(社説)斎藤兵庫知事 自らの非と責任 認めよ
議会の報告書に続き、弁護士からなる第三者委員会は、さらに明確に違法と断じた。再び「一つの見解」などとやり過ごしてはならない。兵庫県の斎藤元彦知事は自らの非を認め、トップとしての責任に正面から向き合うべきだ。
斎藤氏が元県民局長の男性から「七つの疑惑」を告発された問題で、県の第三者委が報告書を公表した。知事の決定を受けて設けられ、県当局から完全に独立した形で約半年間、調査を重ねた。
斎藤氏による職員へのパワハラ問題では、机をたたいての叱責(しっせき)など10件をパワハラと認定。県議会の調査特別委員会(百条委)は「パワハラ行為と言っても過言ではない」としたが、踏み込んだ。
男性への県の対応でも、公益通報者保護法に照らし、百条委が「違反の可能性が高い」としたのに対し、第三者委は「違法、不当」とした。
告発された斎藤氏や側近ら利害関係者が調査に関与したのは「極めて不当」。通報者を特定し男性の公用パソコンを引き上げたのは「違法」。男性に対する懲戒処分も一部を「違法・無効」とした。
注目されるのは、文書を入手した斎藤氏が、男性について「公務員として失格」「うそ八百」と会見で発言したことを「極めて不適切」とした上で、男性へのパワハラに該当すると指摘したことだ。
第三者委は、問題の背景として知事と職員とのコミュニケーション不足・ギャップを挙げ、次のように記した。
(4年前の初当選後)以前から面識があった職員を中心に「新県政推進室」を設け、そのメンバーのみとやりとりすることが多かった。それが組織に不透明感と分断を生み、知事とメンバーは同質的集団となり、異論を受け入れぬ硬直的姿勢が生じた――。
さらに、斎藤氏が百条委報告書に関して「違法の可能性なら適法の可能性もある」などと発言したことにも触れ、「正面から受け止める姿勢を示していない」と批判した。
「組織のトップと幹部は、自分とは違う見方もありうると複眼的な思考を持つべきだ」と強調。公用パソコンの中身について斎藤氏が「わいせつな文書」と会見で述べたことを受け、「特に公式の場では、人を傷つける発言は慎むべきだ」。最後に、「公益通報者を保護する体制を築く自浄力」を県に求めた。
総体として、氏の知事としての適格性に根本的な疑義を投げかける内容である。
斎藤氏はどう応じるのか。自浄への第一歩は、県のトップが自らの過ちを認め、責任を取ることではないか。
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現状ではパワハラ問題にとどまらない、大きな問題になっている。