 回答者自身に思考や感情を自由に表現してもらう評価方法(例:思考発話法、自由連想法)。
  • 思考サンプリング法 (Thought Sampling): 自然な環境下で、ランダムなタイミングで生じた思考を記録する方法。
  • 経験サンプリング法 (Experience Sampling Method, ESM): 自然な環境下で、特定の合図があった際に、その瞬間の思考、感情、行動などを記録する方法。
  • 自己モニタリング法 (Self-Monitoring): 特定の状況や時間における特定の思考の出現を個人が記録する方法。
  • ビデオテープ思考再構成法 (Videotape Thought Reconstruction): 過去の状況をビデオで再生し、その時の思考の流れを再構築して報告する方法。
  • 思考リスト法 (Thought Listing): ある状況について考えていることすべてをリストアップしてもらう方法。
  • 自己記述式質問紙 (Self-Report Inventory/Questionnaire): 事前に作成された質問項目に対して、自身の経験や考えを回答する形式の評価ツール。
  • 臨床面接 (Clinical Interview): 臨床家がクライアントと対話し、情報収集や評価を行う方法。
  • 構成概念妥当性 (Construct Validity): 測定したい理論的な概念(構成概念)を、その測定ツールが実際に測定しているかどうかを示す妥当性の種類。
  • 自動思考 (Automatic Thoughts): 状況に応じて自動的に頭に浮かぶ思考。通常、評価的で否定的であることが多いとされる。
  • スキーマ (Schema): 自己、他者、世界に関する組織化された知識構造。情報処理に影響を与え、認知バイアスの基盤となる。
  • 認知バイアス (Cognitive Bias): 情報処理における系統的な偏り。特定の情報を重視したり、無視したりする傾向。
  • 感情ストループ課題 (Emotional Stroop Task): 色の名前が書かれた単語(感情的な単語や中性的な単語)の色をできるだけ早く答える課題。感情的な単語の場合、処理に干渉が生じ、反応時間が遅れることがある。
  • ドットプローブ課題 (Dot Probe Paradigm): 画面上に提示された二つの刺激(例:感情的な顔と中性的な顔)が消えた後、どちらかの位置に現れるプローブ(点など)を素早く検出する課題。注意が特定の刺激に向いている場合、その位置のプローブへの反応が速くなる。
  • 機能不全的態度 (Dysfunctional Attitudes): 幸福や成功に対する非合理的で極端な信念。抑うつや不安に関連するとされる。
  • メタ認知 (Metacognition): 自身の認知プロセスに関する知識や制御。自分の思考について考えること。

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うつ病における認知について議論します[引用元なし]。この章では、うつ病の認知評価に関連する概念的および方法論的問題を取り扱っています。

認知の構成要素

文献では、認知構造(情報処理を導くアクセス不可能なスキーマ)、認知過程(環境からの入力を変換し、意味を推論する手段)、および認知産物または内容(意識的な思考やイメージ)が、世界に関する知識が組織化され、この枠組みが進行中の処理をどのように導き、この処理の最もアクセスしやすい産物を定義するかを記述する枠組みとして特定されています。

うつ病の認知評価

うつ病における認知評価の大部分は、患者の思考内容またはその根底にある態度や信念を捉えるように設計された紙と鉛筆による検査です。他の重要な取り組みとして、うつ病患者がどのように情報を処理するか、特に自己参照的な記述や課題遂行からのフィードバックに対処する方法が挙げられます。特定の状況における自動思考や自己発言の想起は、臨床面接の形式で広く用いられています。

認知産物

  • 自動思考質問票(ATQ): 過去1週間に被験者の頭に「浮かんだ」30個の否定的な自動思考の頻度を測定します。これらの思考に対する信念の程度も5段階で評価されます。ATQに含まれる30個の思考は、うつ病患者と非うつ病患者を識別する能力に基づいて経験的に導き出されました。
  • 肯定的自動思考質問票(ATQ-P): 肯定的な自動思考の頻度を評価し、ATQを補完し、うつ病における自動思考パターンのより包括的な像を提供する可能性があります。
  • 完璧主義認知インベントリー(PCI): 完璧主義に関連する自動思考に特化した、ATQと類似の形式の尺度です。頻繁な完璧主義思考の経験は、既存の完璧主義の特性尺度や否定的な自動思考の代替尺度によって予測される分散を超えて、気分変調や不安に関連していることが確認されています。
  • 帰属様式質問票(ASQ): うつ病の再構成された学習性無力感モデルに基づいて開発された、うつ病の帰属を測定する最も頻繁に引用される尺度です。ASQは、達成または所属のテーマを含む12の架空のシナリオを提示し、被験者は各状況において結果が内部的か外部的か、安定しているか不安定か、グローバルか特定的かを評価します。
  • ホープレスネス尺度(HS): 未来に対する絶望的な見方をどの程度抱いているかを測定する20項目の自己報告式尺度です。HSのスコアは、精神科外来患者における将来的な自殺を予測することが示されています。
  • ベック自己概念テスト(BST): ベックがうつ病の中心的な特徴として記述した自己の否定的な見方を評価するように設計された自己報告式尺度です。
  • 認知バイアス質問票(CBQ): 対人関係または達成のテーマを含む問題のある状況の6つのビネットで構成され、各ビネットに対して、主人公がどのように考え、感じるかを最もよく表す4つの反応の選択肢から1つを選択します。CBQのスコアは、4つの反応カテゴリーそれぞれの使用頻度を反映しますが、特にうつ的歪曲反応の頻度が重要です。
  • 認知反応テスト(CRT): うつ病における認知の歪みを測定する、CBQよりも構造化されていない尺度です。36項目が未完成の文章形式で提示され、被験者は最初に思い浮かんだ思考で各文章を完成させます。
  • うつ病のための文章完成テスト(SCD): 多様な反応を促すように開発され、うつ病思考の既知の領域を捉える48の短い文章の冒頭句で構成されています。文章の完成は、否定的、肯定的、または中立的な思考としてコード化されます。

認知過程

  • 自己焦点式文章完成課題(SFSC): 自己焦点を測定する30項目の尺度で、被験者は文章の冒頭句を自由に完成させます。
  • 自己意識尺度(SCS): 自己焦点を測定するもう1つの頻繁に使用される尺度であり、私的自己意識、公的自己意識、社会的不安の3つの因子分析によって導き出された下位尺度で構成されています。
  • 反応様式質問票(RSQ): 抑うつ気分に対する気質的な反応を測定するように設計されており、反芻反応尺度(RRS)と気晴らし反応尺度(DRS)の2つの下位尺度で構成されています。
  • 日常プロセス設計: 日常の些細な出来事とうつ病患者の気分との相互作用をより深く理解するのに役立ちます。

認知構造/組織

  • 機能不全的態度尺度(DAS): うつ病性障害に関連する比較的安定した一連の態度を特定するように設計された自己報告式インベントリーです。DASの項目は通常、他者からの承認、幸福の前提条件、または完璧主義的な基準に関する偶発事象として述べられています。DAS-Aの因子分析では、完璧主義と承認欲求の2つの因子が常に得られています。
  • うつ病の認知評価におけるプライミングの役割は、陰性気分状態が陰性自己スキーマをプライミングし、機能不全的な態度のアクセス可能性を高める可能性を示唆しています。
  • 暗黙的連合テスト(IAT): うつ病になりやすい個人における自己と否定的な特性形容詞との間の暗黙的な関連を評価するために、修正された反応時間パラダイムを使用します。
  • 自己参照符号化課題(SRET): 肯定的および否定的な人称形容詞が提示され、形容詞が自己記述的であるかどうかを判断するように求められ、その後、偶発的な想起テストが実施されます。SRETは、自己スキーマに関連するいくつかの指標を提供します。
  • 心理的距離尺度課題: 自己参照的な形容詞刺激間の刺激間距離を計算し、うつ病における認知パターンの構造または相互接続性を評価します。
  • 感情的ストループ課題: うつ病患者は一般に、肯定的または中立的な単語よりも否定的な単語の提示色の名前を言うのに時間がかかります。
  • プライミングされた感情的ストループ課題は、自己概念の要素間の相互接続性を研究するために使用されます。
  • ドットプローブ課題: 臨床的にうつ病の参加者は、悲しい顔に選択的に注意を払うことが一貫して示されています。

これらの結果は、障害の維持における認知組織の重要性を強調するうつ病の説明と一致しています。認知行動療法(CBT)はそのような組織の否定的な性質を変化させると考えられているため、この性質の成功した治療は、個人の認知システムにおける否定的な要素間の強い関連を軽減し、それによってプライミングされたストループ課題などの課題で見られる干渉の量を減らすはずです。

うつ病の研究では、認知の内容、過程、および「深層構造」に対処するさまざまな尺度が開発されてきました。しかし、どの認知変化が認知行動療法によって独自に影響を受けるかを判断することは容易ではありません。うつ病の状態を変化させるあらゆる治療法(または「自然寛解」)も、実質的な認知変化をもたらします。しかし、認知療法は薬物療法よりも抑うつ気分に対する認知反応性をより効果的に低下させることを示唆するいくつかの証拠があります。

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不安の認知について。この章では、不安の認知評価に関連する概念的および方法論的問題を取り扱っています。

不安における認知の重要性

不安の現象は主に認知的であると認識されており、多くの理論家は、不適応な認知が不安障害の発症と維持に重要な役割を果たすと考えています。したがって、認知評価は不安の領域において特に適していますが、不安に特徴的な他の反応様式(行動的、生理学的)と統合されるまで、十分な記述とは言えません。

不安の認知評価

思考を評価するための多くの方法には、さまざまな分類システムが存在します。GlassとArnkoff(1997)は、認知評価の方法を以下の4つの側面に従って整理しています:

  • 時間性: 回顧的、同時的、未来的
  • 構造の程度: 是認型 vs. 産出型
  • 反応様式: 書面 vs. 口頭
  • 刺激の性質: 一般的な思考、想像上の状況、ビデオで見た状況、ロールプレイ、生体内の状況

さらに、思考評価の情報源(回答者または独立した評価者)という5番目の側面も提案されています。

これらの側面を考慮すると、同時評価から回顧評価までの評価手順の連続体が得られます。認知評価の手順は、評価が個人に課す制限や形式の程度に基づいて、構造の程度によっても整理できます。

さまざまな方法で参加者やクライアントの思考を評価できます。

  • 自発的な私的言語の記録: 回答者やクライアントの実際のセルフトークを評価するために使用されます。これらの記録は、邪魔にならないように、または特定の指示に従って行われます。
  • 自由連想:
  • シンクアロウド法: 特定の課題の遂行中または特定の状況において、思考の連続的な独白を求めます。Davisonらは、シミュレーションされた状況における明確化された思考(ATSS)というパラダイムを研究しました。これは、通常オーディオテープで提示される刺激状況(例:社会不安に関連する思考を引き出すように設計された社会批判テープ)に対する参加者の思考を調べます。
  • 思考のランダムサンプリング: 自然環境における思考をその場で定量化する方法です。参加者は、人または通常は携帯型の機械装置(ポケベル)によってランダムまたは準ランダムな間隔で合図されたときに、現在の思考を記録します。
  • 自己モニタリング: 特定の刺激状況または特定の時間における特定の思考の発生を個人に記録するように求めます。
  • ビデオテープ思考再構成: 問題のある状況の実際のまたはロールプレイのビデオを見て、その時の思考の流れを可能な限り正確に再構成します。
  • 思考リスト法: 現在または過去に考えていたすべてのことをリストアップします。
  • 自己発言インベントリー: 意識的なセルフトークまたは思考を評価するように設計されており、肯定または否定の特定の思考を評価状況で経験したかどうか、およびその発生頻度に関して、回答者が評価する所定の思考セットが含まれています。
  • 臨床面接: クライアントに動揺する状況を思い出させ、その時に何を考え、感じていたかを語らせることができます。

不安の認知産物

不安の一般的な認知特徴を測定すると称する質問票が長年使用されてきました。

  • Fear of Negative Evaluation Scale (FNE): 社会的状況で他者からの不承認を受けることへの不安の程度を測定する30項目の真偽式質問票です。
  • Social Avoidance and Distress Scale (SAD): 社会的状況における苦痛と不快感の経験を測定する同様の28項目の形式の質問票です。
  • Anxiety Sensitivity Index (ASI): 不安に関連する身体的感覚に対する恐怖であり、その感覚が破滅的な身体的、社会的、または心理的結果を示すという信念に基づいています。
  • Anxiety Sensitivity Index–3 (ASI-3): 身体的、認知的、社会的な懸念の3つの要因を評価する18項目の尺度です。
  • Anxious Self-Statements Questionnaire (ASSQ): 不安な思考の頻度を測定する32項目の尺度です。
  • Cognition Checklist (CCL): 不安障害に特徴的とされる危険に関連する12の認知(CCL-Anxiety)と、うつ病に特徴的とされる喪失と失敗を中心とした12の思考(CCL-Depression)を評価します。
  • University of British Columbia Cognitions Inventory: 認知内容の特異性を最大化し、パニック、心配、身体への没頭、社会的恐怖、うつ病など、幅広い認知を評価する77項目の質問票です。
  • Negative Affect Self-Statement Questionnaire (NASSQ): 子供の不安と抑うつに特化した下位尺度も生成します。
  • Penn State Worry Questionnaire (PSWQ): 全般的な心配傾向を評価する広く使用されている16項目の尺度です。
  • Worry Domains Questionnaire (WDQ): 非病的な心配の5つの領域(人間関係、自信の欠如、目的のない未来、仕事の無能さ、経済的)を測定するように開発されました。
  • Anxious Thoughts Inventory (AnTI): 健康、社会、メタ(心配についての心配)の各側面の心配の傾向を測定する22項目の内容およびプロセス尺度です。
  • Intolerance of Uncertainty Scale: 否定的な出来事が起こる可能性が低いとしても、それが起こる可能性を許容できない傾向を評価します。
  • Social Interaction Self-Statement Test (SISST): 生きた異性間の社会的相互作用への参加後の自己発言を評価するように設計されました。
  • Appraisal of Social Concerns (ASC) scale: 社会的脅威についてどの程度懸念しているかを評価する20項目の自己報告式尺度です。
  • Agoraphobic Cognitions Questionnaire (ACQ): 不安を経験することの否定的な結果に関する思考で構成されており、不安な状態にあるときの思考の頻度を評価します。
  • Panic Appraisal Inventory (PAI): 広場恐怖の状況におけるパニック発作の知覚された可能性、破滅的な結果への懸念、および将来のパニック発作に対処する自信を評価する3つの尺度で構成されています。
  • Body Sensations Questionnaire (BSQ): 自律神経系の興奮に関連する身体的感覚(例:動悸)によってどの程度怯えたり心配したりするかを測定します。
  • Modified Catastrophic Cognitions Questionnaire (CCQ-M): 危険に関連するスキーマを反映する21項目の尺度です。
  • Padua Inventory—Washington State University Revision (PI-WSUR): 強迫観念と強迫行為を測定する39項目の尺度です。
  • Obsessive Compulsive Thoughts Checklist (OCTC): 過去1週間の強迫観念を測定する28項目の尺度です。
  • Cognitive Intrusions Questionnaire: 過去1か月の侵入思考、イメージ、または衝動を評価します。
  • Revised Obsessional Intrusions Inventory (ROII): 最も心を悩ませる思考の評価と思考制御戦略を10の側面から決定します。
  • Posttraumatic Cognitions Inventory (PTCI): トラウマ関連の思考と信念を評価するために開発された33項目の自己報告式尺度です。
  • Meta-Cognitions Questionnaire (MCQ): 自身の思考についての信念、またはメタ認知信念を評価する65項目の尺度です。
  • Consequences of Worrying Scale: 心配の結果について個人が抱くさまざまな信念を評価するために開発されました。
  • Interpretation of Intrusions Inventory (III): 望まない、苦痛な侵入思考、イメージ、または衝動の解釈を評価する31項目の尺度です。
  • Meta-Cognitive Beliefs Questionnaire (MCBQ): 望まない、苦痛な侵入思考に関連する制御の重要性と否定的な結果についての信念を評価するために開発された67項目の自己報告式尺度です。
  • Social Thoughts and Beliefs Scale (STABS): 社会不安障害を持つ個人のさまざまな病的な認知を評価するように設計された21項目の自己報告式質問票です。
  • Panic Beliefs Inventory (PBI): パニック障害患者が身体的および感情的な経験に対して破滅的な反応を示す可能性を高める機能不全的な態度と信念を評価するために開発された35項目の自己報告式インベントリーです。
  • Obsessive Beliefs Questionnaire (OBQ): 強迫性障害の重要な信念領域を表す機能不全的な信念(前提、態度)を評価するために開発されました。

不安の認知過程

不安の認知評価では、知覚された危険や個人的リスクの過大評価といった概念が重要な認知プロセスとして評価されてきました。

  • ButlerとMathews(1983)は、被験者に20の脅威的だが曖昧なシナリオの解釈に関する質問票に記入するよう求めました。不安な被験者は曖昧な材料をより脅威的であると解釈し、脅威的な出来事の主観的なコストを非不安な対照群よりも高く評価しました。
  • Williams(1985)は、特定の遂行能力が与えられた場合に否定的な出来事が起こる確率の主観的な認識として定義される「知覚された危険」の尺度を記述しました。
  • 他の研究では、不安と抑うつ、曖昧な情報の解釈、肯定的および否定的な未来の確率の推定、過去の特定の状況または一連の出来事の想起との関係が調査されています。
  • より構造化されていない不安の認知評価形式には、生体内(in vivo)またはシミュレーションされた不安を喚起する状況における思考をサンプリングする試みが含まれています。
  • 思考リスト法は、生体内での行動直後の被験者の思考を記録することを目的とした多くの研究で使用されてきました。
  • シンクアロウド法は、内部対話の正確な内容が捉えにくい不安において特に有益です。全般性不安障害のDSM-IV基準を満たす参加者は、出来事の破滅的な解釈を示唆する陳述の相対的な頻度が高く、硬直的で規則に縛られた解釈スタイルと身体的不安の言葉の使用を示唆していました。

不安の認知構造/組織

現在の認知概念では、不安障害を持つ個人は、各障害に関連する特定の否定的な認知の根底にある不適応な信念を持っていると想定されています。

  • Social Thoughts and Beliefs Scale (STABS) は、社会不安障害を持つ個人のさまざまな病的な認知を評価するように設計されています。
  • Panic Beliefs Inventory (PBI) は、パニック障害患者が身体的および感情的な経験に対して破滅的な反応を示す可能性を高める機能不全的な態度と信念を評価するために開発されました。
  • Obsessive Beliefs Questionnaire (OBQ) は、強迫性障害の重要な信念領域を表す機能不全的な信念(前提、態度)を評価するために開発されました。
  • いくつかのパラダイムは、不安障害を持つ人々が脅威キューの選択的処理を示すことを確認しています。Mathewsらは、個人的な危険や他の脅威に関連する情報の処理に偏ったスキーマの活性化が不安状態の特徴であると提唱しています。感情的ストループ課題を用いた研究では、不安な被験者は中立的な言葉よりも脅威的な内容の言葉の色を命名するのに時間がかかることがわかりました。ドットプローブパラダイムを用いた研究では、不安な被験者は正常な対照群よりも脅威関連刺激に対してより警戒しているか、またはそこから注意をそらすのがより困難であることが一貫して報告されています。

認知バイアスの役割

認知バイアスが知覚的または注意的性質のどちらであっても、情報処理の流れの後の時点で個人が行う解釈に影響を与えるため、不安の維持に重要な役割を果たします。さらに、注意バイアスの研究は、潜在的に重要な治療への示唆を持つ可能性があります。MacLeodらは、非不安学生は脅威的な刺激から注意をそらすように首尾よく訓練できることを示しました。

不安とうつ病の認知の関連

ClarkとWatson(1991)が指摘するように、不安と抑うつ症状の間には密接な関係があります。MoggとBradley(2005)のレビューでは、全般性不安障害とうつ病性障害の間には、注意バイアスにおいて注目すべき違いがあることが示唆されています。全般性不安障害の個人は、非不安な個人と比較して、幅広い軽微な外的否定的キュー(例:脅威的な言葉、怒った顔の写真)にわたって注意バイアスを示すことが一貫して示されています。一方、うつ病における注意バイアスは、より広範な処理を可能にする条件下で提示された、否定的で自己参照的な刺激に対して主に見られます。

結論と今後の方向性

過去には認知評価の手法は心理測定の問題にほとんど注意を払わずに用いられてきましたが、認知評価尺度の心理測定特性への注目は高まっています。是認法(質問票など)の心理測定の地位は産出法よりも確立されていますが、思考リスト法、シンクアロウド法、思考サンプリング法といった認知評価アプローチの心理測定学的評価に重点が置かれるようになっています。

今後の方向性として、Clark(1997)は、特に認知産物の評価に関して、認知評価の分野の研究者と臨床家が直面する多くの課題を概説しています。認知評価においては多様化の強い傾向が見られ、これは健全な発展です。自己報告式手法への依存だけでは不十分であり、特に言語化が難しい比較的自動的な認知プロセスやスキーマを評価したい場合にはそうです。GlassとArnkoff(1997)は、自己発言インベントリーの改善と開発のための提言を概説しており、思考リスト法やシンクアロウド法のような産出法を賢明に用いることによって、認知の産物とプロセスについてまだ多くのことを学ぶことができます。思考サンプリングは、特に生態学的妥当性が高いため、有用な戦略です。

認知構造、プロセス、および不安や抑うつなどの心理的障害の発症、維持、および再発に寄与すると仮定されている産物のさらなる研究が必要です。

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