凡河内躬恒
けふのみと春をおもはぬ時だにも 立つことやすき花のかげかは
春を今日かぎりと思わない時でさえも、花の咲いている所から立ち去ることが容易であろうか。
巻第二 春歌下 亭子院(ていじいん)の歌合せの春の果ての歌。春の終わりでなくても花のもとからは立ち去りがたいが、春の終わりの日には一層その思いが強くなると詠んでいる。
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とどむべき物とはなしにはかなくも ちる花ごとにたぐふこころか
とどめておくおことができるものではないのに、むなしくも散っていく花に心がひかれてゆくことだ。
巻第二 春歌下 三月の晦日(つごもり)に、花摘みから帰って来た女たちを見て詠んだ。女たちが摘んだ花をそれぞれ持っているが、所詮は摘んだところで散ってしまうのだから空しいはずなのに、それでも心がひかれるのでつんできたのだろうと詠んでいる。
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空きの歌が有名
風吹けば落つるもみぢ葉水きよみ 散らぬかげさへ底に見えつつ