臨床コミュニケーションの文化的多様性:Cultural Diversities pf Human Care in Prectice
「オキモトさんは82 歳の日本人男性。転移性食道癌患者である。この2 、 3 か月のうちに経口摂取が次第に困難になり、体重が大幅に減少し、げっそりと痩せてきた。十分な栄養補給をするために、オキモトさんに経管栄養法の導入が提 案された。それを行えば栄養状態が改善するので、オキモトさんの生命予後も伸びるとみられている(月の単位と予測されている)。また、経管栄養法によって 彼のQOL が低下することはあまりないとみられている。オキモトさんの長い闘病期間中、家族は彼の病床につきっきりだった。子供たちの多くが飛行機で移動し、仕事や 家庭生活を犠牲にしてきた面もあり、経済的負担もさることながら、精神的な負担が深刻化してきている。オキモトさんは自分が家族の負担になっていると考え ている。これは彼がまったく望んでいなかったことである。結局、オキモトさんは経管栄養法の導入を断ることにした。この決定に主治医はとても心配し、オキ モトさんの家族が本人に圧力をかけて、本人にとって利益がある治療法を受けさせないようにしているのではないかと考えた。主治医は倫理コンサルテーション を求め、医療チーム全体に懸念を伝え、関係者全員で心配することとなった」