瞑想療法メモ 04 精神分析と瞑想

瞑想療法メモ 04 精神分析と瞑想

●精神分析の特徴

心理的葛藤(conflict) に焦点を当てる。
人間は常に内面的な葛藤を抱えている という前提を持つ。
「精神生活とは、意識と無意識の間で絶え間なく続く葛藤である」
無意識や心理的防衛、幼少期の影響、転移(transference) などを解明する上で大きな貢献をした。

●瞑想的心理学から見た精神分析の限界

人間の可能性を過小評価している。
精神分析は「葛藤、問題、病理」に集中しすぎている。
「精神分析は人間の可能性を過小評価することを制度化した」マズロー
「人間はもっと高い健康状態や幸福、超越的な成長を遂げることができる」という視点が欠けている。
心理的葛藤は普遍的ではない可能性がある。
精神分析では、「すべての人は心理的葛藤を抱えている」と考えるが、瞑想的心理学では「高度に発達した人は葛藤を超越できる」と考える。
ある研究では、高度な瞑想指導者は普通の人と同じような葛藤を持っているが、その影響をほとんど受けない ことが示された
特定のレベルに到達すると葛藤そのものが消失する可能性がある。
仏教の悟りの4段階のうち、最初の段階ではまだ一般的な葛藤(性欲、依存心、攻撃性など)が見られるが、それらは「包み込まれた状態(encapsulated)」であり、人格や行動にはほとんど影響を与えない。
古代の経典も、この「葛藤の解消」は悟りの第3段階で起こると述べている。
精神分析のもう一つの問題点:独善性(Grandiosity)
精神分析の一部の専門家は、自らの理論が他のすべての心理学よりも優れていると主張する傾向があります。例えば、次のような発言が見られます。

「精神分析は最も広範で、包括的で、総合的な心理学体系である」
「人間の心の謎を解明する上で、精神分析ほどの知識体系はない」
しかし、他の心理学と比較すると、こうした主張は根拠が乏しいことがわかります。

自分の理論が「最も優れている」と考えることは、他の理論を知らないことと関係している。
これは精神分析に限らず、どの心理療法にも見られる傾向だが、現在ではもはや正当化できない。

●比較

精神分析ー 心理的葛藤、無意識、幼少期の影響ー人間は常に葛藤を抱えているー問題や病理に焦点を当てがちー幼少期の影響、心理的防衛の分析ー自己の理論を絶対視する傾向

瞑想的心理学ー心の発達、超越的な成長、悟りー高度な発達段階では葛藤が消える可能性があるー人間の可能性や高度な成長を重視ー瞑想による意識の変化、発達の可能性ー他の心理療法と補完し合う姿勢

精神分析は、心理的葛藤や無意識の研究において重要な貢献をしてきましたが、人間の可能性を過小評価しがちで、葛藤を超えた成長の可能性を見落としている という批判があります。

一方で、瞑想的心理学は、精神分析では見過ごされがちな「高度な精神的成長」の可能性を探求する点で価値があります。両者を統合的に考えることで、より包括的な理解が得られるかもしれません。
ーー
●精神分析と瞑想の共通点

人間は自分の心を完全に支配できない
フロイト(1917年/1943年)の言葉:「人は自分の家の主人ですらない……つまり、自分の心の主人ではない」
どちらも深い内省(じっくり自分の心を見つめること)の重要性を強調
フロイトは、瞑想のような実践が無意識の奥深くにあるものを把握できるかもしれないと認めていた
フロイト(1933年/1965年):
「瞑想的な修行は、エゴ(自我)やイド(本能的な部分)の奥深くで起こっていることを理解できるかもしれない」
「精神分析の治療的アプローチも、同じ方向性を取っていると言える」

タイトルとURLをコピーしました