苦しみの普遍性
- 外的な豊かさ(富・家族・健康)があっても心理的苦痛からは逃れられない
- 米国では精神疾患の生涯有病率が50%に近づき、大学生の半数近くが何らかのDSM診断に該当
- うつ・依存・不安・自己破壊的行動などを合計すると、心理的苦しみは人間の基本的な特性と言える
現代の心理学・医学モデルの問題点
- 「健康な正常性」の前提:人間は本来幸福であり、苦しみは異常・疾患とみなされる
- 精神疾患の「生物医学化」が進み、苦しみが診断ラベルで処理されるようになった
- DSMの診断カテゴリーは拡大し続けているが、実際の治療効果の向上にはつながっていない
- 併存診断率が異常に高く(うつ病で約80%)、診断システム自体の欠陥を示している
- 症状の軽減に偏重し、生活の質や社会的機能の改善が軽視されている
「破壊的な正常性」という概念
- 苦しみは異常なプロセスではなく、人間に普遍的な適応プロセスそのものから生じる
- 正常で有用な心理プロセスが、破壊的・機能不全的な結果をもたらしうる
人間の言語と苦しみの起源
- ACTの核心:人間の言語(象徴的活動)が人間の達成と苦しみの両方を生み出す
- 創世記の物語が象徴するように、善悪の「評価的知識」を得たことが苦しみの始まり
- 子どもは言語を習得するにつれて無邪気さを失い、自己批判・恐れ・偽りが生まれる
- 世界の宗教の神秘的伝統は、分析的言語の支配を弱めることを目指してきた
認知フュージョンと体験の回避
- 認知フュージョン:思考・感情・記憶を「現実そのもの」として扱ってしまうこと
- 体験の回避:不快な内的体験を抑制・排除しようとすること
- 回避しようとすればするほど、その体験の頻度・強度が増すというパラドックスがある
- 両プロセスにより人生の範囲が狭まり、価値ある方向への行動が妨げられる
ACTのアプローチ
- 目標は「気分を良くすること」ではなく「感じることを十分に体験すること」
- 脱フュージョン(思考を思考として観察する)とアクセプタンス(体験を積極的に受け入れる)が核心
- 心理的柔軟性を高め、回避から離れ、深く抱く個人的な価値に向かって行動することを促す
- ACTは技法や症候群ではなく、プロセスに焦点を当てた統一的・トランスダイアグノスティックなアプローチ
本書の構成と注意事項
- 第2章:理論的基盤、第3章:心理的柔軟性モデル、第4〜12章:各プロセスの臨床応用、第13章:文脈的行動科学(CBS)
- 言語を使って言語の問題を説明するという本質的な困難があるため、矛盾や逆説的な表現が含まれる
- 本書の章の順番は治療の順番ではなく、状況に応じてどのプロセスからでも始めてよい
