心理療法各派の見取り図

心理療法各派の見取り図
1.大きく分けると、理論的流れと、実際の技法の流れに分けることができる。
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2.理論の流れ
心理的問題は要するに脳神経細胞の問題だと考えれば、ABC理論になる。
背景にはS⇒O⇒R理論がある。
従って、それ以前と以後に分類される。

2.1.ABC理論以前以後
シャーマン、占い、占星術、錬金術、催眠術、自由連想法、無意識など。
フロイト、ユング、アドラー。

2.2.ABC理論
A⇒Cではなく、A⇒B⇒Cと考えて、Bを変化させれば、治療できると考える。
脳神経細胞の働きを考えれば当然納得できる理論である。

だまし絵・隠し絵の例。A⇒Cではなく、A⇒B⇒Cであることが理解できる。
アヒルとウサギ。

娘と老婆。

また、雪⇒うれしい、ではなく、雪⇒B⇒うれしい、である。
Bに変更があれば、になるし、雪⇒B⇒悲しい、となり、それは治療として変更可能な場合がある。

Bを変更する技法として、行動療法、認知療法、REBTなどがある。
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3.技法の流れ。分散と収斂。
技法は一方では新開発されて分散しつつ、一方では、取り込み、収斂、総合なども起こっている。
技法が同じでも解釈とか理論的背景が違えば、味わいが違う。

3.1.共感と治療関係
これらは昔から現在に至るまで、ほぼ絶対の支柱である。濃淡はあるが各技法に取り入れられている。
この部分を最大限に重視した技法がロジャーズである。

3.2.催眠術、自由連想法
ABC理論以前の各種技法

3.3.行動療法
ABC理論でいうBの部分を問題にして、行動を変化させることによって、Bを変化させる技法。

3.4.認知療法
ABC理論でいうBの部分を問題にして、認知や感情を変化させることによって、Bを変化させる技法。

3.5.各種の統合
例えば、認知療法と行動療法が統合されて、認知行動療法となった。これは理論背景としてABC理論があることで統合された。
Bを変化させるために何をするかで、行動変容、認知変容、感情変容など、経路が異なるだけなので、統合は必然性があった。

その他には、瞑想の伝統を新しい心理療法が取り入れて、マインドフルネスとなっていて、いくつもの方面で取り込まれて活用されている。

また、対人関係を集団システムとして考えれば、家族療法や集団療法となり、これはいくつかの方面で取り入れられている。

実際の臨床場面では、心理療法家は、クライエントの状態と心理療法家の経験によって、各種技法を統合して実践している。
ボディスキャンしたり、マインドフルネスしたり、エンプティチェアしたり、ロールプレイしたり、共感したり、行動表を書いてもらったり、行動療法したりしている。
理論として統合しているわけではなく、技法を取り入れていることが多い。

3.6.「とりあえず」療法
これは、仮に、Xが原因で、それによる困りごととしてYとZが起こっているとする。
原因不明のXがあると思われるが、それが正体不明であるか、または正体が分かっていても、変更不可能である場合、
「とりあえず」YやZを改善すれば、少しは全般に楽になって、そうなれば、内部の自己修復機能が働くのではないかと考える。

例として、原因Xは確定できないが、過食嘔吐があり、対人関係が悪化し、職業不適応も起こっているという場合、
直接Xを治療することはできないので、「とりあえず」全般的適応を改善するような治療を考える。
この例でいえば、症状の中で、過食嘔吐を直接有効に治療することは難しいので、「とりあえず」対人関係、または、職業不適応をターゲットとして、治療する。
理論的に、直接の治療になってはいないが、「とりあえず」の適応改善になり、自己治癒機能を引き出すことができるかもしれない。

「とりあえず」療法と分類される流派にとっては不名誉と思うことかもしれないので具体的にあげることはしない。しかし、認知行動療法のような、現在の主流派を形成している統合的流派にしても、技法の一部は現状で「とりあえず」なのであって、決して、原因が確定してそれを治療しているのではなく、原因を脳内部の信念と仮定し、それが認知、感情、行動の各方面に現れると考えて、どの方面から治療するか工夫している。各主流派は、全般に、「とりあえず」療法に属するともいえる。

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